『魔王討伐クエスト』で役に立たないからと勇者パーティーに追い出された回復師は新たな仲間と無双する〜PK集団が英雄になるって、マジですか!?〜

あーもんど

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第三章

第109話『深まる謎と消えない疑問』

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 焦りと不安に押されるまま私は草むらから身を乗り出し、月の泉周辺を見回す。
────が、何故かサンダーゴーレムの姿はもうなかった。
代わりに大量の光の粒子が、辺りをさまよっている。
『まさか、あの状況で倒したの!?』と驚く中、私は水に浮いたレモンイエローの着ぐるみを発見した。

 と、とりあえず息はあるみたいだね……良かった。

 ホッと息を吐き出す私は、肩から力を抜く。
と同時に、首を傾げた。

 それにしても、ラルカさんはどうやってあの雷をやり過ごしたんだろう?
まさか、サンダーゴーレムの手元が狂ったとか?って、それはさすがにないか。相手はAIなんだから。

「じゃあ、一体何で……?」

 『結果良ければ、全て良し』で片付けるにはあまりにも多すぎる謎に、眉を顰める。
────と、ここでバシャバシャと水飛沫を上げる音が聞こえた。
何の気なしに顔を上げると、犬掻きで泉を泳ぐラルカさんが目に入る。
『あの人、本当にマイペースだな』と苦笑する中、徳正さんがこちらへ歩み寄ってきた。

「ねぇ、ラーちゃん。あの雷がラルカに落ちるところ、見てた~?って、その様子だと見てないみたいだね~」

 私の顔を覗き込んでヘラリと笑い、徳正さんは隣に腰を下ろす。

「徳正さんはあの雷が落ちる瞬間を見ていたんですか?」

「もちろ~ん。気になる~?」

「はい。差し支えなければ、教えて頂きたいです」

 私は音や光にビックリして目を瞑ってしまったため、決定的な瞬間を見逃してしまったのだ。
だから、正直凄く気になる。
そんな私の心情を知ってか知らずか、徳正さんはちょっと嬉しそう……というか、楽しそう。
『頼られちゃった~』とはしゃぐ彼を前に、リアムさんが口を挟んだ。

「徳正、勿体ぶらずに教えておくれ。僕もあのときは目を瞑ってしまって、何が起きたのか把握していないんだ」

「いいよ~ん。教えてあげる~。あんまり焦らすと、ラーちゃんに怒られそうだし~」

「よくお分かりで」

「お、おっと~?もう既に怒ってる感じ~?」

 僅かな焦りを見せる徳正さんは『い、今話すから!』と言い、姿勢を正す。
と同時に、軽く咳払いした。

「えーっとね……俺っちから見た感じ、ラルカの上に落ちた雷は────直撃する寸前で、何かに弾かれたんだよね~。油が水を弾くのと似たような要領で~」

「じゃあ、ラルカさんに雷は当たっていないんですね?」

「そういうこと~。そのまま、普通にサンダーゴーレムの首を切り落としていたよ~」

「なるほど。じゃあ、概ね作戦通りだった訳だね」

「いきなり雷を弾かれたのは謎ですが、それに動揺することなくサンダーゴーレムの首を切り落としたラルカさんは凄いですね……」

 ラルカさんの適応力に感心しつつ、私はふと顔を上げる。
黒雲のあった方向を見つめ、僅かに表情を険しくした。
『一体、何故雷は弾かれたんだろう?』と疑問に思いながら。

「ウチのチームメンバーの中に結界魔法を使える人は……居ない、ですよね」

「そうだね~。ラルカとラーちゃん以外はみんな戦闘系職業だし~」

「もしも、雷を弾いた謎の力が結界によるものだとしたら、僕ら以外の第三者が展開したものになるね☆」

「ですよね……」

 私はリアムさんの出した結論に頷きながら、パッと辺りを見渡す。
が、やはり、誰も居ない。気配探知にも反応はなかった。
『徳正さんからも、そういった報告はないし……』と肩を落とし、暫し悩む。

 私達を手助けしてくれる謎のプレイヤー、か……。
昨日、火の海から私達を助けてくれた結界と何か関係があるんだろうか……?
もしかして、同一人物?もし、そうなら色々と辻褄が合う。
あの高熱の炎を完全に遮断出来るプレイヤーなら、気配遮断を使えてもおかしくはないから。
おまけに職業が結界師なら、その効力は強くなる。
徳正さんの気配探知に引っ掛からないのも、納得がいった。

 でも、ここで新たな疑問が浮上する。
それは────移動手段と目的。
だって、私達は高速移動していてゴーレムを狩りまくっているんだよ?
普通はついて来れないし、ついて来ようとも思わない筈。

 謎の多すぎる結界師を思い浮かべ、私は少し悶々とする。
そんな私を他所に、ラルカさんは泉から上がり、ブルブルと体を震わせた。
まるで犬や猫のように水を払う彼に、シムナさんはすかさずタオルを投げつける。
『ちょっと!こっちまで濡れちゃったじゃん!』と叫びながら。

 まあ、何はともあれ……ラルカさんは無事だった訳だし、一先ず放置しよう。
その結界師がこちらに危害を加えて来ない限りは。

 理由も目的も相変わらず不明瞭だが、助けてもらった手前正体を無理やり炙り出すような真似は出来なかった。
『相手の出方を伺おう』という結論に達し、私はおもむろに立ち上がる。
そして、今回の功労者であるラルカさんに労いの言葉を掛けに行った。
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