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第三章

第88話『巨大ロボットを開発したのは?』

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 それから、アスタルテさんに見送られる形で『プタハのアトリエ』のギルド本部を後にした私は休む間もなく、次の目的地に向かって走っていた。
────シムナさんにおんぶされながら。
どうやら、先程アスタルテさんに指摘された私の体調を気に掛けているらしい。

 てっきり聞き流しているのかと思ったけど、ちゃんと聞いていたんだね。なんだか、意外。

 シムナさんの成長を感じ取りながら、私はしっかりと彼の体にしがみつく。
結構ハイスピードで移動しているため、落ちたら大変だと思って。

 それにしても────あの巨大ロボット開発に、『プタハのアトリエ』が関わっていたなんて驚きだ。
絶対、ロボットなんか興味ないと思ったのに。

 などと考えつつ、私はアスタルテさんの言葉を思い返した。

『あの巨大ロボットですか~?あれはウチと『田中研究所』が合同開発したものなのですよ~。と言っても、まだ未完成なのですが~』

 あれで未完成なのか……ゴーレムとタイマン張れるほどなのに。
まあ、『田中研究所』が携わっているならある意味納得だけど。
だって、そのギルドは────研究都市……いや、アイテム開発を嗜む生産系ギルド界隈の中で、トップと言われる存在だから。
常に新しいアイテムを開発・生産し、研究都市の市場を賑わせている。
そのどれもが高品質で他にないアイテムのため、高い人気を誇っていた。

 確か、『田中研究所』のギルドマスターである田中さんは職業別ランキング一位の錬金術師で、サポート系のアイテムより、剣や刀といった武器の開発に力を入れてるんだよね。
本来であれば、鍛冶師にしか出来ない作業もこなしているらしい。
システムの制限を掻い潜りながら。

 『ちょっと、アラクネさんに似ているよね』と考える中、シムナさんが急ブレーキを掛ける。
どうやら、目的地に着いたらしい。
『思ったより早かったな』と思いつつ、私は顔を上げた。
すると、そこには鉄の塊と比喩すべき頑丈そうな建物が。

 ここが『田中研究所』のギルド本部か。
『プタハのアトリエ』と違い、ゴーレムによる被害を受けているみたいだけど……大丈夫そうね。

 あちこちで建物の修理を行うプレイヤー達の姿に、私は『逞しいな、本当……』と苦笑いした。
────と、ここでシムナさんが身を屈める。

「ラミエル、着いたよ。もしかして、寝ちゃった?」

「お、起きてます!直ぐ降りますね!運んでくれて、ありがとうございました!」

「ん。これくらい、いつでもやるから疲れたら言ってねー」

「はい、ありがとうございます!」

 私は小さく頭を下げると、半ば飛び下りるようにして地上へ降り立つ。

 とりあえず外で修理を行っているプレイヤー達に声を掛けて、話を聞いてみよう。

 『いきなり中に突撃する訳にはいかないし』と考え、シムナさんの手をそっと引いた。
そして、ゆっくり……慎重に『田中研究所』のギルドメンバーへ歩み寄る。

「突然、すみません。私はラミエルと言います。こちらに白髪アシメの男性は訪ねて来ませんでしたか?」
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