『魔王討伐クエスト』で役に立たないからと勇者パーティーに追い出された回復師は新たな仲間と無双する〜PK集団が英雄になるって、マジですか!?〜

あーもんど

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第四章

第149話『溢れ出す思い』

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 その後、イーストダンジョンに関する情報の共有や参加メンバーの決定、物資調達の依頼などなど……イーストダンジョン攻略に必要な話し合いを粗方済ませた。
こんなにも早く進んだのは、全てファルコさんのおかげである。
彼が己の経験則を元に、色々アドバイスしてくれたから。
なので、イーストダンジョン攻略の総司令官は自然とファルコさんで決まった。
ちなみに私は職業別ランキング一位という事もあり、治療班の班長を任されている。

 ただゲストとして呼ばれただけなのに、こんな大役を授かるとは……まあ、任せられた以上頑張るけど!

「ラミエル、帰るぞ」

「あ、はい!」

 会議が終了するなり席を立ったリーダーに釣られ、私も立ち上がった。

「ラミエルさん、また今度なのです~」

「何か困ったことや相談したいことがあったら、気軽に連絡してや~。ほな、またな~」

「無名もまた会おうな」

「はい。会議お疲れ様でした。またお会いしましょう」

「ああ」

 どこからともなく飛んできた別れの挨拶に応え、私達はこの場を後にした。
────のだが……黒曜の洞窟を出たあたりで、後ろから呼び止められる。

「────おい、待てよ」

 聞き覚えのある声が耳を掠め、リーダーは仕方なさそうに振り返った。
そうなると、抱っこされている私も後ろを見ることになる訳で……『サムヒーロー』の現役メンバーを目にする。
偉そうに仁王立ちするカインとそんな彼の腕に抱きつくミラさん、一人頭を抱えるマヤに、『もうダメだ』と手で顔を覆い隠すアキラ。
そんな彼らの前で、リーダーは実に堂々としていた。

「なんだ?俺達は今、急いでいるんだが」

「ははっ!そうカリカリすんなよ。そっちが俺の要求に応じてくれれば、直ぐに終わる」

「その要求に応じるつもりはない」

 間髪容れずに拒絶反応を表したリーダーに、カインは小さく肩を竦める。

「言う前から、要求拒否かよ」

「当然だ。お前らと取り引きするつもりなんて、毛頭ないからな」

「ははっ!まあ、そう言わずに話だけでも聞けよ────なあ?ラミエル」

「……何で私に話を振ったのかは分からないけど、まあ言うだけ言ってみたら?」

「ははっ!さすが、ラミエル。話の分かる奴だな。そういう所は昔から、全然変わんねぇーぜ。まあ……つるむ相手に関しては、改めた方がいいと思うけどな」

 チラッとリーダーに視線を向け、カインは鼻で笑う。
心底馬鹿にしたように、ら

 私のことだけならまだしも、リーダーのことまで馬鹿にするだなんて……!
正直、今すぐ殴り飛ばしたい気分だけど……乱闘騒ぎは不味い!
せっかく、良くなった『虐殺の紅月』のイメージを下げてしまう!

 ギュッと手を握り締め、必死に怒りを堪える私は小さく深呼吸した。

「……さっさと要求とやらを言ったら、どう?私達も暇じゃないんだけど」

「それもそうだな。こんな茶番、早く終わらせよう。ラミエル────」

 そこでわざとらしく言葉を切ると、カインはスッと手を差し出てきた。
まるで、白馬の王子様が囚われのお姫様に救いの手を差し伸べるみたいに……。

「────『サムヒーロー』に戻ってこい。何もかも水に流して、また一からやり直そうぜ」

 ……はっ?何言ってるの……?
貴方は自分のしでかしたことの意味を……責任を理解していないの?
そんな言葉で、私の苦しみや悲しみを帳消しにするつもり?

 無神経なんて言葉じゃ収まりきらない横暴っぷりに、私は何かがはち切れそうになる。

「ははっ!そうか、そうか。そんなに嬉しいか。そりゃあ、そうだよな?お前は『サムヒーロー』のことを凄く大切にしていたもんな。追放される時だって、涙目だったし。でも、もう安心だ。お前は今日から、また俺のパーティーメンバーになれるんだから。さあ、今すぐそのパーティーから抜けて……」

「……けないでよ……」

「ん?なんだって?」

「ふざけないでよ!!」

 勝手に話を進めていくカインに、私は気づいたら怒鳴っていた。
何かがプツンッと切れたように怒りや憎しみが涙となって、表れる。

「アンタが……ううん、アンタ達が勝手に私を追い出して、フレンドも削除して、私との関わりを全部切ったくせに……!今更、『戻ってこい』とか虫のいい話だと思わないの!?謝罪一つしないアンタ達のパーティーなんか、戻る気ないから!それに私は……!自分の意思で、『虐殺の紅月』に居るの!」

「なっ、何言って……お前、頭大丈夫か?」

「それはこっちのセリフだから!自分のことばっかりで、周りのことを一切考えないアンタのパーティーに誰が戻るって言うのよ!?私は『サムヒーロー』なんかより、仲間思いで優しい『虐殺の紅月』の方がずっと好き!!だから、もうこれ以上付き纏わないで!」

 今までずっと心に溜め込んできたものを吐き出し、私は要求を突っぱねた。
すると、カインは大きく目を見開いて固まっている。
基本、温厚な私の怒りを目の当たりにして衝撃を受けているようだ。

「そういう訳だ。俺達にはもう関わらないでくれ」

 そう言ってリーダーは私の後頭部に手を回し、そっと抱き寄せる。
『好きなだけ泣け』と促す彼に甘え、私は声を押し殺して泣き続けた。
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