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第三章
第110話『私の青い鳥《アラクネ side》』
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「────えいっ!」
目の前に立ちはだかる炎の壁を魔剣で鎮火させ、私は休む暇もなく駆け出す。
疲れている体に鞭を打ちながら。
何とか無事イベント一日目を終えることが出来たけど、他大陸と比べ、討伐スピードが圧倒的に遅れているから休憩する時間なんてなかった。
まだ街のゴーレムも狩り切れていない状況だから。
郊外なんて、とてもとても……。
カンパニュラと呼ばれる街で現在奔走している私は、プレイヤーの治療と避難誘導に勤しむ。
ゴーレムの討伐を請け負うヴィエラさんも、必死に魔法を行使していた。
正直、私もヴィエラさんも限界に近い……ううん、もうとっくに限界なんて超えている。
ヴィエラさんに関しては、度重なる戦闘と魔法の連続使用のせいで既にマジックポーションを二本も空けていた。
このままでは、イベント終了前にヴィエラさんが倒れてしまいそうだ。
空中に浮く相方を遠目に見ながら、私は魔剣で炎の壁を切り裂く。
と同時に、道端で倒れている男性を発見した。
酷い火傷を負っているようで、息も絶え絶えの彼は時々呻き声を上げている。
『は、早く治療しないと!』と焦る私は、慌ててライフポーションを取り出した。
「し、ししししししし、しっかりしてください!」
倒れている男性の身を起こしながら、私は小瓶の蓋を開ける。
そして、彼の口元にポーションをあてがった。
お願いします!飲んでください……!これを飲まないと、貴方は死んでしまうんです……!
ポーションは傷口に掛けても効果を発揮するが、効力は下がる。それもかなり極端に……。
だから、口から体内へ摂取してもらうのが一番効果的だった。
『一応、注射を打つという手もあるけど……』と思案する中、男性は僅かに目を開き、ポーションを飲む。
「ぷはっ……!はぁー、生き返った……姉ちゃん、サンキューな」
「い、いいいいいいい、いえ!!」
ブンブンと首を横に振ると、男性はゆっくりと身を起こした。
すっかり傷口の塞がった体を見下ろし、『助かった~』と零す。
無造作に口元を拭う彼の前で、私も立ち上がった。
「こ、この道を真っ直ぐ進めば安全に街から出られます!そ、そそそそそそそ、それでは私はこれで!!」
「おう!何から何まで、ありがとな!」
グッと親指を立てる男性に、私はペコリと頭を下げ、そそくさとこの場を後にする。
いい人なのは何となく分かるが、やはり異性と話すのは緊張してしまって。
やっぱり、お兄ちゃん以外の男性は苦手……。
バクバクと鳴る心臓を宥めながら、私は街中を駆け回った。
そして、現在位置を確認しようとゲーム内ディスプレイを起動する。
────と、ここで新着メッセージを発見した。
えっと、送り主は……ラミエルさん?
わざわざ個人チャットに送って来ているってことは、イベント関連の話じゃないよね……?
もし、そうなら『虐殺の紅月』のグループチャットに送っているだろうし……。
数時間前に届いたラミエルさんからのメッセージに首を傾げつつ、私はおもむろにトーク画面を開く。
────────────────────
No.7:この忙しい時に、メッセージなんて送ってしまって申し訳ありません。でも、このことは早めにお伝えしておいた方がいいと思いまして
No.7:とりあえず、結論から言いますね。実はアラクネさんの兄だという男性に出会いました。その方のユーザーネームは『田中』さんです。既にお気づきかもしれませんが、『田中研究所』のギルドマスターをしている方です。
No.7:話すのと長くなるので省略しますが、私独自の判断で田中さんはアラクネさんの実兄である可能性が高いと判断し、アラクネさんの無事をお伝えしました。勝手なことをしてしまい、申し訳ありません。
No.7:ですが、もしも本当にアラクネさんにお兄さんが居てその方がFROプレイヤーなのなら、一度田中さんと連絡を取ってみてください。余計なお世話かとは思いますが、どうかお願いします。下記に田中さんのプロフィールに繋がるリンクを添付しておきました。
────────────────────
えっ……?本当に……?本当にお兄ちゃんなの!?
私は目に飛び込んできた情報に困惑しながら、一先ずリンクから田中さんのプロフィール画面へ飛ぶ。
そこで年齢や性別、趣味などを確認し────『お兄ちゃんで間違いない』と確信した。
嗚呼……嗚呼!お兄ちゃんは無事だったんだ……!良かった……!本当に良かった……!!
兄の無事を確かめる術がなく行き詰まっていたところに届いた吉報に、私は目を潤ませた。
だって、もう会えないかもしれないと思っていたから。
「ラミエルさんっ……ありがとうございます!貴方は私の青い鳥です……!」
ホロホロと涙を零しながら、私はギュッと手を握り締める。
私達兄妹の架け橋となった、ラミエルさんに深く感謝しながら。
早速、お兄ちゃんに連絡を取ってみよう!
と思い立ち、私はプロフィール画面からフレンド申請を送る。
その数秒後────申請は無事通り、兄から鬼電を受けた。
目の前に立ちはだかる炎の壁を魔剣で鎮火させ、私は休む暇もなく駆け出す。
疲れている体に鞭を打ちながら。
何とか無事イベント一日目を終えることが出来たけど、他大陸と比べ、討伐スピードが圧倒的に遅れているから休憩する時間なんてなかった。
まだ街のゴーレムも狩り切れていない状況だから。
郊外なんて、とてもとても……。
カンパニュラと呼ばれる街で現在奔走している私は、プレイヤーの治療と避難誘導に勤しむ。
ゴーレムの討伐を請け負うヴィエラさんも、必死に魔法を行使していた。
正直、私もヴィエラさんも限界に近い……ううん、もうとっくに限界なんて超えている。
ヴィエラさんに関しては、度重なる戦闘と魔法の連続使用のせいで既にマジックポーションを二本も空けていた。
このままでは、イベント終了前にヴィエラさんが倒れてしまいそうだ。
空中に浮く相方を遠目に見ながら、私は魔剣で炎の壁を切り裂く。
と同時に、道端で倒れている男性を発見した。
酷い火傷を負っているようで、息も絶え絶えの彼は時々呻き声を上げている。
『は、早く治療しないと!』と焦る私は、慌ててライフポーションを取り出した。
「し、ししししししし、しっかりしてください!」
倒れている男性の身を起こしながら、私は小瓶の蓋を開ける。
そして、彼の口元にポーションをあてがった。
お願いします!飲んでください……!これを飲まないと、貴方は死んでしまうんです……!
ポーションは傷口に掛けても効果を発揮するが、効力は下がる。それもかなり極端に……。
だから、口から体内へ摂取してもらうのが一番効果的だった。
『一応、注射を打つという手もあるけど……』と思案する中、男性は僅かに目を開き、ポーションを飲む。
「ぷはっ……!はぁー、生き返った……姉ちゃん、サンキューな」
「い、いいいいいいい、いえ!!」
ブンブンと首を横に振ると、男性はゆっくりと身を起こした。
すっかり傷口の塞がった体を見下ろし、『助かった~』と零す。
無造作に口元を拭う彼の前で、私も立ち上がった。
「こ、この道を真っ直ぐ進めば安全に街から出られます!そ、そそそそそそそ、それでは私はこれで!!」
「おう!何から何まで、ありがとな!」
グッと親指を立てる男性に、私はペコリと頭を下げ、そそくさとこの場を後にする。
いい人なのは何となく分かるが、やはり異性と話すのは緊張してしまって。
やっぱり、お兄ちゃん以外の男性は苦手……。
バクバクと鳴る心臓を宥めながら、私は街中を駆け回った。
そして、現在位置を確認しようとゲーム内ディスプレイを起動する。
────と、ここで新着メッセージを発見した。
えっと、送り主は……ラミエルさん?
わざわざ個人チャットに送って来ているってことは、イベント関連の話じゃないよね……?
もし、そうなら『虐殺の紅月』のグループチャットに送っているだろうし……。
数時間前に届いたラミエルさんからのメッセージに首を傾げつつ、私はおもむろにトーク画面を開く。
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No.7:この忙しい時に、メッセージなんて送ってしまって申し訳ありません。でも、このことは早めにお伝えしておいた方がいいと思いまして
No.7:とりあえず、結論から言いますね。実はアラクネさんの兄だという男性に出会いました。その方のユーザーネームは『田中』さんです。既にお気づきかもしれませんが、『田中研究所』のギルドマスターをしている方です。
No.7:話すのと長くなるので省略しますが、私独自の判断で田中さんはアラクネさんの実兄である可能性が高いと判断し、アラクネさんの無事をお伝えしました。勝手なことをしてしまい、申し訳ありません。
No.7:ですが、もしも本当にアラクネさんにお兄さんが居てその方がFROプレイヤーなのなら、一度田中さんと連絡を取ってみてください。余計なお世話かとは思いますが、どうかお願いします。下記に田中さんのプロフィールに繋がるリンクを添付しておきました。
────────────────────
えっ……?本当に……?本当にお兄ちゃんなの!?
私は目に飛び込んできた情報に困惑しながら、一先ずリンクから田中さんのプロフィール画面へ飛ぶ。
そこで年齢や性別、趣味などを確認し────『お兄ちゃんで間違いない』と確信した。
嗚呼……嗚呼!お兄ちゃんは無事だったんだ……!良かった……!本当に良かった……!!
兄の無事を確かめる術がなく行き詰まっていたところに届いた吉報に、私は目を潤ませた。
だって、もう会えないかもしれないと思っていたから。
「ラミエルさんっ……ありがとうございます!貴方は私の青い鳥です……!」
ホロホロと涙を零しながら、私はギュッと手を握り締める。
私達兄妹の架け橋となった、ラミエルさんに深く感謝しながら。
早速、お兄ちゃんに連絡を取ってみよう!
と思い立ち、私はプロフィール画面からフレンド申請を送る。
その数秒後────申請は無事通り、兄から鬼電を受けた。
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