『魔王討伐クエスト』で役に立たないからと勇者パーティーに追い出された回復師は新たな仲間と無双する〜PK集団が英雄になるって、マジですか!?〜

あーもんど

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第三章

第124話『面白い仕掛け』

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 一瞬で見えなくなったリーダーの背中を前に、私はとりあえずレオンさんを呼び戻す。
さすがに限界だったのか、彼は強がることなく素直に戦線を離脱した。

「はぁはぁ……つれぇ……ラルカ達のペースには、ついて行けねぇ……」

「まず、ついて行こうとすること自体無謀だと思うよ☆彼らと僕らでは、格が違うのだから」

「マジレスやめろぉ……はぁはぁ……」

「相当バテてますね。お水どうぞ」

 疲労困憊状態のレオンさんへ、私はいつぞやの瓢箪を手渡す。
中身はウエストダンジョン第十階層の水だが、味や健康に問題はない筈だ。
数日前にこっそり味見……というか、毒味したから間違いない。

 だけど、まあ……どこの水かは言わない方が良いよね。ちょっとヘタレなレオンさんは、警戒するだろうし。
知らない方が幸せなこともある。

 密かに黙秘権を行使する私の前で、レオンさんは瓢箪の蓋を開けた。
と同時に、ゴクゴクと中身の水を飲む。

「……ぷはー!生き返るぜ!美味いな、この水!氷山の雪解け水みたいだぜ!」

「レオンさん、なんだか親父臭いよ☆」

 思ったことをそのまま口に出すリアムさんは、ふと空を見上げる。

「それにしても、暇だね☆レオンさんが来れば、少しは暇を潰せるかと思ったのに」

「おい、人を暇潰しの道具みたいに言うな。大体、お前にはラミエルを守るっていう大事な任務があるだろ」

「大事な任務だなんて、大袈裟ですね」

「護衛はちゃんとやってるよ。でも、今のところゴーレム達に襲われる心配はないんだ」

「確かにめちゃくちゃ平和だよな。ゴーレム達の進行の妨げにさえならなければ、怪我する心配はねぇーし」

 ヌルゲーと言って差し支えない現状を前に、私達は『嵐の前の静けさみたいだな』と思案した。
────と、ここで機械音声が脳内に流れる。

『ゴーレムの討伐数が2000を超えました。おめでとうございます。これで、ゴーレムの討伐数を知らせるアナウンスは最後となります。目標の3000体に到達するか、イベント終了時刻になったとき『箱庭』からメールが届きますので、そちらをご確認ください。それでは、皆さんご武運を』

 全く心の篭っていないエールを前に、私達は顔を見合わせる。

「やっと、残り1000を切ったみたいだな」

「そうですね。ここからが本当のラストスパートです」

「ということで、レオンさん。ゴーレム討伐、頑張ってね☆」

「もう戻れ、と……?」

 『早く行け』と言わんばかりにゴーレムの群れを指さすリアムさんに、レオンさんは頬を引き攣らせる。
急がなきゃいけない状況なのは分かっているが、さすがにまだ前線へ戻れるほど体力は回復していないのだろう。
渋るような動作を見せる彼の前で、リアムさんは『ゴーゴー!』と急き立てる。

「大丈夫だよ、レオンさん。アシストはちゃんとするから☆」

「頼むから、やめてくれ……」

「僕の弓矢で完璧にサポートしてあげるよ☆」

「お前の弓矢で、後ろから刺される気しかしねぇーよ。マジで勘弁してくれ」

「はっはっはっ!レオンさんは面白いジョークを言うんだね。僕がレオンさんを後ろから刺すなんて、有り得ないよ。僕には弓矢を遠隔操作リモートコントロールがあるんだから☆」

「ニヶ月前……お前がまだ新人だった頃、俺の足を弓矢で射抜いたこと覚えてねぇーのか?」

「はっはっはっ!あの時は手元が狂ってしまったんだ」

 愉快げに笑い声を上げるリアムさんは、過去の失態を笑い飛ばす。
『過去は振り返らないタイプなんだ』と話を締め括る彼の前で、レオンさんは頭を抱え込んだ。

 意外と押しに弱いレオンさんが断固拒否の姿勢を貫くなんて、珍しいと思ったら……前科持ちだったのね。

 『道理で嫌がる訳だ』と納得し、私は助け舟を出す。
今のままでは、あまりに可哀想だったから。

「とりあえず、リアムさんは私の護衛に集中してください。レオンさんはあと五分休憩したら、ゴーレム討伐に戻っ……」

 『戻ってください』と続ける筈だった言葉は────突如巻き起こった爆発により、遮られる。
気を抜けば飛ばされるほど強い衝撃波を受け、私はズザザザザと後ろへ下がった。

「っ……!!」

「「ラミエル!」」

 慌ててこちらへ手を伸ばすリアムさんとレオンさんは、私の肩を掴み体重を掛ける。
でも、思ったより苦しい状況のようで二人とも顔を歪めていた。

 何……!?いきなり!爆発なんて、聞いてないんだけど……!?
しかも、複数箇所って……!

 四方八方から吹く風に押されながらも、私は何とか地に足を付けて耐え抜く。
『リアムさん達に押さえてもらってなかったら、ヤバかったかも……』と思いつつ、辺りを見回した。
そして、真っ先に目に入ったのは─────

「嘘……!?大陸を繋げる橋カンティネン・ブリッジが、破壊されている!」

 ────海に散乱した瓦礫とロープだった。橋としての面影はもうない。

 四つとも、壊されている……これじゃあ、中央大陸から出ることが出来ない。

 完全に予想外の事態を前に、私は頭が真っ白になった。

「逃げ道を絶たれた……外から助けを求めようにも、船での移動は時間が掛かる……少なくとも、イベント中の助けは見込めない……じゃあ、『箱庭』の言っていた面白い仕掛けって────残りのゴーレムを中央大陸に集結させ、そこに集まったプレイヤー諸共閉じ込めることだったの……?」

 だって、そうとしか考えられない。
私達プレイヤー側には、橋を落とすメリットなんてないから。
おまけに四箇所同時なんて……このことを事前に知っていなければ、不可能。

 『完全にやられた』と歯を食いしばり、私はギュッとスカートを握り締めた。
と同時に────ゴーレム達の最優先事項が、移動から戦闘に入れ替わる。

「レオンさん!!」

「分かっている!!」

 おもむろに拳を振り上げたノーマルゴーレムを前に、レオンさんは身構えた。
手に持った瓢箪を投げ捨て、真っ直ぐに前を見据える。

狂戦士バーサーカー化6%……|《鉄拳制裁》!」

 スキルを発動させ攻撃力を高めたレオンさんは、ゴーレムのパンチに合わせて拳を叩き込んだ。
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