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第三章
第119話『奇行と仮説』
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「んじゃ、行ってきまーす!」
金と銀の斧を持ってこの場から飛び出した青髪の美少年は、ノーマルゴーレム目掛けて一直線に駆けて行く。
これでもかというほど、口元を歪めながら。
ほ、本当に大丈夫かな……?うっかり、瞬殺しない?
一発KOとかされたら、めちゃくちゃ困るんだけど……。
内心不安で堪らない私を他所に、シムナさんは
「えいっ!」
と言って、ノーマルゴーレムの片足を切り落とした。
それによりゴーレムはバランスを崩し、倒れ込む。
なるほど……四肢を順番に切り落としていく作戦か。確かにそれなら、瞬殺してしまう心配はない。
一応、あの巨大ゴーレムはダンジョンのフロアボス並の強さを持っているからね。
『ふむ。ちゃんと手加減は出来ているな』
「だね~。じゃあ、俺っち達はゴーレムの動きでも観察しておきますか~」
「そうですね」
────と、同意したはいいものの……戦闘時のノーマルゴーレムに変わった様子はない。
今まで通りのスーパースローパンチに、すばしっこいシムナさんを必死に追う虚ろな目。
片足を失ったため起き上がることも出来ず、ひたすらシムナさんに翻弄されていた。
また、もう一体のノーマルゴーレムは倒れた仲間にも奇襲を仕掛けてきたシムナさんにも目もくれず、ただ移動している。
「戦闘時の外見にも行動にも変化なし、ですか……」
「もしかしたら、『箱庭』の仕掛けた『面白い仕掛け』って、ゴーレム関係じゃないのかもね~」
「でも、メールには確かに『残りのゴーレム達に』と明記してあったぞ?」
『だが、実際何の変化もない訳だからな……』
顎辺りを撫で、思い悩むラルカさんはじっとノーマルゴーレムを見つめる。
────と、ここでリアムさんが口を開いた。
「でも、シムナを発見していながら見向きもしないなんて、おかしいと思わないかい?」
「!!」
確かにそうだ。プレイヤーの存在を探知していながら、襲い掛かってこないなんて……今までなかった。
少なくとも、昨日まではプレイヤーを目視でき次第、無差別に攻撃を仕掛けていた。
じゃあ、『箱庭』の施した『面白い仕掛け』ってプレイヤーを襲わないことだったの……?
────いや、違う。
あのサイコパス連中が、わざわざゲームの質を下げるような真似する訳ないもの。
でも、現にゴーレム達の行動はプレイヤー達を守っている……おそらく、そう見えているだけで目的は別にあるんだろうけど。
何にせよ────シムナさんを襲うより、優先すべきことがあるのは明白。
そこまで考えが及んだ時、私は一定方向に歩を進めるノーマルゴーレムに目を向けた。
その瞬間、一つの仮説が脳裏を過ぎる。
「もしかして、あの巨大ゴーレムは────どこかに向かっている……?」
「「「『!?』」」」
ボソッと呟いた独り言に、待機していたメンバーは大きく目を見開いた。
かと思えば、釣られるようにノーマルゴーレムを目で追う。
私の記憶が正しければ、昨日までゴーレム達は発現場所からほとんど動いてなかった。
それによくよく考えてみると、二体のゴーレムが同じ方向に進んでいるなんて……有り得ない。
本来であれば、協調性皆無の筈だから。
そこから、導き出される結論は一つ……多分、『箱庭』は生き残りのゴーレム達を────一ヶ所に集めるつもりなんだ。
「この仕掛けは、完全に予想外です……」
「だね~。盲点だったよ~」
『むしろ、よく気づいたな?ラミエル』
「僕がゴーレムの奇行を指摘したおかげだね☆」
「調子に乗るな」
「あだっ!?」
レオンさんから拳骨を食らったリアムさんは、被っていた帽子を脱ぎ、頭に出来たたんこぶを撫でる。
『酷いよ、レオンさん』と非難の声を上げる彼の横で、私は直ぐさま青髪の美少年へ視線を向けた。
「シムナさーん!そのノーマルゴーレムはもう倒していいんで、もう一体の方は生かしておいてくださーい!」
仮説を検証するためには、ノーマルゴーレムの行き先を調べなければならない。だから、今殺されるのは困る。
「りょーかーい!今、そっちに戻るねー!」
シムナさんは何の躊躇いもなくノーマルゴーレムの首を刎ねると、真っ直ぐこちらへ戻ってくる。
指示通り、もう一体のゴーレムには一切危害を加えなかった。
とりあえず、有力な仮説を立てることが出来た。あとはその仮説を検証するだけだ。
ゆっくりと遠ざかって行くノーマルゴーレムの背中を見つめ、私はゆるりと口角を上げた。
金と銀の斧を持ってこの場から飛び出した青髪の美少年は、ノーマルゴーレム目掛けて一直線に駆けて行く。
これでもかというほど、口元を歪めながら。
ほ、本当に大丈夫かな……?うっかり、瞬殺しない?
一発KOとかされたら、めちゃくちゃ困るんだけど……。
内心不安で堪らない私を他所に、シムナさんは
「えいっ!」
と言って、ノーマルゴーレムの片足を切り落とした。
それによりゴーレムはバランスを崩し、倒れ込む。
なるほど……四肢を順番に切り落としていく作戦か。確かにそれなら、瞬殺してしまう心配はない。
一応、あの巨大ゴーレムはダンジョンのフロアボス並の強さを持っているからね。
『ふむ。ちゃんと手加減は出来ているな』
「だね~。じゃあ、俺っち達はゴーレムの動きでも観察しておきますか~」
「そうですね」
────と、同意したはいいものの……戦闘時のノーマルゴーレムに変わった様子はない。
今まで通りのスーパースローパンチに、すばしっこいシムナさんを必死に追う虚ろな目。
片足を失ったため起き上がることも出来ず、ひたすらシムナさんに翻弄されていた。
また、もう一体のノーマルゴーレムは倒れた仲間にも奇襲を仕掛けてきたシムナさんにも目もくれず、ただ移動している。
「戦闘時の外見にも行動にも変化なし、ですか……」
「もしかしたら、『箱庭』の仕掛けた『面白い仕掛け』って、ゴーレム関係じゃないのかもね~」
「でも、メールには確かに『残りのゴーレム達に』と明記してあったぞ?」
『だが、実際何の変化もない訳だからな……』
顎辺りを撫で、思い悩むラルカさんはじっとノーマルゴーレムを見つめる。
────と、ここでリアムさんが口を開いた。
「でも、シムナを発見していながら見向きもしないなんて、おかしいと思わないかい?」
「!!」
確かにそうだ。プレイヤーの存在を探知していながら、襲い掛かってこないなんて……今までなかった。
少なくとも、昨日まではプレイヤーを目視でき次第、無差別に攻撃を仕掛けていた。
じゃあ、『箱庭』の施した『面白い仕掛け』ってプレイヤーを襲わないことだったの……?
────いや、違う。
あのサイコパス連中が、わざわざゲームの質を下げるような真似する訳ないもの。
でも、現にゴーレム達の行動はプレイヤー達を守っている……おそらく、そう見えているだけで目的は別にあるんだろうけど。
何にせよ────シムナさんを襲うより、優先すべきことがあるのは明白。
そこまで考えが及んだ時、私は一定方向に歩を進めるノーマルゴーレムに目を向けた。
その瞬間、一つの仮説が脳裏を過ぎる。
「もしかして、あの巨大ゴーレムは────どこかに向かっている……?」
「「「『!?』」」」
ボソッと呟いた独り言に、待機していたメンバーは大きく目を見開いた。
かと思えば、釣られるようにノーマルゴーレムを目で追う。
私の記憶が正しければ、昨日までゴーレム達は発現場所からほとんど動いてなかった。
それによくよく考えてみると、二体のゴーレムが同じ方向に進んでいるなんて……有り得ない。
本来であれば、協調性皆無の筈だから。
そこから、導き出される結論は一つ……多分、『箱庭』は生き残りのゴーレム達を────一ヶ所に集めるつもりなんだ。
「この仕掛けは、完全に予想外です……」
「だね~。盲点だったよ~」
『むしろ、よく気づいたな?ラミエル』
「僕がゴーレムの奇行を指摘したおかげだね☆」
「調子に乗るな」
「あだっ!?」
レオンさんから拳骨を食らったリアムさんは、被っていた帽子を脱ぎ、頭に出来たたんこぶを撫でる。
『酷いよ、レオンさん』と非難の声を上げる彼の横で、私は直ぐさま青髪の美少年へ視線を向けた。
「シムナさーん!そのノーマルゴーレムはもう倒していいんで、もう一体の方は生かしておいてくださーい!」
仮説を検証するためには、ノーマルゴーレムの行き先を調べなければならない。だから、今殺されるのは困る。
「りょーかーい!今、そっちに戻るねー!」
シムナさんは何の躊躇いもなくノーマルゴーレムの首を刎ねると、真っ直ぐこちらへ戻ってくる。
指示通り、もう一体のゴーレムには一切危害を加えなかった。
とりあえず、有力な仮説を立てることが出来た。あとはその仮説を検証するだけだ。
ゆっくりと遠ざかって行くノーマルゴーレムの背中を見つめ、私はゆるりと口角を上げた。
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