148 / 315
第四章
第147話『意見のぶつかり合い』
しおりを挟む
「────いいえ、私は貴方達と同じ意見じゃありません。なので、これから私個人の意見をお話しします。くれぐれも途中で口を挟まないよう、お願いしますね?」
カインの自由すぎる行動に釘を刺した上で、私はサッと椅子から立ち上がった。
「まず結論から申し上げますと、私は『箱庭』の意見が────正しいと考えています」
カインとは真逆の意見を述べた私に、同盟メンバーの大半は安堵した。
『やっと、まともな意見が出たか』と。
まあ、カインは苦虫を噛み潰したような顔をしているが。
『本当、分かりやすいな~』と思いつつ、私は言葉を続ける。
「理由はただ一つ、強者揃いの『サムヒーロー』が何度戦いを挑んでも魔王戦で一発KOされていたから。確かに幹部戦は幾度となく突破していますが、魔王戦では手も足も出ずに敗北しています。火力や数でゴリ押し出来るとは、到底思えません」
間に焼き付いて離れない魔王戦の最期を思い浮かべ、私は表情を引き締めた。
「『箱庭』の意見の正しさは、『サムヒーロー』の実績と経験が裏付けています。そして、何より────魔王討伐クエストも全ダンジョン攻略クエストも、ゲーム攻略のためにいずれクリアしないといけないのです。全ダンジョン攻略クエストを先に攻略しても、何ら問題はないと思います。むしろ、魔王討伐クエストを先にクリアする理由がありませんから。私からの意見は以上です。ご清聴ありがとうございました」
その場でペコリと頭を下げ、私は椅子に再び腰を下ろした。
着目点を『『箱庭』の意見の正しさ』から、『魔王討伐クエストを先にやる必要はあるのか?』に移したから、大抵の人は私の意見に賛同するだろう。
まあ、そんな事しなくてもカインの意見に賛同する輩など居ないだろうが……。
だって、カインの説明って説得材料が『幹部戦は問題なくクリア出来たから、ゴリ押しで行ける』だけなんだもん。
この説得材料だって、『幹部戦と魔王戦は別物だろ』『ゴリ押しで行ける根拠は?』と言われたら、終わりだし。
「確かにラミエルの意見には、一理あるな。高レベルプレイヤーの揃っている『サムヒーロー』が手も足も出ないなんて、普通に考えて有り得ない。それも何度も挑んでいるのに、だ」
「もし、ゴリ押しで行けるなら、その片鱗が多少なりとも現れる筈なのです~」
「魔王討伐クエストを先にやって、多くの戦力を失うのも痛いしな……」
「ダンジョンはボスフロア以外自由に行き来できるから、いざって時は脱出可能だし」
「安全面も考えても、全ダンジョン攻略クエストからやった方がいいかもしれねぇーな」
案の定こちら寄りの意見を述べる同盟メンバーに、カインは思い切り顔を顰めた。
かと思えば、こちらを睨みつける。
「チッ……!何であいつの意見が……!」
「きっと、パーティーから追い出されたことを恨んでいるんですよぉ!ほら、あの人って執念深そうですしぃ!」
「ちょ、ちょっと!二人とも黙ってて!」
「頼むから、静かにしててくれ……」
「お前らに指図される覚えはねぇーよ。でも、そうか……あいつは俺のパーティーに追放されたことを恨んでいるのか。そんなに俺のパーティーに居たかったんだな。なら、こんな回りくどいことしてないで素直に言えばいいのに……」
自意識過剰と言うべきか、思い違いが過ぎると言うべきか……カインは何故かキメ顔で、こちらを見ている。
勘違いも甚だしい対応に、私は深い溜め息を零した。
────と、ここでリーダーに肩を叩かれる。
「無視しとけ。構うだけ無駄だ」
尤もらしいことを述べるリーダーに、私は苦笑を漏らした。
だって、そういう彼が一番腹を立てているから。
これでは、説得力がない。
「リーダーこそ、落ち着いてください。お気持ちは痛いほど、分かりますが……」
「……ああ」
フッとカインから視線を逸らし、リーダーは肩から力を抜いた。
そしてこの場の空気が少し軽くなった瞬間、ヘスティアさんが言葉を紡ぐ。
「他に何か意見のある者は居るか?居るなら、今のうちに名乗り出てほしい」
グルッと周囲を見回し、ヘスティアさんは数秒ほど沈黙する。
が、誰も名乗り出なかった。
「では、攻略順について決を採る。皆、自分が正しいと思う方に手を挙げてくれ。では、まず……魔王討伐クエストを先に攻略した方がいいと思う者」
今の状態では無謀とも言えるこの選択肢に、カインとミラさんは真っ先に手を挙げる。
それに少し遅れる形で、マヤやアキラも渋々手を挙げた。
恐らく、カインの顔を立てるためだろう。
でも、他の同盟メンバーは誰一人として手を挙げない。
「なっ!?何であいつらは手を挙げないんだよ!」
「カイン様の素晴らしい意見に文句でもあるんですかねぇ?」
はいはい、そこのバカップルは一旦黙ろうね?
このタイミングで私語はなかなかにやばいよ?
『頼むから静かにして』と願う中、ヘスティアさんはおもむろに腕を組んだ。
「『サムヒーロー』のパーティーメンバー以外に、賛同者は居ないみたいだな。では、次に全ダンジョン攻略クエストを先にした方が良いと思う者。手を挙げてくれ」
この最も妥当な選択肢に、『サムヒーロー』の現役メンバー以外サッと手を挙げた。
言うまでもなく、数の差は歴然である。
私からすれば分かりきっていた結果だが、カインはこの事態を想定していなかったようで舌打ちした。
まあ、元メンバーである私の意見を支持されれば、さすがに傷つくよね。
プライドの高いカインは特に。
「多数決の結果、ラミエルの意見を支持する者が多かったため、我々の今後の方針は全ダンジョンの攻略となる」
カインの自由すぎる行動に釘を刺した上で、私はサッと椅子から立ち上がった。
「まず結論から申し上げますと、私は『箱庭』の意見が────正しいと考えています」
カインとは真逆の意見を述べた私に、同盟メンバーの大半は安堵した。
『やっと、まともな意見が出たか』と。
まあ、カインは苦虫を噛み潰したような顔をしているが。
『本当、分かりやすいな~』と思いつつ、私は言葉を続ける。
「理由はただ一つ、強者揃いの『サムヒーロー』が何度戦いを挑んでも魔王戦で一発KOされていたから。確かに幹部戦は幾度となく突破していますが、魔王戦では手も足も出ずに敗北しています。火力や数でゴリ押し出来るとは、到底思えません」
間に焼き付いて離れない魔王戦の最期を思い浮かべ、私は表情を引き締めた。
「『箱庭』の意見の正しさは、『サムヒーロー』の実績と経験が裏付けています。そして、何より────魔王討伐クエストも全ダンジョン攻略クエストも、ゲーム攻略のためにいずれクリアしないといけないのです。全ダンジョン攻略クエストを先に攻略しても、何ら問題はないと思います。むしろ、魔王討伐クエストを先にクリアする理由がありませんから。私からの意見は以上です。ご清聴ありがとうございました」
その場でペコリと頭を下げ、私は椅子に再び腰を下ろした。
着目点を『『箱庭』の意見の正しさ』から、『魔王討伐クエストを先にやる必要はあるのか?』に移したから、大抵の人は私の意見に賛同するだろう。
まあ、そんな事しなくてもカインの意見に賛同する輩など居ないだろうが……。
だって、カインの説明って説得材料が『幹部戦は問題なくクリア出来たから、ゴリ押しで行ける』だけなんだもん。
この説得材料だって、『幹部戦と魔王戦は別物だろ』『ゴリ押しで行ける根拠は?』と言われたら、終わりだし。
「確かにラミエルの意見には、一理あるな。高レベルプレイヤーの揃っている『サムヒーロー』が手も足も出ないなんて、普通に考えて有り得ない。それも何度も挑んでいるのに、だ」
「もし、ゴリ押しで行けるなら、その片鱗が多少なりとも現れる筈なのです~」
「魔王討伐クエストを先にやって、多くの戦力を失うのも痛いしな……」
「ダンジョンはボスフロア以外自由に行き来できるから、いざって時は脱出可能だし」
「安全面も考えても、全ダンジョン攻略クエストからやった方がいいかもしれねぇーな」
案の定こちら寄りの意見を述べる同盟メンバーに、カインは思い切り顔を顰めた。
かと思えば、こちらを睨みつける。
「チッ……!何であいつの意見が……!」
「きっと、パーティーから追い出されたことを恨んでいるんですよぉ!ほら、あの人って執念深そうですしぃ!」
「ちょ、ちょっと!二人とも黙ってて!」
「頼むから、静かにしててくれ……」
「お前らに指図される覚えはねぇーよ。でも、そうか……あいつは俺のパーティーに追放されたことを恨んでいるのか。そんなに俺のパーティーに居たかったんだな。なら、こんな回りくどいことしてないで素直に言えばいいのに……」
自意識過剰と言うべきか、思い違いが過ぎると言うべきか……カインは何故かキメ顔で、こちらを見ている。
勘違いも甚だしい対応に、私は深い溜め息を零した。
────と、ここでリーダーに肩を叩かれる。
「無視しとけ。構うだけ無駄だ」
尤もらしいことを述べるリーダーに、私は苦笑を漏らした。
だって、そういう彼が一番腹を立てているから。
これでは、説得力がない。
「リーダーこそ、落ち着いてください。お気持ちは痛いほど、分かりますが……」
「……ああ」
フッとカインから視線を逸らし、リーダーは肩から力を抜いた。
そしてこの場の空気が少し軽くなった瞬間、ヘスティアさんが言葉を紡ぐ。
「他に何か意見のある者は居るか?居るなら、今のうちに名乗り出てほしい」
グルッと周囲を見回し、ヘスティアさんは数秒ほど沈黙する。
が、誰も名乗り出なかった。
「では、攻略順について決を採る。皆、自分が正しいと思う方に手を挙げてくれ。では、まず……魔王討伐クエストを先に攻略した方がいいと思う者」
今の状態では無謀とも言えるこの選択肢に、カインとミラさんは真っ先に手を挙げる。
それに少し遅れる形で、マヤやアキラも渋々手を挙げた。
恐らく、カインの顔を立てるためだろう。
でも、他の同盟メンバーは誰一人として手を挙げない。
「なっ!?何であいつらは手を挙げないんだよ!」
「カイン様の素晴らしい意見に文句でもあるんですかねぇ?」
はいはい、そこのバカップルは一旦黙ろうね?
このタイミングで私語はなかなかにやばいよ?
『頼むから静かにして』と願う中、ヘスティアさんはおもむろに腕を組んだ。
「『サムヒーロー』のパーティーメンバー以外に、賛同者は居ないみたいだな。では、次に全ダンジョン攻略クエストを先にした方が良いと思う者。手を挙げてくれ」
この最も妥当な選択肢に、『サムヒーロー』の現役メンバー以外サッと手を挙げた。
言うまでもなく、数の差は歴然である。
私からすれば分かりきっていた結果だが、カインはこの事態を想定していなかったようで舌打ちした。
まあ、元メンバーである私の意見を支持されれば、さすがに傷つくよね。
プライドの高いカインは特に。
「多数決の結果、ラミエルの意見を支持する者が多かったため、我々の今後の方針は全ダンジョンの攻略となる」
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
375
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる