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第三章
第85話『幼い幼女の正体は?』
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そのまま案内に従って、歩を進めた私とシムナさんは一階の客室に通された。
ソファに腰掛ける私達の向かい側には、幼い少女が……。
パステルカラーの可愛らしいワンピースに、ベレー帽を被った彼女はペリドットの瞳をこちらに向ける。
また、肩まであるバターブロンドの髪をハーフアップにしており、広がりやすい髪質を上手にカバーしていた。
人懐っこい笑みを浮かべながら、私達に紅茶やお菓子を進める謎の少女……いや、幼女は実にあどけない顔立ちをしている。
多分、インターホン越しに対応してくれた子なんだろうけど……本当にキャラ作り、徹底しているな。
『一瞬、本物の幼女かと思ったよ』と肩を竦める中、彼女は僅かに身を乗り出す。
「ご足労頂き、ありがとうなのです!改めまして、私は『プタハのアトリエ』のギルドマスターであるアスタルテなのです!以後お見知りおきを、なのです~!」
「えっ……えぇ!?『プタハのアトリエ』のギルドマスター!?」
「はいなのです♪よく『そうは見えない』って、言われますです」
「そりゃあ、誰もこんな幼女がギルドマスターだとは思わないよー。喋り方もなんか変だしー」
「ちょっ!シムナさん!!」
私は慌てて隣に座るシムナさんの口を塞いだものの……時すでに遅し。
や、やってしまった……いや、私も人のことあんまり言えないけど。
声に出していないだけで、『嘘でしょ!?』『有り得ない!』といった感情は顔に出てただろうし……。
でも、よくよく考えてみればおかしいところはあったよね。
だって、私達を中に招き入れる際、彼女は上司や仲間に一切断りを入れなかったんだから。
もし、ギルドマスターでもない下っ端がこんなことをしていたら、大問題だ。
イベントの最中なら、尚更。
「私は特に気にしてないので、大丈夫なのですよ~!こういうのは、慣れっこなのです!」
「いや、でも……気分を害したのに、変わりはありませんし……きちんと謝らせてください。本当に申し訳ありませんでした」
「ごめんなさーい」
きちんと頭を下げて謝罪すると、シムナさんもそれに続く。
言い方はとんでもなく軽いが、そこはどうか見逃してほしい。
シムナさん自ら謝っただけでも、大きな進歩だから。
「いえいえ~!謝罪なんて、本当に大丈夫なのですよ~!顔を上げてくださいです~!」
「は、はい」
促されるままゆっくりと顔を上げれば、さっきと何一つ変わらない人懐っこい笑顔が目に入った。
『本当に気にしていないんだな』と驚く中、アスタルテさんはパンパンッと小さな手を叩く。
「ではでは、本題に移りましょ~!」
ほんわかした雰囲気はそのままに場の空気だけ変え、こちらを見据えた。
人畜無害そうでありながらどこか油断ならない雰囲気を醸し出す彼女に、私はスッと目を細める。
ギルドマスターの肩書きは伊達じゃないってことか。幼い見た目に騙されて舐めてかかったら、痛い目に遭うパターンだな。
直感的に『これは敵に回したダメな人だ』と感じ取り、少しばかり警戒心を抱いた。
今回はあくまでデーリアさん達を助けた恩人として扱ってくれるみたいだけど、今後もそうとは限らない。
リアムさん探しを通して、恩を返したら急に態度が変わる可能性だってある……あまり信用はしない方がいいだろう。
お客様気分で話し合いを進めようとしていた自分を諌め、私はにこやかに微笑む。
出来るだけ、失礼のないように……でも、『虐殺の紅月』の名に恥じないよう、対応しなきゃ。
『思ったよりハードルが高いな』と身を強ばらせる中、アスタルテさんは小さな唇に弧を描く。
「それで、ラミエルさんはデーリア達を助けたお礼として何を望むです~?」
ソファに腰掛ける私達の向かい側には、幼い少女が……。
パステルカラーの可愛らしいワンピースに、ベレー帽を被った彼女はペリドットの瞳をこちらに向ける。
また、肩まであるバターブロンドの髪をハーフアップにしており、広がりやすい髪質を上手にカバーしていた。
人懐っこい笑みを浮かべながら、私達に紅茶やお菓子を進める謎の少女……いや、幼女は実にあどけない顔立ちをしている。
多分、インターホン越しに対応してくれた子なんだろうけど……本当にキャラ作り、徹底しているな。
『一瞬、本物の幼女かと思ったよ』と肩を竦める中、彼女は僅かに身を乗り出す。
「ご足労頂き、ありがとうなのです!改めまして、私は『プタハのアトリエ』のギルドマスターであるアスタルテなのです!以後お見知りおきを、なのです~!」
「えっ……えぇ!?『プタハのアトリエ』のギルドマスター!?」
「はいなのです♪よく『そうは見えない』って、言われますです」
「そりゃあ、誰もこんな幼女がギルドマスターだとは思わないよー。喋り方もなんか変だしー」
「ちょっ!シムナさん!!」
私は慌てて隣に座るシムナさんの口を塞いだものの……時すでに遅し。
や、やってしまった……いや、私も人のことあんまり言えないけど。
声に出していないだけで、『嘘でしょ!?』『有り得ない!』といった感情は顔に出てただろうし……。
でも、よくよく考えてみればおかしいところはあったよね。
だって、私達を中に招き入れる際、彼女は上司や仲間に一切断りを入れなかったんだから。
もし、ギルドマスターでもない下っ端がこんなことをしていたら、大問題だ。
イベントの最中なら、尚更。
「私は特に気にしてないので、大丈夫なのですよ~!こういうのは、慣れっこなのです!」
「いや、でも……気分を害したのに、変わりはありませんし……きちんと謝らせてください。本当に申し訳ありませんでした」
「ごめんなさーい」
きちんと頭を下げて謝罪すると、シムナさんもそれに続く。
言い方はとんでもなく軽いが、そこはどうか見逃してほしい。
シムナさん自ら謝っただけでも、大きな進歩だから。
「いえいえ~!謝罪なんて、本当に大丈夫なのですよ~!顔を上げてくださいです~!」
「は、はい」
促されるままゆっくりと顔を上げれば、さっきと何一つ変わらない人懐っこい笑顔が目に入った。
『本当に気にしていないんだな』と驚く中、アスタルテさんはパンパンッと小さな手を叩く。
「ではでは、本題に移りましょ~!」
ほんわかした雰囲気はそのままに場の空気だけ変え、こちらを見据えた。
人畜無害そうでありながらどこか油断ならない雰囲気を醸し出す彼女に、私はスッと目を細める。
ギルドマスターの肩書きは伊達じゃないってことか。幼い見た目に騙されて舐めてかかったら、痛い目に遭うパターンだな。
直感的に『これは敵に回したダメな人だ』と感じ取り、少しばかり警戒心を抱いた。
今回はあくまでデーリアさん達を助けた恩人として扱ってくれるみたいだけど、今後もそうとは限らない。
リアムさん探しを通して、恩を返したら急に態度が変わる可能性だってある……あまり信用はしない方がいいだろう。
お客様気分で話し合いを進めようとしていた自分を諌め、私はにこやかに微笑む。
出来るだけ、失礼のないように……でも、『虐殺の紅月』の名に恥じないよう、対応しなきゃ。
『思ったよりハードルが高いな』と身を強ばらせる中、アスタルテさんは小さな唇に弧を描く。
「それで、ラミエルさんはデーリア達を助けたお礼として何を望むです~?」
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