『魔王討伐クエスト』で役に立たないからと勇者パーティーに追い出された回復師は新たな仲間と無双する〜PK集団が英雄になるって、マジですか!?〜

あーもんど

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第三章

第86話『予想外の切り返し』

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「それで、ラミエルさんはデーリア達を助けたお礼として何を望むです~?」

 これは確実に私を……いや、私達『虐殺の紅月』を試しているな。
デーリアさんの報告通りの集団なのか、見極めるために。

 『もし不合格ならさっさと恩を返して、関係を終わらせるつもりだ』と考え、内心頬を引き攣らせる。
思ったより責任重大な役割だな、と思って。

 でも、上手く行けば『プタハのアトリエ』の信頼を得られて、私達の立場も良くなる。
だから、アスタルテさんの満足する切り返しをしたいんだけど……いい案が思いつかない。
多分、直球で返すのは違うよね……それじゃあ、単純過ぎて話にならない。
だからと言って、巧妙な話術と交渉術を用いて話を進めれば、悪い印象を持たれるかもしれないし……。
はぁ……仕方ない。見方によっては愚策かもしれないが、ここは少し違う角度から攻めてみよう。

「────ふふふっ。なんだと思います?是非当ててみてください。クイズ感覚で構いませんから」

「!」

 質問を質問で返す────この手法は基本目上の相手に通じない。
だからこそ、使用したのだ。
『私達は対等だ』と示すために。

 アスタルテさんは恐らく、デーリアさん達を助けた私達を表面上は・・・・上の者として扱ってくれている。
でも、内心は見下しているだろう。
生産系ギルド界隈で幅を利かせる『プタハのアトリエ』と嫌われ者のPK集団である『虐殺の紅月』じゃ、釣り合わないから。
だが、私はソレを敢えてぶち壊した。
ここで腹を立てるなら、その程度の人間ということ。
そんな人がトップである『プタハのアトリエ』とのお付き合いなんて、こっちから願い下げである。

 ねぇ、アスタルテさん────試されているのは、私だけじゃありませんよ?
高みの見物なんて、させませんからね。

 とてつもなく性格の悪い手法に乗り出た私に、アスタルテさんは僅かに目を見開いた。
かと思えば────口元に手を当てて、笑い出す。

「あはははははっ!いや、まさか……ふふっ!そう来るのは思わなかったのです……くふふっ!ラミエルさんは面白い方なのですね。ぷははははっ!」

「……え?ぁ、はあ……それはどうも……?」

 目に涙を浮かべながら大爆笑するアスタルテさんに、私は思わず面食らう。
絶対に怒られるか、ネチネチとした言葉を返されるかの二択だと思っていたから。

 何となく分かってはいたけど、アスタルテさんってかなり変わった人だな。

 ある意味拍子抜けする反応を受けて、私は肩の力を抜く。
ついでに緊張も解けた。

「ふふふふっ……!いやぁ、いきなり笑ったりしてすみませんです。ラミエルさんの切り返しが、あまりにも予想外すぎて……ふふっ!つい、大笑いしちゃったです」

「……まあ、とにかく笑って頂けて良かったです」

「はいなのです♪」

 大爆笑の余韻を残しつつも通常運転に戻ったアスタルテさんは、実に上機嫌だった。
ニコニコと笑いながら、愉快げに揺れるペリドットの瞳でこちらを見据える。

 あれ?さっきまでの値踏みするような目じゃない……高みの見物を楽しむソレとも違った。
なんだろう?この感じ……。
とりあえず、悪い感じではなさそうだけど。

 躊躇いがちにペリドットの瞳を見つめ返すと、彼女はゆるりと口角を上げた。
かと思えば、短い足をおもむろに組む。

「デーリアが貴方を気に入った理由わけが、よく分かったです。確かに貴方は凄く面白いのです。だから────我々『プタハのアトリエ』は人探しに全面協力するですよ♪『虐殺の紅月』さんとは、今後とも良きお付き合いをしたいですし♪」
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