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第三章
第70話『襲撃者の正体は?』
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「────という訳で、私は貴方の言う『あや』さんではないのです。ご理解頂けましたか?」
これでもかというほど長い説明を施した私は、顔面蒼白になるレオンさんを見上げた。
どうやら、己の仕出かしたミスと勘違いにかなりダメージを受けているらしい。
視線を右往左往させるレオンさんの前で、私は小さく息を吐いた。
「まさか、狂戦士化したプレイヤーを助けただけでこんなに時間を取られるとは思いませんでした……」
「だね~」
「タイムロスの原因は一応、徳正さん達にもありますからね?」
「いやぁ、それについては返す言葉もないよ~。本当にごめんね~?」
「……リーダーに報告しておきます」
「いや、本当ごめん!!ごめんなさい!それだけは勘弁して!!俺っち、主君に殺される!!」
名前のないあの人を話に出せば、徳正さんは慌てて謝罪を口にした。
お調子者の彼でも、リーダーは怖いらしい。
ちなみにシムナさんとラルカさんはと言うと……『我関せず』といった様子で、無反応を貫いていた。
そろ~っと視線を逸らす二人の前で、私は額に青筋を立てる。
が、これ以上のタイムロスは御免なので説教を見送った。
『今はイベントクリアに専念しなきゃ』と思い立ち、気持ちを切り替える。
「とりあえず、次の街に移動しましょう。こんなところで、道草を食っている場合ではありません。遅れを取り戻すためにも、キビキビ働いてくださいよ」
『「「はーい|(承知した)」」』
命令と言って差し支えない言葉を吐く私に、三馬鹿は反発することなく即座に応じる。
シムナさんとラルカさんに関しては、『怒られずに済んだ!』と安堵していた。
前々から思っていたんだけど……皆さんプライド高そうなのに、命令されても文句を言わないよね。
我らが総大将であるリーダーはさておき、新人の私に命令されて嫌じゃないんだろうか?特にシムナさん。
誰かに束縛されたり、強制されたりするのを嫌っているように見えたんだけど……意外と平気なのかな?
なんてどうでもいいことを考えながら、私はゲーム内ディスプレイを閉ざした。
そして、“逆”抱っこ待ちポーズを取る黒衣の忍びに目を向ける。
「ラーちゃん、かも~ん」
徳正さんは両手を大きく広げ、私が飛び込んでくるのを今か今かと待っていた。
非常に鬱陶しい対応だが……私は何も言わずに彼の方へ一歩踏み出す。
「────ま、待ってくれ!」
そう言って、私の腕を掴んだのはずっと黙り込んでいたレオンさんだった。
どこか縋るような目を向けてくる彼に、私は眉を顰める。
「何ですか?私達、急いでいるんですけど」
「そ、それは分かってる!だから、手短に言おう────お前達と行動を共にさせてくれ!」
「……はいっ?」
「お、俺は狂戦士だ!レベルもそこら辺のプレイヤーよりは高い!戦力には申し分ない筈だ!」
「……まあ、確かにレオンさんが協力してくれれば作戦に幅を出せますが、理由は何ですか?貴方に何かメリットでも?」
警戒心を剥き出しにする私に対し、彼は慌てて言葉を重ねる。
「ち、違う!メリットとか、そんなんじゃ……!俺はただ、迷惑を掛けたお詫びがしたくて……!特にお前……ラミエルには怖い思いもさせたからな。狂戦士化している時、無意識とはいえ元カノによく似たお前を優先的に狙っちまって……怪我までさせちまった。だから、その……少しでも、力になりたくて……ダメだったか?」
捨てられた子犬のような目でこちらを見つめ、レオンさんはチョンチョンと人差し指同士を突き合わせた。
そんな彼を前に、三馬鹿は思い切り顔を顰める。
「僕は絶対はんたーい!こんな弱っちぃ奴、必要ないよー!」
『戦力なら、足りている。こいつの自己満に付き合う義理はない』
「俺っちも反対~。別人だったとはいえ、そいつがラーちゃんと元カノを重ねて見てる可能性もあるし~。ラーちゃんのことを口説きに来たら、殺す自信あるも~ん」
「殺すって……」
否定的な意見を述べる三人に、私は呆れにも似た苦笑を漏らした。
私情入りまくりな徳正さんはさておき、シムナさんとラルカさんの意見には一理ある。
一般プレイヤーと比べて遥かに強いとはいえ、この三人と比べればまだまだだ。
それに狂戦士化した状態であれなら、通常バージョンの彼は使えない可能性がある。
せっかくの申し出だが、ここは断るしか……。
「頼む!俺を連れて行ってくれ!俺は────『紅蓮の夜叉』の幹部として、汚名を返上する必要がある!お前達に迷惑を掛けたまま、詫びも入れずに引き下がる訳にはいかないんだ!」
えっ?レオンさんが『紅蓮の夜叉』の幹部……!?
そういえば、『紅蓮の夜叉』の幹部メンバーの中に珍しい職業を持った人が居るって……それって、まさか狂戦士だったの!?
でも、そう考えれば彼の強さやレベルの高さにも納得が行く!
となれば、私のやることはただ一つ!
「────分かりました。レオンさんの同行を許可します」
私は満面の笑みで、あっさり手のひらを返した。
だって、同盟の中心ギルドである『紅蓮の夜叉』の幹部と不仲になる訳にはいかないから。
今後のことを考えるなら、仲良くしておいた方がいい。
打算だらけの考えを持つ私の傍で、口うるさい三馬鹿は『何でー!?』とアホみたいに叫んだ。
これでもかというほど長い説明を施した私は、顔面蒼白になるレオンさんを見上げた。
どうやら、己の仕出かしたミスと勘違いにかなりダメージを受けているらしい。
視線を右往左往させるレオンさんの前で、私は小さく息を吐いた。
「まさか、狂戦士化したプレイヤーを助けただけでこんなに時間を取られるとは思いませんでした……」
「だね~」
「タイムロスの原因は一応、徳正さん達にもありますからね?」
「いやぁ、それについては返す言葉もないよ~。本当にごめんね~?」
「……リーダーに報告しておきます」
「いや、本当ごめん!!ごめんなさい!それだけは勘弁して!!俺っち、主君に殺される!!」
名前のないあの人を話に出せば、徳正さんは慌てて謝罪を口にした。
お調子者の彼でも、リーダーは怖いらしい。
ちなみにシムナさんとラルカさんはと言うと……『我関せず』といった様子で、無反応を貫いていた。
そろ~っと視線を逸らす二人の前で、私は額に青筋を立てる。
が、これ以上のタイムロスは御免なので説教を見送った。
『今はイベントクリアに専念しなきゃ』と思い立ち、気持ちを切り替える。
「とりあえず、次の街に移動しましょう。こんなところで、道草を食っている場合ではありません。遅れを取り戻すためにも、キビキビ働いてくださいよ」
『「「はーい|(承知した)」」』
命令と言って差し支えない言葉を吐く私に、三馬鹿は反発することなく即座に応じる。
シムナさんとラルカさんに関しては、『怒られずに済んだ!』と安堵していた。
前々から思っていたんだけど……皆さんプライド高そうなのに、命令されても文句を言わないよね。
我らが総大将であるリーダーはさておき、新人の私に命令されて嫌じゃないんだろうか?特にシムナさん。
誰かに束縛されたり、強制されたりするのを嫌っているように見えたんだけど……意外と平気なのかな?
なんてどうでもいいことを考えながら、私はゲーム内ディスプレイを閉ざした。
そして、“逆”抱っこ待ちポーズを取る黒衣の忍びに目を向ける。
「ラーちゃん、かも~ん」
徳正さんは両手を大きく広げ、私が飛び込んでくるのを今か今かと待っていた。
非常に鬱陶しい対応だが……私は何も言わずに彼の方へ一歩踏み出す。
「────ま、待ってくれ!」
そう言って、私の腕を掴んだのはずっと黙り込んでいたレオンさんだった。
どこか縋るような目を向けてくる彼に、私は眉を顰める。
「何ですか?私達、急いでいるんですけど」
「そ、それは分かってる!だから、手短に言おう────お前達と行動を共にさせてくれ!」
「……はいっ?」
「お、俺は狂戦士だ!レベルもそこら辺のプレイヤーよりは高い!戦力には申し分ない筈だ!」
「……まあ、確かにレオンさんが協力してくれれば作戦に幅を出せますが、理由は何ですか?貴方に何かメリットでも?」
警戒心を剥き出しにする私に対し、彼は慌てて言葉を重ねる。
「ち、違う!メリットとか、そんなんじゃ……!俺はただ、迷惑を掛けたお詫びがしたくて……!特にお前……ラミエルには怖い思いもさせたからな。狂戦士化している時、無意識とはいえ元カノによく似たお前を優先的に狙っちまって……怪我までさせちまった。だから、その……少しでも、力になりたくて……ダメだったか?」
捨てられた子犬のような目でこちらを見つめ、レオンさんはチョンチョンと人差し指同士を突き合わせた。
そんな彼を前に、三馬鹿は思い切り顔を顰める。
「僕は絶対はんたーい!こんな弱っちぃ奴、必要ないよー!」
『戦力なら、足りている。こいつの自己満に付き合う義理はない』
「俺っちも反対~。別人だったとはいえ、そいつがラーちゃんと元カノを重ねて見てる可能性もあるし~。ラーちゃんのことを口説きに来たら、殺す自信あるも~ん」
「殺すって……」
否定的な意見を述べる三人に、私は呆れにも似た苦笑を漏らした。
私情入りまくりな徳正さんはさておき、シムナさんとラルカさんの意見には一理ある。
一般プレイヤーと比べて遥かに強いとはいえ、この三人と比べればまだまだだ。
それに狂戦士化した状態であれなら、通常バージョンの彼は使えない可能性がある。
せっかくの申し出だが、ここは断るしか……。
「頼む!俺を連れて行ってくれ!俺は────『紅蓮の夜叉』の幹部として、汚名を返上する必要がある!お前達に迷惑を掛けたまま、詫びも入れずに引き下がる訳にはいかないんだ!」
えっ?レオンさんが『紅蓮の夜叉』の幹部……!?
そういえば、『紅蓮の夜叉』の幹部メンバーの中に珍しい職業を持った人が居るって……それって、まさか狂戦士だったの!?
でも、そう考えれば彼の強さやレベルの高さにも納得が行く!
となれば、私のやることはただ一つ!
「────分かりました。レオンさんの同行を許可します」
私は満面の笑みで、あっさり手のひらを返した。
だって、同盟の中心ギルドである『紅蓮の夜叉』の幹部と不仲になる訳にはいかないから。
今後のことを考えるなら、仲良くしておいた方がいい。
打算だらけの考えを持つ私の傍で、口うるさい三馬鹿は『何でー!?』とアホみたいに叫んだ。
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