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第三章

第82話『既視感すら感じる光景』

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 その後、特に大きなトラブルもなく私達は次の目的地に辿り着いた。
それぞれ移動中に乱れた髪や服を整えながら、目の前に広がる光景に苦笑を漏らす。

「うわぁ……」

「これはまた、なんというか……ある意味、絶景だね~」

「もはや、これゲームのジャンル違くなーい?」

『才能の無駄遣いというやつだな』

「傍から見ればカオスそのものだが、本人達は至って真剣なんだろうな……」

「ユーモア溢れる作品だね!僕はいいと思うよ!」

 私達はそれぞれ感想を述べ、目の前に居る巨大ゴーレムと────巨大ロボット・・・・・・を見つめる。

 はぁ……さっきのクマのぬいぐるみ集団と言い、無機物とゴーレムAIを戦わせるのが流行っているの?

 巨大ゴーレムにプロレス技を繰り出す巨大ロボットに、私は苦笑を漏らした。
『本当に自由だな、このゲーム』と思いながら。

 この巨大ロボットを作ったのは、一体誰なんだろう?まさか、一人で作った訳じゃないよね?
巨大ロボットの数から考えるに、中規模以上の生産系ギルドが関わってそうだけど。

 目視出来るだけでも十体以上は居る巨大ロボットに、私は思いを馳せる。

 それにしても、あのロボット凄いなぁ……マジックゴーレムの影響で燃えた建物や凍った大地を適切に処置している。
さすがは研究都市メロンパークと言ったところかな?

 生産系ギルドで溢れた街を眺め、私は感嘆の息を漏らす。

 研究都市で店を構える生産系ギルドの大半は、変人の集まりで研究愛が凄まじいと聞く。
おまけに縄張り意識が強いため、今回のゴーレム討伐イベントで何かしら騒動を引き起こすと思っていたが……まさか、こう来るとは。
せいぜい、重機関銃か戦車くらいだろうと思っていた過去の自分を殴りたい……。

 『研究所だけは守り抜け!』と書かれた大きな旗を振るプレイヤーを見つめ、私は嘆息する。
だって、彼の傍では他のプレイヤーが研究所を修理していたから。
いつ、ゴーレムの攻撃が来るか分からないのに。
まあ、無謀なことはしない主義の彼らならきっと何か対策を打ってあるだろうが。

「研究都市は放っておいても、大丈夫そうですね。戦況も巨大ロボットの方が、優勢みたいですし。ここは彼らに任せて、私達は次の目的地に向かいましょう」

「えー!もうちょっと見ていこうよー!」

『あの巨大ロボットがどうやって、ゴーレムを倒すのか気になる』

「俺っちはコクピットがあるのかどうか、気になる~。遠隔操作で動いてるのかな~?」

「ラミエル、実は俺もあの巨大ロボットのことが気になっていて……出来れば、もう少し見ていたい」

 まさかの拒絶反応を示す男性陣は、『お願い』と頼み込んでくる。
が、この状況下で観戦を許可するほど私は甘くなかった。

 はぁ……ウチの男性陣四人・・は自分達の置かれている現状と、ノルマを理解していないみたいだね。
何度も『時間がない』って、言っているじゃない……って、ん?四人・・

 私はふと脳裏に過ぎった数字に疑問を抱く。
だって、今チームに居るメンバーは私を除いて五人の筈だから。
『あれ?リアムさんは……?』と思いつつ、私はきっちり横並びになって地面に座り込む男性陣へ目を向けた。

 リアムさんの性格上、あの巨大ロボットに関心を示さないなんて有り得ない。
きっと、凄く興味を引かれた筈だ。

 一抹の不安を抱える私は、急いで周囲を見回す。
が、リアムさんらしき人物は全く見当たらなかった。

 っ……!!完全にやらかした!!

 嫌な予感が当たってしまい、ギシッと奥歯を噛み締める私は勢いよく立ち上がる。

「皆さん、大変です!リアムさんが居なくなりました!今すぐ、捜索を始めますよ!」

 半ば怒鳴るようにして指示を飛ばすと、四人はハッと顔を上げた。
かと思えば、『マジかぁ……』と溜め息を漏らす。
レオンさんに関しては、顔面蒼白になっていた。
同じギルドメンバーとして、リアムさんの失踪に責任を感じているのだろう。
『でも、それは後にして』と思いつつ、私は立ち上がった四人を見つめる。

「今回は時間がないので、別れて行動しましょう。チーム割はそうですね……ラルカさんとレオンさんでひとチーム、私とシムナさんでひとチーム、それから徳正さんでひとチーム。徳正さんは一人の方が動きやすいと思うので、今回はソロでお願いします。そして、言わなくても分かっていると思いますが、リアムさんを見つけ次第チャットで連絡してください。落ち合う場所はここにしましょう。良いですね?」

 強制力を持った私の言葉に、男性陣は神妙な面持ちで頷いた。
ウチの三馬鹿もさすがにリアムさんを野放しにするのは、不味いと考えているらしい。
『爆発の前科があるもんね』と肩を竦め、私は大きく息を吸い込む。

「では、これよりリアムさんの捜索を開始します!散開してください!」
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