『魔王討伐クエスト』で役に立たないからと勇者パーティーに追い出された回復師は新たな仲間と無双する〜PK集団が英雄になるって、マジですか!?〜

あーもんど

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第四章

第167話『第七階層』

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 そしてファルコさんの指示により配置を少し変え、隊列を整えると第七階層へ足を踏み入れていた。
そこにはスクイッグと呼ばれる魔物モンスターが居り、戦闘班と交戦を繰り広げている。

「っ……!!くそっ!!このクソみたいな)歌声《・・》、どうにかなんねぇーのかよ!?」

 人面の球体に二本の足と長い尻尾を生やした魔物モンスターを指さし、戦闘班のメンバーは苛立った。
というのも、スクイッグの戦い方が────ダミ声で歌を歌い、集中力が低下したところで尻尾の打撃を食らわせるというものだから。
どうしても、気が散ってしまうのだ。

「音の魔法で、どうにかならない?」

「魔法で無音世界を作り出すことは出来るけど、特定の人物の声だけ聞こえなくするのは難しいかな」

「あ”ーーーー!!イライラするぅぅぅうう!!どんだけ音痴なんだよ、こいつ!!」

 スクイッグと戦い始めてまだ十分も経過していないというのに、戦闘班のメンバーは早くも音を上げる。
必死に耳を押さえながら応戦し、思い切り顔を顰めた。

「もー!こいつら、うるさいなぁー!せっかく、ラミエルの隣になれたのに喜ぶ暇もないじゃーん!」

 金の斧片手にプンスカ怒っている青髪の美少年は────苛立ち紛れにスクイッグの舌を斬り落とす。
おかげで、スクイッグは歌うことが出来ず……『あ、ぁ……ああっ!!』と変な声を上げていた。

「うげぇー!こいつの唾液が斧についたー!気持ちわるーい!」

「でも、舌を斬り落としたおかげで静かになりましたね」

「まあ、静かになったのは一体だけだけどねー」

 シムナさんは斧をブンブン振り回し、遠心力で唾液を弾き飛ばす。
『パーフェクトクリーン使おうかな?』と零す彼の横で、私は口元に手を当てた。
と同時に、声を張り上げる。

「魔法使いの皆さん!スクイッグの舌を斬り落として頂けると助かります!」

 シムナさんの『舌を切り落とす』というアイディア自体はとても良かったため、遠慮なく使わせてもらう。
すると、四方八方から『その手があったか!』と声が上がった。

「ラミエルちゃん、任せてちょうだい!舌を切り落とすくらい、造作もないわ!」

 そう言って、ヴィエラさんは何やら呪文を唱える。
と同時に、にスクイッグの合唱は一気に小さくなった。
どうやら、今の一瞬でほとんどのスクイッグの舌を切ったらしい。
『さすがは“アザミの魔女”』と感心する中、他の魔法使い達が

「《ウインドカッター》」

「《シルフィード・アウト》」

「《風の乙女》」

 ヴィエラさんのやり損ねたスクイッグの舌を仕留める
これにより、合唱は強制終了した。
ここから先は戦闘班の出番である。

「わー!めっちゃ静かになったー!」

「あの下手くそな歌声が聞こえないだけで、こんなに気持ちよく戦えるなんて……!!」

「めっちゃ快適なんだけど!!静かって、素敵!」

 うっとりとした顔で武器を振り上げ、彼らはスクイッグに襲い掛かる。
小賢しい手を使えなくなったスクイッグなど敵ではないのか、バッサバッサと斬り伏せていった。

「なんか、これだと私達が弱い者虐めしているみたいですね」

「まあ、実際この音痴魔物モンスターはめちゃくちゃ弱いしねー」

「……シムナさんからすれば、魔物モンスターの大半は弱い部類に含まれるでしょうね」

「かもねー。ま、魔物モンスターとあまり戦った経験がないから分かんないけどー」

 退屈そうに足元の小石を蹴るシムナさんは、『やっぱ、コンピューター相手じゃつまんないなぁ』と零す。
PK大好きなところは、いつになっても変わらないらしい。

「あっ、大方片付いたみたいだねー。ファルコが『第八階層へ移動するで~』って言っているよー」

「この騒がしい空間で、よくファルコさんの声を拾えますね」

狙撃手スナイパーの僕は五感が優れてるからねー。あっ、列が進み始めたよー。ラミエル、僕らも移動しよー」

 子供のように無邪気に笑う彼は、私の手を引いて歩き出す。

「シムナさん、はしゃぎ過ぎて転ばないでくださいよ」

「大丈夫だよー!僕、そんなダサいことしないからー!」

 『あははっ!』と楽しげに笑うシムナさんは、いつも通りマイペースで……ちょっと安心する。
彼を見ていると、『何があっても大丈夫』と思えるから。
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