『魔王討伐クエスト』で役に立たないからと勇者パーティーに追い出された回復師は新たな仲間と無双する〜PK集団が英雄になるって、マジですか!?〜

あーもんど

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第三章

第118話『あざといお強請り』

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 虱潰しにゴーレムを探し回るより、『面白い仕掛け』の正体を紐解いた方が全体的にプラスへ繋がるのではないかと思い、顔を上げる。
そして、他のメンバーにその旨を伝えると、徳正さんの腕から降りた。
ゴーレム達の死角となる真後ろを歩きながら、とりあえず危害は加えず様子見することに。

「外見に大して変化はありませんね。探知能力も、今まで通りズボラですし……」

「昨日と変わらない雑魚っぷりだよねー!」

「一応、あの巨大ゴーレムはダンジョンのフロアボス並の強さなんだけどな……」

「僕達もシムナ達みたいに強くならないとね♪」

『リアムもレオンも充分強い。焦らずとも、自然と強くなる』

 心做しかいつもよりキリッとした表情で、ラルカさんはレオンさんとリアムさんを励ます。
────と、ここで徳正さんが欠伸を漏らした。

「いやぁ、それにしても暇だね~」

「それなー!さっさと倒したーい!思いっ切り、体を動かしたーい!」

『まあ、待て。今後のためにも、この観察は必要だ。我慢しろ』

 駄々っ子を宥めるように言い聞かせるラルカさんに対し、シムナさんはプクッと頬を膨らませる。

「やだよー!僕、観察とか好きじゃないしー!小学校の頃やったムカデの観察日記も、一日でやめたもーん!」

『小学校のくだりはよく分からないが、シムナが退屈で死にそうなのは分かった』

「ていうかさー!これ以上、ゴーレムなんか観察して何になるのー!?」

 時間を無駄に消費するだけと言いたいのか、シムナさんは早くも痺れを切らす。
ダムダムと地面を踏みつける彼の横で、レオンさんは呆れたような表情を浮かべた。

「念のため言っておくが、観察を始めてからまだ十分も経過してないからな?」

「そうそう、まだ七分十三秒しか経ってないよ☆」

「こうも退屈だと時間の流れが、遅く感じるね~」

「あー!もう!やだー!僕、観察やだー!」

 遊び盛りの子供のように退屈を嫌うシムナさんは、苛立たしげに両手をブンブン振り回す。

 困ったなぁ……まさか、たった七分でギブアップされるとは思わなかった。三十分は持つと思ったのに……。

「ねぇー!ラミエルー!もう狩っていーい?僕、頑張って我慢したよー?」

 銀の斧片手にこちらへ駆け寄ってくると、シムナさんはうるうるした目で私を見つめた。

 あ、あざとい……これ、ショタコンなら一発で落ちているな。

 『シムナさん、恐ろしい子……』と心の中で呟きながら、私は何とか平静を保つ。
が────存外、私はシムナさんに甘かった。

「わ、分かりました……でも、瞬殺はダメですよ?戦闘時のゴーレムがどんな様子なのか、観察したいので。なるべく、戦いを長引かせてください。いいですね?」

「はーい!」

 両手を上げて大喜びするシムナさんは、ニッコニコの笑顔を向ける。
すっかり上機嫌になった彼の前で、私はそっと額を押さえた。

 私の馬鹿……何でOK出しちゃったの。

 『本来の予定狂いまくりじゃん……』と自分を責め、私は項垂れる。
でも、あんなに喜んでいるシムナさんへ向かって『やっぱり、さっきのはなしで』とは言えなかった。

「あれ~?ラーちゃん、シムナには甘くな~い?俺っちにも、それくらい甘くしてよ~」

『あざと可愛いショタと全身黒ずくめ野郎を同列に扱う奴は、居ない』

「正直、さっきのお強請りには男の俺でも屈していたかもしんねぇ……」

「母性本能を擽る、あざとさだったね☆」

 『さすがだよ』と手放しで褒め称えるリアムさんに、私は何も言えなかった。
半分くらい、図星だったから……。

「と、とりあえず……ゴーレムにちょっかいを出す気なら、さっさとしてください。ここで呑気にお喋りしている暇は、ありませんから」

「はーい!」

「念のためもう一度言っておきますが、瞬殺はダメですからね?きちんと手加減してくださいよ?」

「分かっているってー!任せといてー!」

 ポスッと自身の胸を叩き、自信満々に言い切るシムナさんはアイテムボックスから金の斧も取り出した。
かと思えば、二体のノーマルゴーレムを見据える。

「んじゃ、行ってきまーす!」
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