『魔王討伐クエスト』で役に立たないからと勇者パーティーに追い出された回復師は新たな仲間と無双する〜PK集団が英雄になるって、マジですか!?〜

あーもんど

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第四章

第169話『ケルベロスとの死闘』

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 犬の頭を三つ持つケルベロスは、『アォーン!』と一斉に吠えた。
その途端、体にピリピリとした感覚が走る。恐らく、相手の殺気を感じ取ったのだろう。

「アヤ、結界を!」

「分かってます!」

 遠吠えを続けるケルベロスに対し、アヤさんは素早く結界を展開させた。
私達四人を囲むようにして防御を固め、遠吠えの効果を無効化する。

「とりあえず、これで暫くは時間が稼げるな……」

「でも、そう長くは持ちませんよ」

 ケルベロスの出方を窺いながら、アヤさんは厳しい表情でそう告げた。
その瞬間、ケルベロスが遠吠えをやめ、こちらへ突進してくる。
直接攻撃に切り替えた奴を前に、アヤさんは慌てて結界を追加した。
が、ケルベロスの頭突きにより破壊される。
最初に展開した結界にも、ヒビが入っていた。

「アヤの展開した結界でも、これか……」

「でも、攻撃を防ぎ切れない訳ではないのです。結界を複数展開させれば、何とか持ち堪えられそうなのです」

「問題はアヤさんがいつまでケルベロスの攻撃を防ぎ切れるか、ですね……結界の数や量には、限界があるでしょうし」

「正直なところ、かなりキツいですね。スキルなしの結界とは言え、ああも簡単に壊されては……スキルを使うにしても、魔力MPの消費が……」

 『消耗戦になったら、負ける』と示唆し、アヤさんは唇を噛み締めた。
────と、ここで結界に大きな亀裂が入る。

「っ……!境を隔てる壁を使りたまえ!《万物遮断》!」

 そう唱えたアヤさんは右手の人差し指と中指を立てた状態で、床を切るように腕をスライドさせる。
すると、足元から真っ白な光が放たれ、ケルベロスの行く手を阻むように立ち塞がる。
それと同時に、正方形型の結界は破壊された。

 アヤさん、ナイス判断!!そこでスキルを使ってなかったら、少しやばかったかもしれない!
ケルベロスの怪力は侮れないな……!!

 光の壁に向かって吠えるケルベロスを前に、私はギュッと手を握り締める。

「この結界スキルは長く持ちません……!早く逃げるなり、作戦を考えるなりしてください!」

「分かった。とりあえず、上へ逃げるで!」

「えっ?でも、どうやって……?」

 ファルコさんは飛べるかもしれないけど、私達にそんな能力はない。
空を自由に駆け回る翼もなければ、上空へ連れて行ってくれる便利な乗り物もないから。

「どうやってって……そんなん決まってるやろ!ワイが皆を連れて、飛んで行くんや!」

「えっ!?さすがにそれは無理がありますよ!私が地上に残るので、ファルコさんはアヤさんとアスタルテさんを連れて、上空へ避難してください!」

「何馬鹿なこと言ってんねん!そんなん無理に決まっとるやろ!?ワイは仲間を置いていったりしーひん!大体、女の子三人くらい余裕で持てるわ!」

「で、ですが……」

「嗚呼、もうっ!うっさいねん!黙って、アスタルテ持てや!」

 そう言って、ファルコさんは荒々しくアスタルテさんの首根っこを引っ掴むと、無理やり私に持たせる。
『えっ?』と困惑する私達を置いて、ファルコさんはゆっくりと浮上した。
かと思えば、履いていたブーツを脱ぎ捨てる。

「っ……!!すみません!!もうこれ以上は結界が持ちません!」

「いや、充分や!ありがとな、アヤ!」

 『よく頑張った!』と労いの言葉を掛け、ファルコさんは獣人化を果たす。
その瞬間────結界が崩壊した。
眼前まで迫ったケルベロスの脅威を前に、ファルコさんは私とアヤさんの服を足で掴む。

「一気に上まで行くで!!舌噛み切らんよう、気ぃ付けや!」

 そう言うが早いか、ファルコさんは自慢の翼を大きく広げて上昇した。
とにかく安全圏内に行こうと必死な彼を他所に、私はアスタルテさんをギュッと抱き締める。

 うっかり落としたりしないか、めちゃくちゃ不安なんだけど……!!
私やアヤさんはファルコさんの足でガッチリ掴まれているから安心だけど、アスタルテさんの命綱は私の腕だけ……!?こんなの紐なしバンジーと大差ないじゃん!!

 『落としたら終わる!』と危機感を煽られる中、ケルベロスは魔法攻撃を仕掛けてきた。
水魔法のアクアアロー、氷結魔法のアイスブロック、そして────風魔法による、飛行妨害。

「っ……!!クソッ……!!この風、邪魔くさいねん……!!」

 風魔法により行動を制限されているファルコさんは、水と氷の攻撃を避けるのに精一杯だった。
それでも攻撃を回避できない場合は、アヤさんの結界で攻撃を無力化している。
だが……こんな状態、長く続く筈もなく────ファルコさんの片翼に水の矢が貫通してしまった。

「《ハイヒール》!」

 慌てて治癒魔法を展開すれば、翼の傷は見る見るうちに癒える。
なので、墜落せずに済んだが……ホッとしている暇はなかった。

 どうにかして、反撃方法を考えないと……!このままじゃ、私達がケルベロスに殺されるのも時間の問題だ!

 逸る気持ちを抑えながら、私は必死に思考を巡らせた。
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