『魔王討伐クエスト』で役に立たないからと勇者パーティーに追い出された回復師は新たな仲間と無双する〜PK集団が英雄になるって、マジですか!?〜

あーもんど

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第三章

第58話『情報共有《 side》』

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「ほう?これがお前のパーティーメンバーが、かき集めたゴーレムの情報か。この短時間でよくここまで集め、まとめ上げることが出来たな」

 そう言って、俺の提供した情報に感心するのは『紅蓮の夜叉』ギルドマスターのヘスティアだった。
他の同盟メンバーも、『助かった』と言わんばかりに安堵している。

 先ほど届いたラミエルからの文章をコピー&ペーストコピペして、同盟のグループチャットに送っただけなんだが……思いのほか大好評だな。
まあ、ウチのラミエル参謀が急いでかき集めた情報なんだから、当然だが。

 ラミエルの有能さを周りに知らしめることが出来た俺は、微かに頬を緩めた。
────と、ここで不満を漏らす者達が現れる。

「でも、この情報って確かなのかよ?」

「だよなぁ。この短時間でこれだけの情報が集まるとは、考えにくいし」

「デマなんじゃねぇーの?」

 そう言って、ケラケラ笑うのは同盟会議前に俺に絡んできた連中だった。
こいつらは俺達『虐殺の紅月』が同盟に加わることを、よく思っていない。
ヘスティアの脅しのおかげで一応納得はしたようだが、敵対心はまだなくなっていないようだった。

 この状況下でも突っかかって来るか……俺のことを馬鹿にするのは別に構わないが、仲間の能力を疑う発言は頂けないな。
だが、ここで問題を起こせば奴らの思うツボだ。
ラミエルの努力を無駄にしないためにも、ここは冷静な対応を…|。

 俺は肩まである銀髪を結い上げながら、文句を垂れる馬鹿共に視線を向けた。

「これらの情報は最後の文章にも記載されている通り、公式チャットと掲示板から見つけたものだ。いくつかデマ情報が混じっていても、おかしくない」

「だよなぁー!大体、公式チャットと掲示板から情報収集とか頭イカれてんじゃね?」

「それなー!」

「分かるー!」

 ここぞとばかりに囃し立て、彼らは俺の神経を逆撫でした。
ピキッと俺の中にある理性が、悲鳴を上げる。
『これ以上は我慢ならない』と眉間に深い皺を刻み、あいつらを睨みつけた。

「この情報を信用するもしないも、お前達次第だ。別に俺はこの情報が絶対に合っているとか、信じろとか言うつもりはない。だが────俺の仲間が必死に集めた情報を馬鹿にすることだけは、許さない」

「「「っ……!?」」」

 先程までの下品な笑い声が嘘のように静まり返り、奴らは腰を抜かす。
ガクガクと震える彼らの前で、俺は少しだけ殺気を放った。

 俺は親切心で、ラミエルのかき集めた情報を同盟メンバーに提供しただけだ。
そっちの方が効率的にゴーレムを狩れるし、『知らない』という恐怖を少しでも和らげることが出来るから。
それなのに……この仕打ちか?

 ラミエルの存在自体軽んじられた気がして、俺は怒りを覚える。
『何様のつもりだ?』と責め立てたくなる衝動を抑え、身を翻した。

 ここにもう用はない。目的はとっくに果たされた。さっさと去ろう。
じゃないと────うっかり、あいつらを殺してしまいそうだ。
PK禁止命令を出した張本人が真っ先に約束を破るなど、格好悪いことこの上ない。ここは我慢だ、我慢……。

「発言には、気をつけろ。次はない」

 俺はそれだけ言い残すと、一度も奴らの顔を見ることなく歩き出した。
そして、コツコツと一人分の足音が鳴り響く────筈だった。

「まあ、待て。そうカッカするな。お前一人で動くより、皆で協力して動いた方が効率いいだろ。なっ?」

 そう言って、俺に『待った』を掛けたのは『紅蓮の夜叉』ギルドマスターのヘスティアだった。
物怖じしない性格の彼女は、殺気立つ俺の元へ駆け寄ってくる。
が、俺は足を止めない。

「雑魚と協力しても、時間の無駄だ。さっき洞窟の出入口前にゴーレムが現れたとき、動けたのは俺とヘスティアを含める数人だけ。そんな奴らと協力して、何になる?俺は俺で勝手にやらせてもらう」

 イベント開始と共に現れたゴーレム二体を片したのは、俺とヘスティアだ。
他にも動いた者は数名居たが、そいつらの出る幕はなかった。
でも、問題はそこじゃない。
ゴーレムを前にして硬直した者や身を隠した者、自分だけ助かろうと転移系のアイテムを手にした者が問題なんだ。
腑抜けにもほどがある。

「まあ、そう言わずに協力してくれ。バラバラに動いたところで、後手に回るだけだ」

「断る」

「相変わらず、お前は頑固だな……なら、せめて私のナビに従ってゴーレムを討伐してくれ。それなら、単独行動しても構わん」

 俺の頑固さに折れたヘスティアは、妥協案を提示してきた。
『やれやれ』とかぶりを振っているが、ペリドットの瞳には有無を言わせぬ迫力がある。

 ヘスティアのナビで動く、か……。
まあ、確かにそっちの方がお互い動きやすいし、効率も良い。
入れ違いになったり、ヘスティア達とバッタリ会う可能性も防げる。悪くはない提案だな。
ヘスティアの指揮下に入れられるのは、少々癪だが……。
でも、これ以上ワガママは言えない。
ここら辺で引いておかないと、ヘスティアと衝突することになるから。

 『一秒でも惜しい状況でそれは困る』と判断し、一つ息を吐いた。
と同時に、マップ画面を開く。

「どこに向かえばいいのか、早く教えろ。ナビとやらをしてくれるんだろ?」

 ヘスティアの妥協案を受け入れると、赤髪の少女は見るからに表情を明るくした。
『そう来なくては!』と言わんばかりに頬を緩め、胸を張る。

「ああ!任せろ!この私が完璧なナビゲートをしてやる!大舟に乗ったつもりで居るといい!」

 グッと拳を握り締めるヘスティアは、気合い十分だ。
嬉々として空中をタップしながら数秒ほど考え込み、こちらを見上げる。

「じゃあ、まずはここから一番近い街────青滝《あおたき》の街に向かってくれ!街には魔法を使うゴーレムも居るらしいから、気を抜くなよ!」
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