『魔王討伐クエスト』で役に立たないからと勇者パーティーに追い出された回復師は新たな仲間と無双する〜PK集団が英雄になるって、マジですか!?〜

あーもんど

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第三章

第76話『疲労感』

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「「「「絶対、全回復させた方がいいと思う(いいと思います)」」」」

 うん、そうだよね。

 ────ということで、私はマジックポーションを一本空け、立て続けに『パーフェクトヒール』を使った。
そのおかげで、残り三人の怪我も無事完治する。
死にかけていたのが嘘のようにスヤスヤと眠る四人のプレイヤーを前に、デーリアさん達は忙しなく動いていた。
彼らの世話を焼くために。

 ふぅ……とりあえず、これで一安心かな?
負傷したプレイヤーは全員治療したし、私達を取り囲んでいた炎の壁も着々と消火されているから。
まだ全てのファイアゴーレムを討伐していないのか、ところどころ炎は残っているものの、脅威と呼べるものじゃなかった。

 『これなら、早く次の街に行けそう』と考えつつ、私はゆっくりと立ち上がった。
その途端、強烈な目眩に襲われる。

「────ラーちゃん!」

 重心が定まらずフラフラしていると、徳正さんが咄嗟に支えてくれた。
『大丈夫?寄り掛かっていいよ?』と促す彼に、私は甘えることにする。

 ちょっと、頑張り過ぎちゃったかな……?
いや、でも私なんかより徳正さん達の方が頑張っているし、このくらい平気にならなきゃ。

 そう自分に言い聞かせながら、私は目眩が治まるのを待った。

「……すみません、もう大丈夫です。支えてくれて、ありがとうございました」

「お礼なんて良いよ~。俺っち的には、役得だしね~。それより、本当に大丈夫~?辛いなら、寝てても良いよ~?ゴーレム程度なら、ラーちゃんを抱っこしたままでも戦えるし~」

「そうそう。休んだ方が良いよー。ラミエルは頑張り過ぎだもーん!徳正の抱っこが嫌なら、僕が抱っこするしさー!」

「ラミエルさん、無理をさせてしまって申し訳ありません……助けて頂いた立場である私が言うのもなんですが、今はきちんと休んでください。救命の要であるラミエルさんが倒れてしまったら、元も子もありませんわ」

 今さっき出逢ったばかりのデーリアさんすら、体調を心配していた。
責任を感じているのか、そっと眉尻を下げる。
捨てられた子犬のような目で見てくる彼女を前に、私は小さく首を横に振った。

「心配して頂いて、ありがとうございます。でも、もう本当に大丈夫です。さっきはちょっと目眩がしただけですから」

「ん~……ラーちゃんがそう言うなら、これ以上何も言わないけど、無理はしないでね~?」

「辛くなったら、直ぐに言ってよー!?抱っこでも何でもするからさー!」

「お気遣いありがとうございます。辛くなったら、正直に言いますね」

 大人しく引き下がってくれた徳正さんとシムナさんに、私は笑顔を向ける。
そして、『この話はおしまい』と言うように違う話題を振ろうとした。
だが、しかし……納得いかない様子のデーリアさんが声を上げる。

「あ、あの!出過ぎた真似かとは思いますが、やはり一度休まれた方がいいと思いま……」

 『思います』と続ける筈だったであろう言葉は────突如巻き起こった爆発に遮られた。
耳を劈く爆音がここら一帯を包み込む中、私達は思わず身構える。
が、熱気や強風などの衝撃波は特になかった。
恐らく、爆発の威力はそこまで強くなかったのだろう。

 な、何でいきなり爆発が……?誰かが爆弾を持ち込んだとか?
少なくとも、ファイアゴーレムの仕業ではなさそうだけど……だって、そんな能力どこにも書かれてなかったし。

 『やっぱり、人為的なもの?』と頭を捻りつつ、私は口を開く。

「皆さん、お怪我はありませんか?」

「俺っちは全然平気~」

「僕も大丈夫ー!」

「わ、私達も全員無事です!」

「了解です。とりあえず、デーリアさん達はこの場に待機していてください。我々は爆発地点の様子を見に行ってきます」

 そう指示を出すと、デーリアさん達は一瞬だけ表情を曇らせた。
が、自分達に出来ることは何もないと判断したのか、素直に頷く。
本当は恩人を危険な場所に送るような真似、したくないのだろう。
『その気持ちだけ、有り難くもらっておくよ』と頬を緩め、私は顔を上げる。

 一番心配なのは、ゴーレムの討伐に向かっているラルカさんとレオンさんだけど……あの程度の爆発で、死ぬような人達ではないでしょう。

 そう自分に言い聞かせるものの、やはり不安は拭い切れなかった。
どんなに強くても、防御力に特化していても……爆発地点に居れば、タダでは済まない。
それにこの爆発は人為的に引き起こされたものである可能性が高かった。
ゴーレムを討伐するために引き起こされた爆発ならまだいい。
でも、ラルカさん達を狙ったPK・・であるなら……厄介なことになりかねない。
前者であることを願うばかりだが、後者である可能性も充分あった。

 とにかく一刻も早く現場へ行って、状況を把握しないと。話はそれからだ。

 私はいつの間にか着替えを終えていたシムナさんと準備万端な徳正さんに声を掛け、この場を後にする。
すると、後ろから『お気を付けて!』というデーリアさんの声が聞こえた。

「お二人とも、今回は不確定要素が多いので決して警戒を怠らないでください」

「「了解」」

 神妙な面持ちで首を縦に振る徳正さんとシムナさんは、真っ直ぐに前を見据えた。
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