『魔王討伐クエスト』で役に立たないからと勇者パーティーに追い出された回復師は新たな仲間と無双する〜PK集団が英雄になるって、マジですか!?〜

あーもんど

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第四章

第195話『バハムートの討伐方法』

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 くっ……!!避けようにも、バハムートの翼が巻き起こす風のせいで身動きを取れない……!!
少しでも気を抜いたら、吹き飛ばされてしまうから!
だからと言って、アヤさんのスキルをポンポン使う訳にはいかないし……!

「ヴィエラさん!バハムートのブレスを氷結魔法で相殺することは、可能ですか!?」

「可能が不可能かで言えば可能だけど、水蒸気爆発を引き起こす可能性があるわよ!」

 水蒸気爆発……。
ブレスを相殺することが出来ても、そんな爆発が起きては意味がない。ならば────

「────同じ火炎魔法でバハムートのブレスを押し返すことは、可能ですか!?」

「ええ、それなら可能よ!!」

「では、直ぐに火炎魔法を展開してください!」

 そう指示すると、ヴィエラさんは直ぐさま杖を振り、魔法の発動準備に入った。
詠唱に入る彼女の横で、私はメンバー一人一人を見回す。

「アヤさんは万が一のために、スキルをいつでも発動出来る状態にしておいてください。アスタルテさんはアヤさんのサポートをお願いします。ファルコさんとシムナさんはバハムートのブレスが途切れたら、すぐ飛び出してください。こちらも攻撃に出ます」

「「「「了解」」」」

 全員が自分の役割を確認したところで、ヴィエラさんは火炎魔法を発動する。
ブワッと吹き出した紅蓮の炎を巧みに操り、バハムートのブレスを押し返した。
が、思うようにいかない。若干こちらの方が優勢ではあるものの、威力はほぼ互角。

「ヴィエラさん、押し切れますか?」

 なかなか終わらないブレスとの押し合いに痺れを切らすと、茶髪の美女はフッと不敵な笑みを浮かべた。

「ラミエルちゃん、私を誰だと思っているの?私は職業ランキング一位の魔法使い────アザミの魔女よ!この程度のことで、音を上げる訳ないでしょう!」

 そう言い終えるや否や、ヴィエラさんは円を描くように杖を振るい、魔法陣をもう一つ展開した。
赤い光を放つソレを前に、私は目を見開く。

 あれは、まさか……!!!

「────地獄の門が開けし時、煉獄の炎によって全ての魂は浄化されるだろう!《地獄の炎デス・フレイム》!」

 最上級魔法の次に強いと言われる魔法を放ち、ヴィエラさんは一気に押し切った。
だけでは終わらず、バハムートの鱗をも溶かす。

『ほう?熱帯性を持つ俺様の鱗に、ここまで衝撃を与えるとは……面白い』

 スッと目を細めるバハムートは、『これでも、一応熱帯性を持っているんだがな』と零した。
────と、ここで男性陣が左右から飛び出す。
バハムートの翼から発せられる向かい風など諸共せず、二人は大地を駆け回った。

「ラミエルちゃん、あの子達大丈夫なの?少し溶けたとはいえ、バハムートの鱗に剣や斧で挑むのは無謀だと思うけど」

 心配そうに二人の背中を見つめるヴィエラさんに、私は小さく肩を竦める。

「そうですね。きっと、さっきみたいに刃先を砕かれて終わりでしょう」

「なら、何であの二人をバハムートの元に向かわせたの?」

「時間を稼ぐためですよ」

 そう言って、私はアスタルテさんに────アラクネさんお手製の神経毒を渡した。
すると、彼女はアヤさんと協力しながら毒矢の生成に取り掛かる。

「ヴィエラさんも知っての通り、バハムートは他の魔物モンスターと比べ物にならないほど賢いです。そんな奴の前で、堂々と作戦を練るのは気が引ける……だから、無謀だと分かっていてあの二人を前衛に出したんです」

「なるほどね……さすが、ラミエルちゃんだわ。私じゃ、そこまで気が回らなかった」

 感心したように目を剥き、ヴィエラさんは『うんうん』と何度も頷いた。

「ちなみに私の役割は何かしら?あの二人のサポートに回さなかったということは、何かあるんでしょう?」

「話が早いですね。ヴィエラさんの役割は────」

 チラッとバハムートの様子を窺ってから、私はヴィエラさんの耳元に唇を寄せる。

「────フロア全体の温度を氷点下まで下げることです。あられや吹雪を巻き起こして頂けると、助かります」

「!!」

 ハッとしたように息を呑み、ヴィエラさんはまじまじとこちらを見つめる。
予想外だと言わんばかりの表情だ。

 バハムートに物理攻撃は基本的に通じない。
地獄の炎デス・フレイムはその威力ゆえ、多少ダメージを与えることが出来たけど……バハムートが同じ手に引っ掛かるとは思えなかった。
だから、まずはフィールドを整えることにしたのだ。

「バハムートは十中八九、炎タイプの魔物モンスターです。寒い場所では、本領を発揮出来ないでしょう」

「それは理解出来るけど、そこからどうするの?戦いづらい環境を作れたとしても、勝てるとは限らないでしょう?」

「ええ、それくらい分かっています。だから、こうやって準備をしているんですよ」

 そう言って、私は毒矢を指さした。

「これは神経毒をたっぷり塗った弓矢です。バハムートが環境の変化に動揺している隙に、コレを打ち込みます」

「う、打ち込みますって……こんな普通の矢じゃ、バハムートの鱗は貫通出来ないわよ?」

 困惑気味にかぶりを振るヴィエラさんに、私はスッと目を細めた。

「よく考えてみてください。バハムートの体全体が、鱗に覆われている訳じゃないでしょう?」

「鱗のない場所……?って、まさか!?」

「はい、その『まさか』です。私達が狙うのは────バハムートの目や口です」

 ピンッと人差し指を立てて断言すると、ヴィエラさんは呆れにも似た苦笑を漏らした。

「はぁ……ラミエルちゃんも、だんだん『虐殺の紅月』に毒されて来たわね」

「ははっ。そうかもしれませんね」

「笑い事じゃないわよ、もう……まあ、その話は後回しにするとして……トドメはどうするつもり?」

「トドメですか?そりゃあ、もちろん────」

 そこでわざと言葉を切ると、私はヴィエラさんの肩に手を置いた。

「────ヴィエラさんの氷結魔法でトドメを刺す、に決まっているじゃないですか」

 『氷の最上位魔法コーキュートス、お願いしますね』と遠回しに言えば、茶髪の美女は『やっぱり、そうなるわよね』と呆れ気味に頷いた。
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