『魔王討伐クエスト』で役に立たないからと勇者パーティーに追い出された回復師は新たな仲間と無双する〜PK集団が英雄になるって、マジですか!?〜

あーもんど

文字の大きさ
上 下
137 / 315
第三章

第136話『アヤ』

しおりを挟む
 つい先程までそこにあった筈の海水は綺麗さっぱり消え去り、代わりに乾燥した大地が広がっている。

 状況から察するに、魔法剣士であるヘスティアさんと他数名の魔法使いが協力して海を干上がらせたんだろうけど……そんなのって、あり!?
まだ巨大ロボットを使って、空から参上した田中さん達の方が常識的だよ!?

「ヘスティアお姉様は相変わらず、アグレッシブだね~。普通は海を干上がらせたり、出来ないよ~」

「そうか?結界で海をある程度区切れば、意外と行けるぞ?」

「いやいや、無理だって~」

「はっはっはっはっ!徳正は相変わらず、ガッツが足りないな!それより、そのアヤに似ている子は……」

 ん?アヤ?

 どことなく聞き覚えのある単語に、私は首を傾げる。
『どこで聞いたんだっけ?』と記憶を遡る私の前で、徳正さんはスッと目を細めた。

「ねぇ~、そのアヤってさ────もしかして、レオンくんの元カノ~?」

「ん?レオンを知っているのか?」

「知っているって言うか、今一緒に行動を共にしてるって言うか~。ま、とにかく……そのレオンくんもラーちゃんのこと、『アヤと似ている』って言ってたんだよね~。なんなら、ラーちゃんのことアヤさんだと勘違いしてたし~」

 腕を切り落とされたことは伏せ、徳正さんはこちらへ視線を向ける。

「とりあえず、この子は回復師ヒーラーのラミエルね~。今はマジックポーションの過剰摂取で会話もままならないだから、多少の無作法は許してあげて~」

「ふむ。マジックポーションの過剰摂取か。それはまたなんと言うか……無理をしたな。だが、安心しろ。私達が来たからには、もう大丈夫だ!ここから先は私達『紅蓮の夜叉』に任せてくれ!」

「言われなくても、そのつもりだけど~?これ以上、ラーちゃんに無理させる訳にはいかないからね~」

「はっはっはっはっ!お前が他の者をここまで心配するなんて珍しいな!よし!面白いものを見せてくれた御礼として、イベント終了までウチの結界師を貸してやろう!」

「いや、いらな……」

「おい、アヤ!こっちに来い!」

 徳正さんの話なんて聞く気0のヘスティアさんは、勢いよく後ろを振り返った。
すると、何百何千もの軍勢の中から一人の少女が姿を現す。
アヤと呼ばれたその少女は栗色の長い髪を靡かせ、エメラルドの瞳に私達を映し出した。

 うわぁ……確かに私に似ている。
瓜二つとまでは行かないけど、パッと見じゃ分からないかも。
だって、違う点と言えば髪型とホクロの位置くらいしかないもん。

 ツインテールにされた茶髪と目元にホクロを見つめ、私はちょっと感心する。
『ここまで似ることって、あるんだなぁ』と。

「ふむ。改めて見てると、やはりアヤとラミエルは似て……」

「ないね~。全っ然似てない~。皆が『似てる似てる』言うから、ちょっと期待したのに~」

「む?そうか?私の目には瓜二つに見えるが?」

「ヘスティアお姉様の目は節穴なの~?鼻の高さも目の位置も唇の薄さも、全然違うじゃ~ん。確かに目や髪の色は同じだけど、それだけって感じ~」

 当人である私すら似ていると感じているのに、徳正さんは異様なまでに反論する。
『ないわ~』と言わんばかりに首を横に振る徳正さんの前で、ヘスティアさんは目を凝らした。

「ふむふむ……やっぱり、分からん!二人の違いなど、髪型くらいだろう!と、それはさておき……アヤ、徳正達をよろしく頼むぞ!海に張った結界の維持もな!」

「お任せください、ヘスティアさん」

「うむ!あとは頼んだ!────残りの奴らは私についてこい!ゴーレムを一匹残らず、駆逐するぞ!」

「「「はい!!」」」

 『紅蓮華』の異名を持つ剣身が赤い剣を、ヘスティアさんは高く掲げた。
かと思えば、勢いよく駆け出す。
他のメンバーも、それに続いた。

 うぅぅぅ……砂埃で目が……。

 思わずギュッと目を瞑ると、徳正さんが優しく話しかけてくる。

「ラーちゃん、目を閉じたら痛いでしょ~?ほら、開けて~。砂が目の中に入っちゃったんだね~」

 『痛い痛いだね~』と言い、徳正さんはよしよしと頭を撫でる。
完全に子供扱いされているが……反論する気力もないため、私は素直に目を開けた。

「ん。良い子良い子~。とりあえず、目薬を……」

「良ければ、こちらをお使いください」

 そう言って、アヤさんは横からスッと目薬を差し出した。
如何にも真面目そうな彼女は、ご丁寧に目薬のキャップまで外している。

「ありがと~。有り難く、使わせてもらうね~」

「いえ、礼には及びません。ウチのギルドメンバーが、散々お世話になったみたいですから、これくらいは……」

「そこは『私の元彼が~』でしょ?」

「……さっさと目薬をさしたら、どうですか?」

 過去を掘り返そうと挑発する徳正さんに対し、アヤさんは一瞬だけポーカーフェイスを崩す。
が、直ぐに表情を取り繕った。
至って冷静な彼女を前に、徳正さんは小さく肩を竦める。

「ま、君達の恋愛には興味ないし、話さなくてもいいけどさ~……君達の痴話喧嘩に、ラーちゃんが巻き込まれたことだけはしっかり覚えといてね~」

「……はい」

 気まずそうな顔で視線を逸らすアヤさんに、徳正さんはスッと目を細めた。
かと思えば、慣れた様子で私に目薬をさす。
『ラーちゃん、お目目パチパチして~』と指示を出す彼に、私はコクリと頷いた。
言われるがままに目の開閉を繰り返しながら、『なんか、いつもより態度悪いな?』と思案する。

 初対面のプレイヤーに冷たいのはいつものことだけど、ここまで意地悪な言動を取るのは珍しい……何かあったのかな?
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

処理中です...