『魔王討伐クエスト』で役に立たないからと勇者パーティーに追い出された回復師は新たな仲間と無双する〜PK集団が英雄になるって、マジですか!?〜

あーもんど

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第三章

第69話『襲撃者と三馬鹿』

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 後ろに倒れる敵プレイヤーを咄嗟に支えた徳正さんは、日本刀を素早く鞘に納めた。

「とりあえず気絶したみたいだけど、これどうする~?置いていく~?」

「置いていく一択でしょー。連れて行っても、意味ないしー。その辺に放置しておけば、良くなーい?」

『僕もシムナと同意見だ』

 確かにそれが一番かも。下手に連れ回すより、ゴーレムの居ない場所へ置いていった方が安全だし。
とりあえず、怪我だけ治してここを去ろう。

 私は徳正さんの手によって、地面に寝かせられた敵プレイヤーへ手をかざす。

「《パーフェクトヒール》」

 最上級の治癒魔法を施すと、フワッと柔らかい光が彼の体を包み込んだ。
陽だまりみたいに暖かいソレは、彼の傷を癒していく。
間もなくして発汗や吐血は収まり、呼吸も安定してきた。
とりあえず、これで死ぬ心配はないだろう。
敵の容態を確認し、私はラルカさんの腕をやんわり振りほどいた。

 早く、次の街に行かないと……!街巡りが終わったら、目撃者の少ない郊外にも足を運ばないといけないし!

「皆さん、疲れているところ申し訳ありませんが、次の街に移動しま……」

「────アヤっ!?」

 『移動しましょう』と続ける筈だった言葉は、やけに耳に残るバリトンボイスに遮られた。

 あ、あや?それって、誰!?まさか、私のことじゃないよね!、

 混乱しつつも声の主を探すと────敵プレイヤーが目に入る。

「アヤ!アヤだよな!?俺っ!俺だよ!レオン!一ヶ月前まで、付き合っていただろ!?」

「は、はい!?付き合っていた!?私と貴方が、ですか!?」

「そうだ!もう忘れたのか!?」

 私と視線が交わるなり、ガバッと勢いよく起き上がった敵プレイヤー────改め、レオンさんは距離を詰めてきた。
そのレモンイエローの瞳からは、焦りがヒシヒシと伝わってくる。

 ちょ、ちょっと待って!?私、貴方と初対面なんだけど!?
ていうか、今から一ヶ月前って……『虐殺の紅月』に加入したばかりの頃じゃない!
確実に人違いだって!

 『色恋にうつつを抜かせるほど暇じゃない!』と考える中、徳正さん達はショックを受けたような表情を浮かべた。

「えっ!?ラーちゃん、俺っちというものがありながら浮気!?しかも、こんな弱い男と!?」

「ラミエル!悪いことは言わないから、僕にしておきなよ!僕の方が強いし、優しいし、格好いいよ!?」

『二人とも、落ち着け。この男の口振りだと、恐らく今は付き合っていない。元恋人同士ってところだろう。今、僕らのすべきことは復縁を邪魔することだけだ』

「らみえる……?アヤ、名前を変えたのか?」

「……」

 徳正さん達のせいで誤解を解くタイミングを見失った私は、嘆息する。
『なんだ?この茶番は……』と思いながら。

「ラーちゃん、こいつにズバッと言ってやって~!ラーちゃんの彼氏は、俺っちだって~!」

「徳正、馬鹿じゃないのー?ラミエルの今の彼氏今彼は、僕なんだけどー?」

『二人とも、落ち着け。現実を見ろ。ラミエルの彼氏は僕だ。ラミエルとは、もうハグもした仲だからな』

「アヤ……お前、俺と別れてから男癖悪くなったか?つーか、男の趣味変わったな……?」

「ねぇ~、ずっと気になってたんだけど、その『あや』ってラーちゃんの本名~?」

「あっ!それ、僕もずっと気になってたー!」

『待て、二人とも。そこは突っ込まないお約束だぞ。ネット仲間に本名を尋ねるのは、タブーだ。ここは適当に流すべきだろう』

「アヤは本名じゃねぇーよ?前、俺と付き合っていた時のネット名だ。今はラミエルに改名したらしいけどな」

 ギャーギャーと言い合いを繰り広げるいつもの三人とレオンさんに、私は頭を抱える。
『いい加減にしてくれ……』と辟易しつつ、事態の収拾のため口を開いた。

「私はレオンさんの言う『あや』さんじゃ、ありません。アカウント登録時からずっと、ラミエルです。恐らく、レオンさんは人違いをなさっているかと」

「「『「えっ……?」』」」

 別人だと断言した私に、レオンさんを含める四人が動揺を示した。

 はっ……?徳正さん達も、私を『あや』だと思い込んでいたの?
別人だと分かった上で、茶番を繰り広げていた訳ではなく?
もしかして皆さん、私の思っている以上に馬鹿だったりする?

 『人違いだと気づくタイミングは沢山あっただろうに』と呆れ返り、お馬鹿な三人組三馬鹿を一瞥した。

「私は『虐殺の紅月』に所属する、回復師ヒーラーのラミエルです。とりあえず、手短に説明しますね?こちらも時間がないので……先程も申し上げた通り、私は貴方の言う『あや』さんではありません。そして────」

 ゲーム内ディスプレイに表示された時刻を気にしつつ、私は誤解を解くためひたすら弁解した。
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