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第三章
第90話『不思議な人』
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田中さんに連れられるまま建物の中へ入った私とシムナさんは、書斎と思しき部屋に通されていた。
適度に散らかった部屋を見回し、『凄い本の山……』と苦笑する。
────と、ここで田中さんがせっせと本を移動させた。
どうやら、本に埋もれたソファを座れるようにしているらしい。
「ねぇー!田中ー!」
「なんだ?チビ助。俺は今、お前達の座るソファを確保するのに忙しいんだが」
「この部屋、本でいっぱいだねー!読書好きなのー?」
「別に好きではねぇーよ。嫌いでもないけどな。ただ研究に必要な知識を得るために、読んでいるだけだ。そう言うお前はどうなんだよ?」
「僕ー?僕はきらーい!だって、つまんないもーん!」
『うげぇ……』と顔を顰めるシムナさんに、田中さんはケラケラと笑う。
『それはまだお子ちゃまの証拠だ』と言いながら、手際よく本の山を動かした。
「ふぅ……とりあえず、こんなもんでいいか。どうせ、チビが二人座るだけだし。これだけスペースを空けとけば、充分だろ」
「ねぇー!チビチビ言わないでよー!僕、小さくないもーん!」
「今更、ソレを言うか?さっきまで『チビ助』っつっても、何も言わなかったくせによ」
「さっきは忘れていたのー!ていうか、僕の名前は『チビ助』じゃないからー!僕はシムナ!」
「へいへい。分かったから、とりあえずソファに座れ。そこの嬢ちゃんもな」
「あっ、はい!ありがとうございます」
「むぅー!」
抗議の声をさらりと流されたシムナさんはムッとするものの、黙って用意されたソファに腰掛ける。
彼が仲間以外の指示に従うのは、とても珍しいことだった。
『いい変化だな』と頬を緩め、私はシムナさんの隣に腰を下ろす。
と同時に、田中さんも自分のデスクに着席した。
「遅くなって、悪いな。話を聞かせてくれ」
早速本題を切り出した田中さんに、私は少し驚く。
だって、彼からはこちらを試すような素振りも警戒するような雰囲気も感じ取れなかったから。
本当にただ話を聞きたいだけ、という様子。
アポなしで……しかも、初対面なのに凄い好意的だな。
『女、子供だからか?』と頭を捻りつつ、私は顔を上げた。
「実は今、チームを組んでいるプレイヤーが行方不明でして……彼のことを探しているんです。そのプレイヤーの名は、リアム。『紅蓮の夜叉』の幹部候補生です。白髪アシメの男性で、黒に近い灰色の瞳をしています」
「『紅蓮の夜叉』の幹部候補生……?そんな奴がお前ら一般プレイヤーとチームアップを、ねぇ……」
「ねぇー!バカにしているー?これでも、僕そいつより強いんだけどー!腹パン一発で沈められる自信あるもーん!」
訝しむような視線を向けてくる田中さんに、シムナさんがすかさず反論する。
その表情は不満そのもので、リアムさんより下に見られたことが気に食わないようだった。
成り行き……というか、言うタイミングがなくて、私達の所属パーティーを明かしてなかったもんね。
それなら、一般プレイヤーと間違えられても仕方ない……けど、これはある意味好都合とも言える。
何度も言うように、私達『虐殺の紅月』は嫌われ者のPK集団だから。
身元を明かせば、警戒されるかもしれない。
だって、PK集団と今話題のギルドメンバーがチームを組んでいるだなんて……誰も思わないだろうからね。
でも、後々私達の正体がバレたら恨みを買うかもしれないし……。
『少なくとも好意は抱かない筈』と悩み、私は前を向いた。
ブーブー文句を垂れるシムナさんを視線で黙らせ、ブルーサファイアの瞳を見つめ返す。
「そういえば、きちんとした自己紹介がまだでしたね。私は────『虐殺の紅月』に所属する、ラミエルです。以後お見知りおきを」
適度に散らかった部屋を見回し、『凄い本の山……』と苦笑する。
────と、ここで田中さんがせっせと本を移動させた。
どうやら、本に埋もれたソファを座れるようにしているらしい。
「ねぇー!田中ー!」
「なんだ?チビ助。俺は今、お前達の座るソファを確保するのに忙しいんだが」
「この部屋、本でいっぱいだねー!読書好きなのー?」
「別に好きではねぇーよ。嫌いでもないけどな。ただ研究に必要な知識を得るために、読んでいるだけだ。そう言うお前はどうなんだよ?」
「僕ー?僕はきらーい!だって、つまんないもーん!」
『うげぇ……』と顔を顰めるシムナさんに、田中さんはケラケラと笑う。
『それはまだお子ちゃまの証拠だ』と言いながら、手際よく本の山を動かした。
「ふぅ……とりあえず、こんなもんでいいか。どうせ、チビが二人座るだけだし。これだけスペースを空けとけば、充分だろ」
「ねぇー!チビチビ言わないでよー!僕、小さくないもーん!」
「今更、ソレを言うか?さっきまで『チビ助』っつっても、何も言わなかったくせによ」
「さっきは忘れていたのー!ていうか、僕の名前は『チビ助』じゃないからー!僕はシムナ!」
「へいへい。分かったから、とりあえずソファに座れ。そこの嬢ちゃんもな」
「あっ、はい!ありがとうございます」
「むぅー!」
抗議の声をさらりと流されたシムナさんはムッとするものの、黙って用意されたソファに腰掛ける。
彼が仲間以外の指示に従うのは、とても珍しいことだった。
『いい変化だな』と頬を緩め、私はシムナさんの隣に腰を下ろす。
と同時に、田中さんも自分のデスクに着席した。
「遅くなって、悪いな。話を聞かせてくれ」
早速本題を切り出した田中さんに、私は少し驚く。
だって、彼からはこちらを試すような素振りも警戒するような雰囲気も感じ取れなかったから。
本当にただ話を聞きたいだけ、という様子。
アポなしで……しかも、初対面なのに凄い好意的だな。
『女、子供だからか?』と頭を捻りつつ、私は顔を上げた。
「実は今、チームを組んでいるプレイヤーが行方不明でして……彼のことを探しているんです。そのプレイヤーの名は、リアム。『紅蓮の夜叉』の幹部候補生です。白髪アシメの男性で、黒に近い灰色の瞳をしています」
「『紅蓮の夜叉』の幹部候補生……?そんな奴がお前ら一般プレイヤーとチームアップを、ねぇ……」
「ねぇー!バカにしているー?これでも、僕そいつより強いんだけどー!腹パン一発で沈められる自信あるもーん!」
訝しむような視線を向けてくる田中さんに、シムナさんがすかさず反論する。
その表情は不満そのもので、リアムさんより下に見られたことが気に食わないようだった。
成り行き……というか、言うタイミングがなくて、私達の所属パーティーを明かしてなかったもんね。
それなら、一般プレイヤーと間違えられても仕方ない……けど、これはある意味好都合とも言える。
何度も言うように、私達『虐殺の紅月』は嫌われ者のPK集団だから。
身元を明かせば、警戒されるかもしれない。
だって、PK集団と今話題のギルドメンバーがチームを組んでいるだなんて……誰も思わないだろうからね。
でも、後々私達の正体がバレたら恨みを買うかもしれないし……。
『少なくとも好意は抱かない筈』と悩み、私は前を向いた。
ブーブー文句を垂れるシムナさんを視線で黙らせ、ブルーサファイアの瞳を見つめ返す。
「そういえば、きちんとした自己紹介がまだでしたね。私は────『虐殺の紅月』に所属する、ラミエルです。以後お見知りおきを」
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