『魔王討伐クエスト』で役に立たないからと勇者パーティーに追い出された回復師は新たな仲間と無双する〜PK集団が英雄になるって、マジですか!?〜

あーもんど

文字の大きさ
上 下
114 / 315
第三章

第113話『雪合戦はやめましょう』

しおりを挟む
 『重度のシスコンに構っている暇はない』と容赦なく着信拒否にし、チャットを閉じる。
────と、ここで次の目的地である山の頂上に辿り着いた。
のだが、ここで一つ問題が……。

「さ、さむーーーーーい!!」

「そりゃあ、そうだろうね~。ここ頂上だし~。ついでにアイスゴーレムも居るから~」

『寒くない方がおかしい』

「こ、こここここここ、この寒さは実に刺激的だね☆」

「歯、ガタガタ言ってんぞ?とりあえず、予備の防寒具を貸してやるから、さっさと着ろ」

「ありがとう、レオンさん♪恩に着るよ」

 レオンさんから大きめのウィンドブレーカーを受け取り、リアムさんは小刻みに震える手で何とか羽織る。
他のメンバーも自前の防寒具を着用し、寒さを凌いだ。
しっかり靴まで替えて、雪の降り積もった大地を踏み締める。
『ここは吹雪も凄いし、ちゃんと着込んだ方が良さそう』と考える中、ふと体育座りしているアイスゴーレムを目にした。

 ここに到着してから、ずっとあの体勢なんだよね。
さっき出会したサンダーゴーレムと言い、最近のゴーレムは個性豊かだな。

 などと思いつつ、私はブルリと身を震わせる。
これでも結構暖かくしている方なんだが、山頂というシチュエーションだからかまだ寒い。

 これは長居出来ないな。
低体温症になる前に……いや、凍死する前にアイスゴーレムを倒さなきゃ。

 私はアイスゴーレムからパッと視線を逸らし、呑気に雪玉を作り出したチームメンバーへ目を向けた。
防寒具のおかげで多少体温が上がったとはいえ、まだ寒いだろうに……遊ぶ気満々である。

 この人達、本当に自由だな……。

「ちょっと、皆さん。ここへは遊びに来た訳ではありませんよ。雪玉作りよりも、大切なことがあるでしょう……?」

「えー?そんなのあったっけー?」

『恐らく、なかったと思うぞ』

「いやぁ、それにしても雪合戦・・・なんて久々だな!子供の頃以来だ!」

「男はいつまで経っても子供のままさ☆さあ、早速始めよう!」

 本来の目的を忘れて雪玉を手に取る男性陣に、私はピキッと頬を引き攣らせる。

 ほう?アイスゴーレムの討伐より……いえ、ゴーレム討伐イベントよりも雪合戦の方が大事なんだ。ふーん?
なら、もういいよ。私一人でやるから。

 『皆は楽しく遊んでいればいい』とブチ切れ、私は一人でアイスゴーレムの元へ近づく。
が、見慣れた黒い背中に行く手を阻まれた。

 徳正さん……?

「シムナ達~!ラーちゃんキレているから、雪合戦は諦めた方が良いよ~。遊びたい気持ちは分かるけど、今はイベントに集中しなきゃ~。それに早く謝らないと、ラーちゃんが一人でアイスゴーレムに突っ込んじゃうよ~?それでもいいの~?」

 この中で最も付き合いの長い徳正さんは私の怒りを敏感に感じ取ったようで、素早く手のひらを返した。
さっきまで、ノリノリで雪玉を作っていたのに。
『現金な人だな』と肩を竦める中、シムナさん達は慌ててこちらを振り返る。

「いや、いい訳ないじゃん!!雪合戦なんて直ぐにやめるから、置いていかないでー!」

『すまない、ラミエル……久々の雪で、テンションが上がってしまったらしい』

「最初はただ、雪玉を作るだけのつもりが……我慢出来なくなっちまった」

「ごめんよ、ラミエル……君との約束を破ってしまった。これは完全に僕の落ち度だ。如何なる罰も受け入れよう」

 迷わず謝罪の言葉を口にする彼らは、慌てて雪玉を投げ捨てる。
シムナさんに関しては雪玉の山を踏みつけて、たいらにしていた。
その姿は証拠隠滅を図る幼い子供のようだ。
これでもかというほど焦る彼らを前に、私は苦笑を漏らす。
自分もちょっと怒りすぎたな、と反省しながら。

「こちらこそ、勝手にイライラしてすみませんでした。とりあえず、ここは危険なのでアイスゴーレムを倒してさっさと下山しましょう。よろしいですか?」

 己の非を詫びた上で本来の目的であるアイスゴーレム討伐を口にすれば、彼らは間髪入れずに頷いた。

「「「『もちろん(だ)!』」」」

 気合い十分といった様子でアイテムボックスから武器を取り出し、彼らはアイスゴーレムに目を向ける。
『行こう行こう!』と張り切る彼らに頷き、私はもう必要なくなった短剣をアイテムボックスに仕舞った。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

処理中です...