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第三章
第61話『救出』
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「《パーフェクトヒール》」
最上級の治癒魔法を施すと、瓦礫の山から飛び出した手は擦り傷一つなく完治した。
幻だったかのように……一瞬で。
まあ、また直ぐに瓦礫の重さや尖った部分で怪我をしているだろうが。
『こればっかりはどうようもない』と思いつつ、私はその場から立ち上がった。
と同時に、ラルカさんの方を振り返る。
すると、クマの着ぐるみは『後は任せろ』とでも言うように瓦礫の前へ出た。
ここから先は瓦礫の下敷きになったプレイヤーの耐久力とスピードの勝負だ。
現在進行形で、回復したHPを削られている状況のため。
『ラルカさんの腕の見せどころだね』と考える中、彼は瓦礫の前で片膝をつく。
そして、プレイヤーの手を強く掴んだ。
かと思えば、体を後ろに反らす。
己の体重を利用したソレは、まるで綱引きのようだった。
やっぱり、ラルカさんを連れてきて正解だった。
シムナさんだったら、後先考えず力任せに引っ張っていただろうから。
────まあ、残念ながらそれだけの力では助け出せなかったみたいだけど……。
微動だにしないプレイヤーと瓦礫の山を前に、ラルカさんはゆっくりと立ち上がる。
どうやら、作戦を変更するつもりのようだ。
『今度は力任せに引っ張ることになるだろうな』と考える中、彼は少し屈んだ状態でプレイヤー手を掴む。
その様子を一瞥し、私はアイテムボックスから結界符を取り出した。
プレイヤーを引き抜いた際、瓦礫の山が崩れるかもしれないから。
『そうなったら絶対、生き埋めになる』と判断し身構えていると、ラルカさんは────プレイヤーの手を一気に引っ張った。
かと思えば、プレイヤーの体が勢いよく飛び出してきて……宙を舞う。
それを見たラルカさんは慌てて手を引っ張り、プレイヤーの体を抱き止めた。
ナイスキャッチ!ラルカさん!
と歓喜するものの、私は瓦礫の存在を思い出し、慌ててそちらに目を向けた。
が────瓦礫の山に、特に変化はない。多少崩れたかな?程度。
『結界符の出番はないみたい』と安堵しつつ、私はラルカさんの方へ向き直った。
と同時に、口を開く。
「《パーフェクトヒール》」
血だらけの状態で荒々しい呼吸を繰り返す怪我人に、私は治癒魔法を施した。
すると、瞬く間に傷は消えていき、乱れた呼吸も正常に戻る。
これでもう大丈夫。あとは目を覚ましてくれれば、完璧なんだけど……。
スヤスヤと気持ち良さそうに眠るプレイヤーを見遣り、私は苦笑する。
だって、一向に起きる気配がないから。
さすがに置いていく訳にはいかないため、私は渋々同行を決意した。
「まあ、途中で会ったプレイヤーに預ければ良いか」
怪我を治すお礼として、このプレイヤーを街の外まで連れて行ってほしいとか何とか言えば、大丈夫だろう。
大抵のプレイヤーは『ついでだし』と快く引き受けてくれる筈。
「ラルカさん、この人が起きるか、この人を預けられるプレイヤーに出会えるまでそのまま抱っこして貰って良いですか?」
そう提案すると、ラルカさんは間髪入れずに頷いた。
かと思えば、眠ったままの男性プレイヤーを抱き直し、普通の抱っこからお姫様抱っこに切り替える。
いそいそと体勢を整える彼の横で、私は真っ直ぐ前を見据えた。
「立ち止まっている暇はありません。先に進みましょう」
最上級の治癒魔法を施すと、瓦礫の山から飛び出した手は擦り傷一つなく完治した。
幻だったかのように……一瞬で。
まあ、また直ぐに瓦礫の重さや尖った部分で怪我をしているだろうが。
『こればっかりはどうようもない』と思いつつ、私はその場から立ち上がった。
と同時に、ラルカさんの方を振り返る。
すると、クマの着ぐるみは『後は任せろ』とでも言うように瓦礫の前へ出た。
ここから先は瓦礫の下敷きになったプレイヤーの耐久力とスピードの勝負だ。
現在進行形で、回復したHPを削られている状況のため。
『ラルカさんの腕の見せどころだね』と考える中、彼は瓦礫の前で片膝をつく。
そして、プレイヤーの手を強く掴んだ。
かと思えば、体を後ろに反らす。
己の体重を利用したソレは、まるで綱引きのようだった。
やっぱり、ラルカさんを連れてきて正解だった。
シムナさんだったら、後先考えず力任せに引っ張っていただろうから。
────まあ、残念ながらそれだけの力では助け出せなかったみたいだけど……。
微動だにしないプレイヤーと瓦礫の山を前に、ラルカさんはゆっくりと立ち上がる。
どうやら、作戦を変更するつもりのようだ。
『今度は力任せに引っ張ることになるだろうな』と考える中、彼は少し屈んだ状態でプレイヤー手を掴む。
その様子を一瞥し、私はアイテムボックスから結界符を取り出した。
プレイヤーを引き抜いた際、瓦礫の山が崩れるかもしれないから。
『そうなったら絶対、生き埋めになる』と判断し身構えていると、ラルカさんは────プレイヤーの手を一気に引っ張った。
かと思えば、プレイヤーの体が勢いよく飛び出してきて……宙を舞う。
それを見たラルカさんは慌てて手を引っ張り、プレイヤーの体を抱き止めた。
ナイスキャッチ!ラルカさん!
と歓喜するものの、私は瓦礫の存在を思い出し、慌ててそちらに目を向けた。
が────瓦礫の山に、特に変化はない。多少崩れたかな?程度。
『結界符の出番はないみたい』と安堵しつつ、私はラルカさんの方へ向き直った。
と同時に、口を開く。
「《パーフェクトヒール》」
血だらけの状態で荒々しい呼吸を繰り返す怪我人に、私は治癒魔法を施した。
すると、瞬く間に傷は消えていき、乱れた呼吸も正常に戻る。
これでもう大丈夫。あとは目を覚ましてくれれば、完璧なんだけど……。
スヤスヤと気持ち良さそうに眠るプレイヤーを見遣り、私は苦笑する。
だって、一向に起きる気配がないから。
さすがに置いていく訳にはいかないため、私は渋々同行を決意した。
「まあ、途中で会ったプレイヤーに預ければ良いか」
怪我を治すお礼として、このプレイヤーを街の外まで連れて行ってほしいとか何とか言えば、大丈夫だろう。
大抵のプレイヤーは『ついでだし』と快く引き受けてくれる筈。
「ラルカさん、この人が起きるか、この人を預けられるプレイヤーに出会えるまでそのまま抱っこして貰って良いですか?」
そう提案すると、ラルカさんは間髪入れずに頷いた。
かと思えば、眠ったままの男性プレイヤーを抱き直し、普通の抱っこからお姫様抱っこに切り替える。
いそいそと体勢を整える彼の横で、私は真っ直ぐ前を見据えた。
「立ち止まっている暇はありません。先に進みましょう」
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