『魔王討伐クエスト』で役に立たないからと勇者パーティーに追い出された回復師は新たな仲間と無双する〜PK集団が英雄になるって、マジですか!?〜

あーもんど

文字の大きさ
上 下
143 / 315
第四章

第142話『同盟会議の参加理由』

しおりを挟む
「────今回の同盟会議にはラミエルも参加するよう、指示された」

 えっ……えぇ!?何で私も同盟会議に!?
会議に参加するメンバーを増やして、意見交流の幅を広げる方針かな!?
それとも、『箱庭』のメールで名前を挙げられていたから!?
でも、たったそれだけの理由で私を会議に呼ぶだろうかな……!?

「はぁ~?何でラーちゃんも~?」

「ラミエルは今、疲れてるんだからボスだけで行ってきてよー!」

『ただ単純に参加メンバーを増やしたいだけなら、僕がラミエルの代わりに行こう』

 猛抗議する三馬鹿に対し、リーダーはポーカーフェイスを保ったままこう答える。

「魔王討伐クエストについて、色々聞きたい事があるらしい。ラミエルは『サムヒーロー』の元メンバーな上、このイベントを通して冷静な思考力と判断力を発揮出来たからな。一応、『サムヒーロー』の現メンバーも会議に呼んでいるみたいだが……ラミエルの意見も聞きたいとのことだ」

 ……えっ?今、なんて……?
『サムヒーロー』の現メンバーも会議に呼んでいるって、言った……?私の聞き間違いじゃないよね……?

 サァーッと血の気が引いていく感覚と共に、私は唇を噛み締める。

 徳正さん達のおかげで、過去はある程度乗り越えられた。
もう『サムヒーロー』の話を持ち出されても、動揺しないくらいには……。
でも、それはあくまで過去を受け入れることが出来ただけで、過去の人物と関わりを持てるほど回復した訳じゃない。
もう『サムヒーロー』を辞めたセトはさておき、現メンバーであるカインやマヤと再会するなんて…………私にはまだハードルが高かった。

「ちょ、主君!それはさすがにこくだって!ラーちゃんの気持ちも考えてあげてよ!」

「不参加じゃダメなのー?もしくは『サムヒーロー』の奴らと会わないよう、日程をズラすとかさー」

『お頭とラミエルが通話を繋いで、音声だけで会議に参加するなんてどうだ?』

「俺もラミエルに酷なことを言っている自覚はある。だが、いつまでも隠れてやり過ごす訳にはいかないだろ。もちろん、不参加も日程調整も通話参加も却下だ」

「な、なっ!?そ、そそそそそそ、それはあまりにも酷過ぎると思います!!す、少しくらいラミエルさんのことを気遣ってあげたって良いじゃないですか!」

「キング、今回は私もこの子達の意見に賛成よ。あまりにも事が性急すぎる上、ちょっと強引過ぎるわ」

 今回は珍しくパーティーメンバー全員が、リーダーの意見に反対した。
基本的にリーダーの言うことには、絶対服従なのに。
皆から庇ってもらえて嬉しい反面、誰かに守ってもらわなきゃいけない自分に嫌気が差した。

 少しはマシになったと思ったのに……私は結局、昔と何も変わらない。

 震える手をギュッと握り締め、私はリーダーの申し出になんて答えるべきか悩む。
その間も、リーダーと徳正さん達の言い合いは続いていた。

「多少無理をしてでも、今のうちにあいつらに会っておくべきだ。いつまでも過去に囚われ続けるなんて、それこそラミエルのためにならない」

「だからって、こんな急に言われても困るでしょ~。主君、段取りって知ってる~?」

「大体さー、それはラミエルの決める問題であって、ボスの決める問題じゃないと思うんだけどー」

『過去と向き合うのは、そんな簡単なことじゃない。お頭の気持ちも分からなくはないが、もっと慎重になるべきだったと思う』

「強引なのも急なのも認める。だが、強引にでも過去と向き合う機会を与えないとラミエルはずっと変わらないままだ。それに変に時間を空けると、本番当日まで悩むことになるだろ」

「確かにそうかもしれないけど、明後日って……女の子には心の準備が必要なのよ。加減ってものを知りなさい」

「ヴィ、ヴィエラさんの言う通りですぅぅぅううう!」

 ギャーギャーと騒ぐ彼らの会話内容は、言い合い……と言うより、押し問答に近い。
どちらも引こうとしないため、収拾がつかなくなっている感じだ。

 どうしよう……私のせいだ。

 『早く答えを出さないと』と焦る中、一人の男性が手を挙げた。

「ちょっといいか?部外者である俺が口出しするのもあれだが、こんな意味のない言い合いをするより────ラミエルが自分なりの答えを出すまでゆっくり待ったら、どうだ?」

「「「!?」」」

「最終的な決断はラミエルが下すんだろ?なら、考えを整理するまで待ってやれば良いじゃねぇーか。それで、ラミエルが『まだ過去と向き合える自信がない』って言うなら匿ってやればいいし、『過去と向き合いたい』って言うならただ応援してやれば良い。違うか?」

 ずっとアラクネさんの隣で沈黙を守ってきた田中さんは、ご尤もな意見を並べた。
すると、徳正さん達は途端に落ち着きを取り戻す。

「……まあ、確かにラーちゃんの意見を聞かないことにはどうしようもないよね~」

「僕はたとえ、ラミエル自ら会議に参加するって言っても気乗りしないけどー」

『なんにせよ、僕達だけで話を進める訳にはいかない』

「そ、そそそそ、そうですね!決定権はラミエルさんにあると思います!」

「ごめんなさいね?ラミエルちゃん。寝起きだからか頭がボーッとして、そこまで思い至らなかったわ」

「とりあえず、ラミエルの意見を聞かせてくれ」

 田中さんの正論に理解を示した『虐殺の紅月』のメンバーは、誰もが私に視線を向けた。
ただ静かに返答を待つ彼らの前で、私は自分自身と向き合う。

 正直に言うと、まだカイン達とは会いたくない。
自分勝手でワガママなカインに何を言われるか分からないし、あんな別れ方をしたマヤ達にどんな顔して会えば良いのか分からないから。
でも────そんな理由で、会議の参加を見送るなんて出来ない。
だって、私の力を必要としてくれる人達が居るんだよ?
なのに、過去に脅え、尻尾を巻いて逃げると言うの?
私にはもう────心強い仲間達がこんなに居るのに?

 心配そうにこちらを見つめるメンバー一人一人の目を見て、私はフッと笑みを漏らした。
カインより遥かに強くて頼りになる仲間が居るのに、私は何を躊躇っているんだ?と思って。

「リーダー、同盟会議参加の件────謹んでお受けします。私にはもう彼らに怯える理由も、尻尾巻いて逃げる理由もありませんから。支えてくれる皆が居るので、もう大丈夫です」

「ラミエル……よく決断してくれた」

 どことなく柔らかい表情を浮かべながら、リーダーは私の決断を支持してくれた。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

処理中です...