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第三章
第107話『月の泉』
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「さあ、皆さん準備はいいですが?出発しますよ!」
その言葉を合図に、私達は再び風となり────次の目的地を訪れていた。
森の中に身を潜めながら泉の様子を窺い、水浴び中のサンダーゴーレムに遭遇する。
どうやら、今回はアタリを引いたようだ。
上空でゴロゴロと嫌な音を鳴らす黒雲と、静電気のような音を発する泉を交互に見やり、私は苦笑する。
正直色々ツッコミを入れたいところだが……グッと堪えた。
だって、ここ月の泉には────マジックポーションの生産に必要な月華《げっか》と呼ばれる花が咲いているから。
変にゴーレムを刺激して、泉をめちゃくちゃにされたら大変困る。
最悪の場合、マジックポーションの生産がストップするため。
ポーション系はこれから先、色んな場面で重宝される。ゲーム攻略を目指すなら、尚更……。
だから、泉の底にある月華だけは守り切らないといけない。
普通のイベントなら、ここまで神経をすり減らす必要はないんだけどね。
大抵、イベント終了後に破壊された建物や植物を直してもらえるから。
でも、今回のイベント主催者は運営じゃなくて『箱庭』。
『今まで通り直してもらえる筈』と考えるのは、危険だった。
復旧作業がないと仮定して動くべきだと判断し、私は頭を悩ませる。
どうやって、サンダーゴーレムを討伐しようか?と。
一番手っ取り早いのは、徳正さんに瞬殺してもらうことだけど……雷の速さによっては、難しいかもしれない。
それに足元の泉は静電気でバチバチしているし……少しでも触れたら、感電死しそうだ。
まあ、徳正さんの防御力なら大丈夫そうな気もするけど……確信を持てない状況で動くのは危険。
失敗して失うのは、命なんだから。
『博打に出るべきじゃない』と思案しつつ、私は大鎌を構える物騒な着ぐるみに視線を向けた。
「あの、ラルカさん。つかぬ事をお聞きしますが、熱耐性に加え、防水と感電防止機能もあるコスチュームってありますか……?」
『熱耐性、防水、感電防止……』
ラルカさんはメモ代わりにホワイトボードへ三つの要素を書き込み、熟考する。
ラルカさんが熱耐性と感電防止機能を持つ黄色いクマの着ぐるみを持っているのは知っているけど、万が一のことを考えて防水機能もほしい……。
あの静電気バチバチの泉に落ちる可能性もあるから。
ただ濡れるだけならいいけど、感電防止機能を潜り抜けて静電気にやられる危険性は捨て切れなかった。
『水に含まれた電気は対象外かもしれないし……』と思案する中、ラルカさんは顔を上げる。
『その三つの要素を兼ね備えたコスチュームが見つかったぞ。大分前に作ったものだから、まだアイテムボックスの中に残っているかどうか不安だったが、まだ残っていたらしい。それで、僕はこれからどうすればいい?』
分かり切った答えを求めてくるラルカさんに、私はスッと目を細める。
「そのコスチュームを着て、サンダーゴーレムを討伐してきてください。今回の戦闘はラルカさんに一任します」
『承知した』
“斬殺の死神”と呼ばれるクマの着ぐるみは恭しく頭を垂れ、サンダーゴーレム討伐を引き受けた。
その言葉を合図に、私達は再び風となり────次の目的地を訪れていた。
森の中に身を潜めながら泉の様子を窺い、水浴び中のサンダーゴーレムに遭遇する。
どうやら、今回はアタリを引いたようだ。
上空でゴロゴロと嫌な音を鳴らす黒雲と、静電気のような音を発する泉を交互に見やり、私は苦笑する。
正直色々ツッコミを入れたいところだが……グッと堪えた。
だって、ここ月の泉には────マジックポーションの生産に必要な月華《げっか》と呼ばれる花が咲いているから。
変にゴーレムを刺激して、泉をめちゃくちゃにされたら大変困る。
最悪の場合、マジックポーションの生産がストップするため。
ポーション系はこれから先、色んな場面で重宝される。ゲーム攻略を目指すなら、尚更……。
だから、泉の底にある月華だけは守り切らないといけない。
普通のイベントなら、ここまで神経をすり減らす必要はないんだけどね。
大抵、イベント終了後に破壊された建物や植物を直してもらえるから。
でも、今回のイベント主催者は運営じゃなくて『箱庭』。
『今まで通り直してもらえる筈』と考えるのは、危険だった。
復旧作業がないと仮定して動くべきだと判断し、私は頭を悩ませる。
どうやって、サンダーゴーレムを討伐しようか?と。
一番手っ取り早いのは、徳正さんに瞬殺してもらうことだけど……雷の速さによっては、難しいかもしれない。
それに足元の泉は静電気でバチバチしているし……少しでも触れたら、感電死しそうだ。
まあ、徳正さんの防御力なら大丈夫そうな気もするけど……確信を持てない状況で動くのは危険。
失敗して失うのは、命なんだから。
『博打に出るべきじゃない』と思案しつつ、私は大鎌を構える物騒な着ぐるみに視線を向けた。
「あの、ラルカさん。つかぬ事をお聞きしますが、熱耐性に加え、防水と感電防止機能もあるコスチュームってありますか……?」
『熱耐性、防水、感電防止……』
ラルカさんはメモ代わりにホワイトボードへ三つの要素を書き込み、熟考する。
ラルカさんが熱耐性と感電防止機能を持つ黄色いクマの着ぐるみを持っているのは知っているけど、万が一のことを考えて防水機能もほしい……。
あの静電気バチバチの泉に落ちる可能性もあるから。
ただ濡れるだけならいいけど、感電防止機能を潜り抜けて静電気にやられる危険性は捨て切れなかった。
『水に含まれた電気は対象外かもしれないし……』と思案する中、ラルカさんは顔を上げる。
『その三つの要素を兼ね備えたコスチュームが見つかったぞ。大分前に作ったものだから、まだアイテムボックスの中に残っているかどうか不安だったが、まだ残っていたらしい。それで、僕はこれからどうすればいい?』
分かり切った答えを求めてくるラルカさんに、私はスッと目を細める。
「そのコスチュームを着て、サンダーゴーレムを討伐してきてください。今回の戦闘はラルカさんに一任します」
『承知した』
“斬殺の死神”と呼ばれるクマの着ぐるみは恭しく頭を垂れ、サンダーゴーレム討伐を引き受けた。
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