『魔王討伐クエスト』で役に立たないからと勇者パーティーに追い出された回復師は新たな仲間と無双する〜PK集団が英雄になるって、マジですか!?〜

あーもんど

文字の大きさ
上 下
71 / 315
第三章

第70話『襲撃者の正体は?』

しおりを挟む
「────という訳で、私は貴方の言う『あや』さんではないのです。ご理解頂けましたか?」

 これでもかというほど長い説明を施した私は、顔面蒼白になるレオンさんを見上げた。
どうやら、己の仕出かしたミスと勘違いにかなりダメージを受けているらしい。
視線を右往左往させるレオンさんの前で、私は小さく息を吐いた。

「まさか、狂戦士バーサーカー化したプレイヤーを助けただけでこんなに時間を取られるとは思いませんでした……」

「だね~」

「タイムロスの原因は一応、徳正さん達にもありますからね?」

「いやぁ、それについては返す言葉もないよ~。本当にごめんね~?」

「……リーダーに報告しておきます」

「いや、本当ごめん!!ごめんなさい!それだけは勘弁して!!俺っち、主君に殺される!!」

 名前のないあの人を話に出せば、徳正さんは慌てて謝罪を口にした。
お調子者の彼でも、リーダーは怖いらしい。
ちなみにシムナさんとラルカさんはと言うと……『我関せず』といった様子で、無反応を貫いていた。
そろ~っと視線を逸らす二人の前で、私は額に青筋を立てる。
が、これ以上のタイムロスは御免なので説教を見送った。
『今はイベントクリアに専念しなきゃ』と思い立ち、気持ちを切り替える。

「とりあえず、次の街に移動しましょう。こんなところで、道草を食っている場合ではありません。遅れを取り戻すためにも、キビキビ働いてくださいよ」

『「「はーい|(承知した)」」』

 命令と言って差し支えない言葉を吐く私に、三馬鹿は反発することなく即座に応じる。
シムナさんとラルカさんに関しては、『怒られずに済んだ!』と安堵していた。

 前々から思っていたんだけど……皆さんプライド高そうなのに、命令されても文句を言わないよね。
我らが総大将であるリーダーはさておき、新人の私に命令されて嫌じゃないんだろうか?特にシムナさん。
誰かに束縛されたり、強制されたりするのを嫌っているように見えたんだけど……意外と平気なのかな?

 なんてどうでもいいことを考えながら、私はゲーム内ディスプレイを閉ざした。
そして、“逆”抱っこ待ちポーズを取る黒衣の忍びに目を向ける。

「ラーちゃん、かも~ん」

 徳正さんは両手を大きく広げ、私が飛び込んでくるのを今か今かと待っていた。
非常に鬱陶しい対応だが……私は何も言わずに彼の方へ一歩踏み出す。

「────ま、待ってくれ!」

 そう言って、私の腕を掴んだのはずっと黙り込んでいたレオンさんだった。
どこか縋るような目を向けてくる彼に、私は眉を顰める。

「何ですか?私達、急いでいるんですけど」

「そ、それは分かってる!だから、手短に言おう────お前達と行動を共にさせてくれ!」

「……はいっ?」

「お、俺は狂戦士バーサーカーだ!レベルもそこら辺のプレイヤーよりは高い!戦力には申し分ない筈だ!」

「……まあ、確かにレオンさんが協力してくれれば作戦に幅を出せますが、理由は何ですか?貴方に何かメリットでも?」

 警戒心を剥き出しにする私に対し、彼は慌てて言葉を重ねる。

「ち、違う!メリットとか、そんなんじゃ……!俺はただ、迷惑を掛けたお詫びがしたくて……!特にお前……ラミエルには怖い思いもさせたからな。狂戦士バーサーカー化している時、無意識とはいえ元カノによく似たお前を優先的に狙っちまって……怪我までさせちまった。だから、その……少しでも、力になりたくて……ダメだったか?」

 捨てられた子犬のような目でこちらを見つめ、レオンさんはチョンチョンと人差し指同士を突き合わせた。
そんな彼を前に、三馬鹿は思い切り顔を顰める。

「僕は絶対はんたーい!こんな弱っちぃ奴、必要ないよー!」

『戦力なら、足りている。こいつの自己満に付き合う義理はない』

「俺っちも反対~。別人だったとはいえ、そいつがラーちゃんと元カノを重ねて見てる可能性もあるし~。ラーちゃんのことを口説きに来たら、殺す自信あるも~ん」

「殺すって……」

 否定的な意見を述べる三人に、私は呆れにも似た苦笑を漏らした。

 私情入りまくりな徳正さんはさておき、シムナさんとラルカさんの意見には一理ある。
一般プレイヤーと比べて遥かに強いとはいえ、この三人と比べればまだまだだ。
それに狂戦士バーサーカー化した状態であれなら、通常バージョンの彼は使えない可能性がある。
せっかくの申し出だが、ここは断るしか……。

「頼む!俺を連れて行ってくれ!俺は────『紅蓮の夜叉・・・・・の幹部・・・として、汚名を返上する必要がある!お前達に迷惑を掛けたまま、詫びも入れずに引き下がる訳にはいかないんだ!」

 えっ?レオンさんが『紅蓮の夜叉』の幹部……!?
そういえば、『紅蓮の夜叉』の幹部メンバーの中に珍しい職業を持った人が居るって……それって、まさか狂戦士バーサーカーだったの!?
でも、そう考えれば彼の強さやレベルの高さにも納得が行く!
となれば、私のやることはただ一つ!

「────分かりました。レオンさんの同行を許可します」

 私は満面の笑みで、あっさり手のひらを返した。
だって、同盟の中心ギルドである『紅蓮の夜叉』の幹部と不仲になる訳にはいかないから。
今後のことを考えるなら、仲良くしておいた方がいい。
打算だらけの考えを持つ私の傍で、口うるさい三馬鹿は『何でー!?』とアホみたいに叫んだ。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

処理中です...