『魔王討伐クエスト』で役に立たないからと勇者パーティーに追い出された回復師は新たな仲間と無双する〜PK集団が英雄になるって、マジですか!?〜

あーもんど

文字の大きさ
上 下
50 / 315
第二章

第49話『一人じゃない』

しおりを挟む
 セ、ト……?何でセトがここに!?
だって、セトは『サムヒーロー』のメンバーでしょう……!?
何で『紅蓮の夜叉』の派遣メンバーの中に居るの……!?

 動揺が隠せずにいる私は、元パーティーメンバーであるセトの顔を凝視した。
オールバックにした黒っぽい紺髪に、時々青が混じる琥珀色の瞳。
顔立ちは全体的に彫りが深く、日に焼けた肌も相まって外国人のように見える。
『……やっぱり、セトだ』と再度確信し、私は表情を強ばらせた。
別に何かされた訳じゃないのに、手が震える。

「なん、で……こ、こに……」

「何でって、そんなの決まってるだろ?『サムヒーロー』を抜けて、『紅蓮の夜叉』に加入したからだ」

 冷静に受け答えするセトの姿に、私は戸惑いを覚えた。

 状況から考えて、『紅蓮の夜叉』のギルドメンバーであることは確かだと思うけど……何でセトはそんなに落ち着いていられるの?
あんな形で別れたのに……何も思わないの?

 セトの考えていることが理解出来ず、私は目を白黒させた。
恐怖と不安のあまり、今にも膝から崩れ落ちそうになっていると────誰かにそっと肩を抱き寄せられる。

「ラーちゃん、大丈夫?顔色真っ青だよ?」

「『サムヒーロー』ってことは、ラミエルが元いたパーティーの奴かー。どうするー?置いていこうかー?連れて行ったって、邪魔なだけだしー」

『いや、むしろここで切り捨てるべきじゃないか?』

「はいはい、二人はちょっと黙ってようか~?ラーちゃんが怖がっちゃうでしょ~?まずはラーちゃんを安心させてあげないと~」

「安心?よし!それなら、僕に任せて!────ラミエル、僕なら五秒であいつを殺せるよ!だから、何も心配いらないよ!」

『徳正が言いたいのは、そういう事じゃないと思うぞ……』

「えー?違うのー?」

 私の肩を抱き寄せる徳正さんと、その逆の方向に立つシムナさんとラルカさん。
いつの間にか、私の隣には頼もしいメンバーが並んでいた。
まるで、『一人じゃないよ』とでも言うように。
それがどうしようもなく嬉しくて……ビックリするほど安心した。

 そうだ……私は一人じゃない。徳正さんを始めとする、心強い仲間が居る。

 『だから、大丈夫』と自分に言い聞かせ、私はゆっくりと深呼吸した。
そして、何とか気持ちを落ち着かせると、再度セトに向き直る。
何故かムッとしている様子の彼を見上げ、私は口を開いた。

「リーダーからの命令だから、きちんと地上には連れていく。でも、それ以上関わりを持つつもりはない。もちろん、追放の件を許す気も……」

「……そうか」

 セトはつまらなさそうに返事すると、フイッと視線を逸らした。
言うまでもなく、感じが悪い。
それが助けてもらう者の態度か!と怒鳴りたくなるくらいには……。

 セトって、こんな感じだったっけ?もっと、温厚で優しいイメージを持っていたんだけど……この一ヶ月の間に、何かあったのかな?

 『それとも、もう仲間じゃないから?』と憶測を立てる私の横で、問題児三人組は思い切り不満を露わにする。

「いやいや、それだけ~?もっと言うことあるでしょ~?『ありがとう』とか、ないの~?」

「僕ねー、君は三回くらい死んだ方が良いと思うんだー。どう?一回、死んどく?」

『お礼も言えない奴を守る気はないぞ。というか、一回死ね』

 徳正さんの言い分はまだ良いとして……問題はPK好きのお二人である。
まず、シムナさん……その『一杯飲んでく?』みたいなノリで死刑宣告しないで!
次にラルカさん!貴方はストレート過ぎ!何なの、『一回死ね』って!!
あと、光の当たり具合のせいか着ぐるみの表情(?)が怖くなっているから!!
こんなの子供が見たら、泣いちゃうって!!

「と、とりあえず皆さん落ち着いてください!別に私は気にしてませんから!」

 いや、本当はめちゃくちゃ気にしているけど……でも、今ソレを言ったらシムナさんあたりが本当にセトを殺しそうで怖い。
私は別にセトに死んでほしい訳じゃない。
ただ、ほんの少しだけでもいいから後悔してくれていたら良いな、と……。
反省とか謝罪とか……そういうのは求めていなかった。
もちろん、してもらった方がスッキリするし、気分もいいけど。
でも、そういうのって強制するものじゃないから……今はこれで良い。

 心の底からそう思い、私は不平不満といった感情を割り切る。
そんな私を、徳正さん達はただじっと見つめていた。

「……あ、あの……?」

「ん?あぁ、いや何でもないよ~。それより、さっさと地上に上がろっか~。もうそろそろ、シパクトリが何匹か復活する頃だし~」

「あ、はい!」

 私はヘラリと笑って歩き出す徳正の後ろに続き、おもむろに後ろを振り返った。
そこにはセト率いる派遣メンバーの三人が居る。
また、最後尾にはシムナさんとラルカさんが仲良く並んでいた。

 いつの間に最後尾に……いや、その前にきちんと護衛任務を果たす気あったんだ。ちょっと驚いた。
自由奔放な二人のことだから、好き勝手動くかと思ったのに。

 『二人とも、成長したなぁ』としみじみ思い、私は頬を緩める。
この調子で、常識も身につけてくれることを願いながら。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

処理中です...