44 / 315
第二章
第43話『渦神カリュブディスの攻略方法』
しおりを挟む
ボスフロアが水源エリアじゃなければ、ゴリ押しで行くんだけど……水中戦での物理攻撃は、あまりダメージを与えられないんだよね。
水抵抗のせいで、勢いを殺されるから。
正直、物理特化パーティーの私達と水中魔物である“渦神カリュブディス”との相性は最悪。勝てる気がしない。
せめて、足場となる地面か宙を飛ぶ浮遊魔法があればなぁ……。
水中戦さえ避けられれば、大分有利になる……って、ちょっと待てよ?
“あれ”を使えば、水中戦を避けられるんじゃないか!?
「徳正さん!この前、使った────『グリュプスの笛』って、ありますか!?」
空中を自由に飛び回ることの出来るグリフォンが居れば、戦いはかなり楽になる。
少なくとも、水中に引きずり込まれて溺死する可能性は低くなる筈!
そんな私の考えを瞬時に見抜いたのか、徳正さんは表情を明るくした。
「もちろん、あるよ~。売っぱらっても良かったんだけど、きっとまたどこかで使う機会があると思ってさ~。取っておいたんだよね~」
「ナイス判断です、徳正さん!助かりました!」
「でしょでしょ~」
徳正さんは『ふふん!』と得意げに胸を反らし、アイテムボックスから取り出した角笛を自慢げに掲げる。
そして、『もっと褒めて』と言わんばかりにこちらへアイコンタクトを送ってきた。
が、私は華麗にスルー。
「ラーちゃんが俺っちに冷たい……」
『それは今に始まったことではない』
「あはははっ!徳正ってば、見事に振られたねー!」
シュンと肩を落とす徳正さんに、ラルカさんとシムナさんはまさかの追い討ちをかけた。
慰める気0である。
徳正さんを落ち込ませた私が言うのもなんだけど、ちょっと皆対応が雑じゃない?
もう少し愛を持って接してあげよう?
「まあ、徳正のことは置いといて……グリフォンを使ってどんな作戦を立てるわけー?」
『グリフォンは二人乗りの移動アイテムだ。どんなに詰めて座っても三人が限界だろう。誰か一人は待機することになるぞ』
「そうですね。全員乗ることは物理的に不可能です」
フロアボスとの戦いでは外部からの接触・横槍を防ぐため、部屋全体に結界が張られる。
結界外からは攻撃も出来なければ、仲間の支援も出来ない。
なので、一人だけ外に待機してこっそりサポートする……というのは無理だった。
『可能だったなら、支援職の私が外で待機するんだけど』と肩を竦め、熟考する。
どのようにメンバーを振り分けるか、を。
う~ん……本当はあまり気が進まないんだけど、確実性を狙うならこれしかないか。
「徳正さん、つかぬ事をお聞きしますが、水面を走ることって可能ですか?」
「ん~?水面~?走れるよ~。だって、俺っち忍者だもん~。でも、それがどうかした~?────って、まさか……」
「はい、その『まさか』です」
さすがは徳正さんと言うべきか、瞬時に私の思惑を見抜いたようだ。
『相変わらず、察しのいい人だな』と思いつつ、私は人差し指を立てる。
「徳正さんには────囮役をやってもらいます」
「『えっ!?』」
まさか私が仲間を囮として使うとは思わなかったのか、ラルカさんとシムナさんは驚きを隠し切れずにいた。
対する徳正さんは平然としているが。
私だって、出来れば仲間を囮に使いたくない。でも、今はこれしかないの。
それに徳正さんのスピードに、“渦神カリュブディス”が付いてくるとは思えないし。
水中なら話は別だが、徳正さんが走るのは水面。
水中に引きずり込まれないよう気をつければ、被害は出ないだろう。
「徳正さんが“渦神カリュブディス”を引き付けている間に、私達は“これ”を使ってボスフロアの水を吸い上げます」
そう言って、私は────アイテムボックスの中から、何の変哲もない瓢箪を取り出した。
これは液体状のものなら、何でも無限に吸い込めるアイテム。容量制限のない水筒と思ってくれていい。
何かの景品で手に入れたアイテムだったが、売らずにアイテムボックスの中に放置……じゃなくて、大事に取っておいて良かった。
「全ての水を吸い上げるとまで行かずとも、水深を低くすることが出来れば大分戦いやすくなります。なので、徳正さんには時間稼ぎをお願いしたいんです」
「なるほどね~。そのための囮か~」
『敵のフィールドを作り替えるとは、なかなかいい発想だ』
「“縛り”さえなければ、あんな魔物瞬殺だもんねー!」
感心しきりといった様子で頷く三人に、私は頬を緩める。
彼らに褒められたことが、ただ嬉しくて。
「異論はなさそうですね?では、これより────“渦神カリュブディス”討伐作戦を開始します!」
水抵抗のせいで、勢いを殺されるから。
正直、物理特化パーティーの私達と水中魔物である“渦神カリュブディス”との相性は最悪。勝てる気がしない。
せめて、足場となる地面か宙を飛ぶ浮遊魔法があればなぁ……。
水中戦さえ避けられれば、大分有利になる……って、ちょっと待てよ?
“あれ”を使えば、水中戦を避けられるんじゃないか!?
「徳正さん!この前、使った────『グリュプスの笛』って、ありますか!?」
空中を自由に飛び回ることの出来るグリフォンが居れば、戦いはかなり楽になる。
少なくとも、水中に引きずり込まれて溺死する可能性は低くなる筈!
そんな私の考えを瞬時に見抜いたのか、徳正さんは表情を明るくした。
「もちろん、あるよ~。売っぱらっても良かったんだけど、きっとまたどこかで使う機会があると思ってさ~。取っておいたんだよね~」
「ナイス判断です、徳正さん!助かりました!」
「でしょでしょ~」
徳正さんは『ふふん!』と得意げに胸を反らし、アイテムボックスから取り出した角笛を自慢げに掲げる。
そして、『もっと褒めて』と言わんばかりにこちらへアイコンタクトを送ってきた。
が、私は華麗にスルー。
「ラーちゃんが俺っちに冷たい……」
『それは今に始まったことではない』
「あはははっ!徳正ってば、見事に振られたねー!」
シュンと肩を落とす徳正さんに、ラルカさんとシムナさんはまさかの追い討ちをかけた。
慰める気0である。
徳正さんを落ち込ませた私が言うのもなんだけど、ちょっと皆対応が雑じゃない?
もう少し愛を持って接してあげよう?
「まあ、徳正のことは置いといて……グリフォンを使ってどんな作戦を立てるわけー?」
『グリフォンは二人乗りの移動アイテムだ。どんなに詰めて座っても三人が限界だろう。誰か一人は待機することになるぞ』
「そうですね。全員乗ることは物理的に不可能です」
フロアボスとの戦いでは外部からの接触・横槍を防ぐため、部屋全体に結界が張られる。
結界外からは攻撃も出来なければ、仲間の支援も出来ない。
なので、一人だけ外に待機してこっそりサポートする……というのは無理だった。
『可能だったなら、支援職の私が外で待機するんだけど』と肩を竦め、熟考する。
どのようにメンバーを振り分けるか、を。
う~ん……本当はあまり気が進まないんだけど、確実性を狙うならこれしかないか。
「徳正さん、つかぬ事をお聞きしますが、水面を走ることって可能ですか?」
「ん~?水面~?走れるよ~。だって、俺っち忍者だもん~。でも、それがどうかした~?────って、まさか……」
「はい、その『まさか』です」
さすがは徳正さんと言うべきか、瞬時に私の思惑を見抜いたようだ。
『相変わらず、察しのいい人だな』と思いつつ、私は人差し指を立てる。
「徳正さんには────囮役をやってもらいます」
「『えっ!?』」
まさか私が仲間を囮として使うとは思わなかったのか、ラルカさんとシムナさんは驚きを隠し切れずにいた。
対する徳正さんは平然としているが。
私だって、出来れば仲間を囮に使いたくない。でも、今はこれしかないの。
それに徳正さんのスピードに、“渦神カリュブディス”が付いてくるとは思えないし。
水中なら話は別だが、徳正さんが走るのは水面。
水中に引きずり込まれないよう気をつければ、被害は出ないだろう。
「徳正さんが“渦神カリュブディス”を引き付けている間に、私達は“これ”を使ってボスフロアの水を吸い上げます」
そう言って、私は────アイテムボックスの中から、何の変哲もない瓢箪を取り出した。
これは液体状のものなら、何でも無限に吸い込めるアイテム。容量制限のない水筒と思ってくれていい。
何かの景品で手に入れたアイテムだったが、売らずにアイテムボックスの中に放置……じゃなくて、大事に取っておいて良かった。
「全ての水を吸い上げるとまで行かずとも、水深を低くすることが出来れば大分戦いやすくなります。なので、徳正さんには時間稼ぎをお願いしたいんです」
「なるほどね~。そのための囮か~」
『敵のフィールドを作り替えるとは、なかなかいい発想だ』
「“縛り”さえなければ、あんな魔物瞬殺だもんねー!」
感心しきりといった様子で頷く三人に、私は頬を緩める。
彼らに褒められたことが、ただ嬉しくて。
「異論はなさそうですね?では、これより────“渦神カリュブディス”討伐作戦を開始します!」
2
お気に入りに追加
378
あなたにおすすめの小説
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。
幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』
電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。
龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。
そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。
盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。
当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。
今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。
ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。
ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ
「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」
全員の目と口が弧を描いたのが見えた。
一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。
作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌()
15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

野草から始まる異世界スローライフ
深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。
私ーーエルバはスクスク育ち。
ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。
(このスキル使える)
エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。
エブリスタ様にて掲載中です。
表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。
プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。
物語は変わっておりません。
一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。
よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる