『魔王討伐クエスト』で役に立たないからと勇者パーティーに追い出された回復師は新たな仲間と無双する〜PK集団が英雄になるって、マジですか!?〜

あーもんど

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第三章

第100話『リアムさんの類い稀な才能』

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「それでは、これよりファイアゴーレム二体の討伐に移ります。各々与えられた役割を全うしてください────散開」

 討伐開始の合図を出すと、徳正さんは『ピィ━━━!』とグリュプスの笛を吹いた。
そして、シムナさんやラルカさんと共に顕現したグリフォンの背中へ乗ると、直ぐさま飛び立つ。
私たち後方支援組はそんな彼らの背中を見送り、各々サポートの準備に入っていた。
アイテムボックスから純白の杖を取り出しながら、私はじわじわと距離を詰めてくる火の海から距離を取る。

 とりあえず徳正さんと通話を繋いでおいたから、何かあったら直ぐに教えてくれるだろう。

 ゲーム内ディスプレイに表示された通話マークを見やり、私は一旦マイクをオフにした。
こちらの会話や雑音が入ると、徳正さんの気が散ると思って。

「リアムさん、準備は出来ましたか?」

「ああ。合図さえあれば、いつでも行けるよ」

 黒の革手袋をした白髪アシメの美男子は左手に弓を、右手に弓矢を持った状態でニッコリ微笑む。
待ち切れないといった様子で弓矢をクルクル回す彼に、私は『了解です』と頷いた。

 今回使用する弓矢は熱帯性を付与されたもので、一応私から強化魔法も掛けてある。
なので、焼き切ることはない……と思いたいが、こればっかりはやってみないと分からなかった。

 『まあ、上手くいくことを願いましょう』と自分に言い聞かせ、私は顔を上げた。
すると、ファイアゴーレムの周囲を優雅に飛ぶグリフォンが目に入る。
『あれだけ近づければ、上出来』と頬を緩め、私はマイクをオンにした。

「あ、あ……徳正さん、聞こえてますか?」

「聞こえているよ~ん。このタイミングでマイクをオンにしたってことは、もうそろそろ始める感じ~?」

「はい、その通りです。まずは弓矢での攻撃を始めていいですか?」

「全然いいよ~。始めちゃって~」

 『小手調べがしたい』と申し出る私に、徳正さんは二つ返事でOKした。
私は『ありがとうございます』とだけ言って、マイクをオフにする。

「リアムさん、準備が出来次第攻撃を始めてください。どちらを最初に狙うかは、リアムさんにお任せします」

「おお!!ついに僕の出番だね!任せておくれ。必ず君の望む結果を出すと約束しよう!」

 自信満々に断言したリアムさんは、優雅な所作で弓を構えた。
と同時に、真剣な表情へ変わる。
力いっぱい弓を引き、狙いを定めると────一思いに弓矢を放した。
ヒュンッと風を切るような音と共に飛んでいく弓矢は、一切スピードを殺すことなくファイアゴーレムへ近づいていく。
『おお!これは!』と感嘆する私を他所に、弓矢は突然────真横・・に曲がった。
普通では考えられない動きに、私はもちろん……同じギルドメンバーのレオンさんまで驚いている。大きく口を開けながら。

 『弓矢の遠隔操作リモートコントロールだって、出来る』とは言っていたけど、まさかここまでとは……。
本職である弓使いアーチャーですら、自分の手から離れた弓矢をここまで正確に操ることは出来ないのに。
完全に使いこなしているな。

 本来なら軌道を整える程度のことしか出来ない能力を前に、私は小さく息を吐いた。
リアムさんの類い稀な才能を垣間見た気がして。
『どんな能力も極めれば、立派な刃になるって訳か』と感心する中、弓矢はファイアゴーレムの目の前に躍り出る。
そして、燃えないよう一定の距離を保ちながらクルクルと回った。
まるで、ファイアゴーレムを挑発するかのように。

 なるほど……なかなかやるな、リアムさん。
今回の目的はあくまでファイアゴーレムの注意を引きつけることだから、攻撃する必要はない。

 『これなら、弓矢も節約出来るし』と考え、私は頬を緩めた。
────と、ここでファイアゴーレムは弓矢へゆっくり手を伸ばす。
その様子は蝶々を捕まえようとする子供に似ていた。

 よし!上手く気を引けた!あとはこのまま、上手く誘導出来れば……!!

 密かにガッツポーズする私は、ファイアゴーレムの手をすり抜けた弓矢に称賛を送る。
『ナイス!その調子!』と内心盛り上がっていると、

「────おい、お前ら!仕事に集中するのはいいが、火の海をもっと警戒しろ!」

 と言って、レオンさんが私達を小脇に担いだ。
と同時に、駆け出す。

 あっ、よく見たら火の海がすぐそこに……危なかった。

 『レオンさんが居なかったら焼死していたかも……』と本気で危機感を抱き、私は反省した。
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