『魔王討伐クエスト』で役に立たないからと勇者パーティーに追い出された回復師は新たな仲間と無双する〜PK集団が英雄になるって、マジですか!?〜

あーもんど

文字の大きさ
上 下
199 / 315
第四章

第198話『オーバーライン《アヤ side》』

しおりを挟む
 『私だったら、絶対敵に回したくない二人だな』と思う中、シムナさんとヴィエラさんは銃と杖を構え直す。
畳み掛ける気満々の二人は、温存してきた魔力MPをここぞとばかりに行使した。

「《サン・ヒート・ショット》」

「《アイス・アロー》」

「《ウインド・サンダー・ショット》」

「《ウォーター・カット》」

「《ライトスピード・ショット》」

「《アイス・スピア》」

 連射と呼ぶべき二人の攻撃を前に、バハムートはひたすら防御の一手。
とにかく、急所顔面を守るので精一杯らしい。

 凄い……魔力MPを温存していたとはいえ、これだけの攻撃を連発出来るだなんて。
様子を見る限り、まだまだ余裕がありそうだし……。

『くっ……!!弾幕を張って、この俺様を牽制するとは……!生意気な人間どもだ!』

 バハムートは悔しげにそう呟く。
その声色からは、苛立ちと焦りが垣間見えた。

「あははっ!文句を言う暇があったら、反撃したらー?いつまで顔面を守っているのー?お前の顔なんて、大して格好良くないんだから守らなくてもよくなーい?」

『なっ!?俺様の顔は充分格好いいだろ!世界中どこを探したって、俺様より格好いいドラゴンなんて居ないぞ!』

「へぇー?そうなんだー。でも、僕にはその格好良さがちっとも理解出来ないよー。だって、トカゲと同じ顔をしているんだもーん」

『なんだと!?俺様を馬鹿にするのもいい加減に……っ!』

 いきなり話を中断したバハムートは、何かから逃げるように天井ギリギリまで飛翔した。
その瞬間、元々居た場所に強烈な氷結魔法が放たれる。

「残念。外しちゃったわね。あともう少しだったのに」

「ねー!凄く惜しかったー!」

 ヴィエラさんとシムナさんは互いに顔を見合わせ、小さく肩を竦める。
その頭上で、バハムートはカタカタと震えていた。

 なるほど……。
銃撃や魔法攻撃で弾幕を張ったのも、シムナさんがバハムートを煽ったのも、作戦のうちだった訳か。
一体いつ打ち合わせをしたのかは分からないが、なかなかいいコンビネーションね。

「バハムートがヴィエラさんの攻撃を回避出来たのは、まぐれに近いですね……野生の勘でも、働いたんでしょうか?」

「バハムートの危機感知能力は優秀なのです~」

「人間並みの知性を持ち合わせていながら、野生の勘も働くんかいな……これは想像以上に厄介やな」

 待機組の私達はラミエルさんの安全を確保しながら、感嘆の息を漏らす。
────と、ここでシムナさんとヴィエラさんは再度武器を構える。
作戦が失敗に終わったと言うのに、二人は全く落胆する様子を見せなかった。

「ははっ!震えてないで、降りてきなよー。そこじゃ、寒いでしょー?あっ、それとも僕に降ろしてほしいのー?もー、ワガママだなぁー。でも、僕は優しいから君のワガママを叶えてあげるー!────《サン・ヒート・ショット》!」

「あら?それなら、私も協力してあげるわ────《アイス・アロー》!」

 シムナさんとヴィエラさんは赤く燃える弾丸と氷の矢を放ち、バハムートの前足を攻撃する。
その際、鱗は砕け……破片を床へ落とした。

 バハムートの前足の鱗はもうボロボロだ。
このまま攻撃を受け続ければ、完全に剥がれ落ちることだろう。
これで、少しはバハムートを怯ませることが出来る筈……って、ん?

 ふと二人の様子がおかしいことに気づき、私は『どうしたんだろう?』と首を傾げる。
動く素振りすら見せず空中を眺めている二人に、悶々としていると────シムナさんが口を開いた。

「……ねぇ、ヴィエラ。僕、“アレ”しちゃったみたい」

「……あら?シムナも?実は私もなの」

「えっ!?本当!?」

「ええ」

 シムナさんとヴィエラさんは呆然としたまま、互いに顔を合わせた。
かと思えば、どちらからともなくこう呟く。

「「────限界突破オーバーライン……」」

 お、限界突破オーバーライン……?
まさか、今しちゃったの……!?二人同時に!?

「ははっ!このタイミングで限界突破オーバーラインとか、マジでウケるんだけどー!こういうのって、ピンチになった時になるんじゃないのー?」

「シムナ、それはアニメや漫画の世界だけよ。それに私達がピンチに陥ることなんて、そうそうないじゃない」

「あははっ!確かにー!」

 ケラケラと楽しそうに笑うシムナさんは、不意にバハムートを見上げた。
寒さに震えるダンジョンボスを視界に捉え、銃を構え直す。

「せっかく限界突破オーバーラインしたんだし、取得したスキルは使わなきゃ損だよねー!てことで────《未来眼》発動!」

 そう言うが早いか、彼の左目はキラリと光った。
と同時に、美しい黄金色へ変わる。
おかげで、シムナさんは桃色と金色のオッドアイになってしまった。

「ふーん?なるほどねー。『未来眼』って、こんな感じなんだー。ふふっ!面白いなー」

 右へ左へ視線を動かし、スキルの効果を確かめる彼は再度バハムートを見上げる。
そして────突然、銃を発砲した。
バァン!と一発目の銃声が響き渡る中、シムナさんはその場から飛び出し、空中で次の弾を撃つ。

「「「『!?』」」」

 に、二発目に撃った弾がバハムートの目尻に命中した……あと数センチ左にズレていれば、眼球を撃ち抜いたことだろう。

 まるでバハムートの動きを先読みしたかのような動きを思い出し、私は戦々恐々とする。
『未来眼って、そういう事か……』と思案する中、シムナさんはスッと目を細めた。

「なるほど、なるほど……まだ使い慣れないけど、大体コツは掴んだよー。頑張れば、あいつの両目くらいは潰せるかなー」

「あら、それはいいわね。是非、そうしてちょうだい。失明したドラゴンを一方的に虐めるのも、楽しそうだわ」

 サラッと物騒なことを言ってのけるヴィエラさんに、シムナさんは『分かったー』と返事する。
と同時に、地面へ着地した。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

処理中です...