37 / 315
第二章
第36話『残党処理』
しおりを挟む
◇◆◇◆
「ほいっ、と……これで最後ー?」
「みたいですね」
ラルカさん達と無事合流した私達は現在、残党処理を行っていた。
徳正さんの影魔法で粗方片付けたとはいえ、全部倒せた訳ではないからね。
必ず何匹は生き延びている。
なので、魔物の発生源であるウエストダンジョンを目指しながら、周辺に居る魔物を狩っていた。
ウエストダンジョンに着いたら、上層の魔物も一定数まで減らさないと……。
あっ!でも、ダンジョンに潜るならリーダーにちゃんと報告しておいた方が良いよね。
何の断りもなく、ダンジョンに潜るのはマナー違反だ。特にデスゲームと化した今のFROでは……。
組織の基本は報告、連絡、相談だもの。
ゲーム内ディスプレイを呼び出した私はリーダーとの個人チャットを開き、文字を打つ。
「はぁー!なんかいい加減、雑魚処理飽きてきたー!」
『それは同感だ』
「ゴブリンなんて、相手にしてもつまんないよね~」
私を前後に挟んで会話する彼らは、オモチャに飽きた子供のような態度を取っている。
すっかりやる気をなくしたようで、武器だってもう仕舞っていた。
まあ、この化け物三人ならグーパン一発で倒せるもんね。
だからと言って、適当にされたら困るけど。
万が一、取りこぼしでもあったら洒落にならない。
でも、無理やりさせるのも可哀想だよね……単調作業って、人によっては苦痛に感じるだろうし。
はぁ……しょうがない。ここは私が一肌脱ぐか。
リーダーにメッセージを送信した私はゲーム内ディスプレイを閉じ、『ホースを呼ぶ笛』を取り出した。
「皆さんはどこかで休んでいてください。残党処理とウエストダンジョン上層魔物の処理は、私一人で行います」
下級魔物相手なら、回復師の私でも十分戦える。
アラクネさんから貰った猛毒を使えば、軽く無双出来るくらいだ。
見えてきたウエストダンジョンの入り口を見つめ、私は『わざわざ四人で行く必要なんてないよね』と考える。
「ナイトタイムまでには帰るので、野営の準備をお願いします。じゃあ、行ってき……」
「ちょ、ちょーっと待った!!」
「へっ……?」
今まさに笛を吹こうとしていた私に、『待った』を掛けたのは徳正さんだった。
私の手をギュッと掴み、前に躍り出た彼はいきなり足を止める。
なので、私も立ち止まることに。
どうしたんだろう?何か変なこと言ったっけ?
私は至極真っ当な意見を述べただけだけど……。
頭の中が『?』マークでいっぱいになる私を前に、徳正さんは大きく息を吐いた。
「いーい?ラーちゃんは女の子なの!しかも、攻撃力の低い回復師!そんな子をダンジョンに一人で行かせるなんて……出来る訳ないでしょ!!」
『僕も徳正と同意見だ。か弱い女の子を魔物の巣窟に放り込むなど、絶対に出来ない』
「僕は別に女とか気にしてないけど、君に万が一のことがあったらボスに怒られちゃうから、一人では行かせられないかなー」
「……お心遣いありがとうございます。でも────飽きたんですよね?」
さっきから残党が現れる度、気だるげにグーパン一発で処理してるし……。
まだちゃんと働いてくれるだけマシだが、無理に働かせたい訳ではない。
それに下級魔物程度で、大袈裟である。
『アレは初心者でも倒せるよう、プログラムされているんだから』と考える中、徳正さんは顔色を曇らせた。
「うっ!ま、まあ……その……確かに飽きたけど……」
『やる気がない訳ではないぞ。最後までやるさ』
「そーそー」
ラルカさんの意見に、シムナさんは『うんうん』と大きく頷いた。
ついでに徳正さんも。
まあ、そう言うならもう止めないけど……途中で『やっぱ、面倒くさい』『やりたくない』って言っても聞き入れないからね?
そこまで言ったからには、最後まで付き合ってもらうよ。
「分かりました。では、予定通り皆で行きましょう」
私は徳正さんに掴まれた腕をやんわりほどくと、『ホースを呼ぶ笛』をアイテムボックスに仕舞った。
すると、徳正さんは安心したように息を吐き出し、止まっていた足を動かし始める。
どうやら、私一人でウエストダンジョンに向かわせるのがよっぽど不安だったらしい。
徳正さんは出会った時から、やけに心配性だからなぁ……あんまり私を一人にさせたがらなかったし。
「あっ、そこにゴブリンが二匹居ます」
「りょーかーい。んじゃ、俺っちが行ってくるわ~」
数メートル先の茂みから出てきたゴブリンを見据え、徳正さんは地面を駆け抜ける。
そして、瞬きの間に距離を詰めると、回し蹴りで二匹とも片付けてしまった。瞬殺とはまさにこのこと。
「ただいま~!ねぇねぇ!ラーちゃん、今の見てた~?俺っち、格好良かったでしょ~?」
「ソウデスネー」
「何で棒読み!?俺っち、傷ついちゃう~」
「徳正さんはこの程度のことで傷つくほど、繊細な人じゃな……んっ?」
メソメソと泣き真似をする徳正さんに反論しようとするものの、それを遮るようにピロン♪と通知音が鳴る。
『なんだろう?』と思いながらゲーム内ディスプレイを呼び起こすと、私は直ぐさま通知画面に飛んだ。
「リーダーから、メッセージ……?」
さっきの報告に対する返信かな?でも、今は同盟会議の真っ最中の筈……。
急用でなければ、会議中にチャットを飛ばしてくるなんて有り得ない。
言葉では言い表せない胸騒ぎを感じつつ、私は恐る恐るリーダーとのチャット画面を開いた。
と同時に、大きく目を見開く。
「こ、れは……!?」
「ほいっ、と……これで最後ー?」
「みたいですね」
ラルカさん達と無事合流した私達は現在、残党処理を行っていた。
徳正さんの影魔法で粗方片付けたとはいえ、全部倒せた訳ではないからね。
必ず何匹は生き延びている。
なので、魔物の発生源であるウエストダンジョンを目指しながら、周辺に居る魔物を狩っていた。
ウエストダンジョンに着いたら、上層の魔物も一定数まで減らさないと……。
あっ!でも、ダンジョンに潜るならリーダーにちゃんと報告しておいた方が良いよね。
何の断りもなく、ダンジョンに潜るのはマナー違反だ。特にデスゲームと化した今のFROでは……。
組織の基本は報告、連絡、相談だもの。
ゲーム内ディスプレイを呼び出した私はリーダーとの個人チャットを開き、文字を打つ。
「はぁー!なんかいい加減、雑魚処理飽きてきたー!」
『それは同感だ』
「ゴブリンなんて、相手にしてもつまんないよね~」
私を前後に挟んで会話する彼らは、オモチャに飽きた子供のような態度を取っている。
すっかりやる気をなくしたようで、武器だってもう仕舞っていた。
まあ、この化け物三人ならグーパン一発で倒せるもんね。
だからと言って、適当にされたら困るけど。
万が一、取りこぼしでもあったら洒落にならない。
でも、無理やりさせるのも可哀想だよね……単調作業って、人によっては苦痛に感じるだろうし。
はぁ……しょうがない。ここは私が一肌脱ぐか。
リーダーにメッセージを送信した私はゲーム内ディスプレイを閉じ、『ホースを呼ぶ笛』を取り出した。
「皆さんはどこかで休んでいてください。残党処理とウエストダンジョン上層魔物の処理は、私一人で行います」
下級魔物相手なら、回復師の私でも十分戦える。
アラクネさんから貰った猛毒を使えば、軽く無双出来るくらいだ。
見えてきたウエストダンジョンの入り口を見つめ、私は『わざわざ四人で行く必要なんてないよね』と考える。
「ナイトタイムまでには帰るので、野営の準備をお願いします。じゃあ、行ってき……」
「ちょ、ちょーっと待った!!」
「へっ……?」
今まさに笛を吹こうとしていた私に、『待った』を掛けたのは徳正さんだった。
私の手をギュッと掴み、前に躍り出た彼はいきなり足を止める。
なので、私も立ち止まることに。
どうしたんだろう?何か変なこと言ったっけ?
私は至極真っ当な意見を述べただけだけど……。
頭の中が『?』マークでいっぱいになる私を前に、徳正さんは大きく息を吐いた。
「いーい?ラーちゃんは女の子なの!しかも、攻撃力の低い回復師!そんな子をダンジョンに一人で行かせるなんて……出来る訳ないでしょ!!」
『僕も徳正と同意見だ。か弱い女の子を魔物の巣窟に放り込むなど、絶対に出来ない』
「僕は別に女とか気にしてないけど、君に万が一のことがあったらボスに怒られちゃうから、一人では行かせられないかなー」
「……お心遣いありがとうございます。でも────飽きたんですよね?」
さっきから残党が現れる度、気だるげにグーパン一発で処理してるし……。
まだちゃんと働いてくれるだけマシだが、無理に働かせたい訳ではない。
それに下級魔物程度で、大袈裟である。
『アレは初心者でも倒せるよう、プログラムされているんだから』と考える中、徳正さんは顔色を曇らせた。
「うっ!ま、まあ……その……確かに飽きたけど……」
『やる気がない訳ではないぞ。最後までやるさ』
「そーそー」
ラルカさんの意見に、シムナさんは『うんうん』と大きく頷いた。
ついでに徳正さんも。
まあ、そう言うならもう止めないけど……途中で『やっぱ、面倒くさい』『やりたくない』って言っても聞き入れないからね?
そこまで言ったからには、最後まで付き合ってもらうよ。
「分かりました。では、予定通り皆で行きましょう」
私は徳正さんに掴まれた腕をやんわりほどくと、『ホースを呼ぶ笛』をアイテムボックスに仕舞った。
すると、徳正さんは安心したように息を吐き出し、止まっていた足を動かし始める。
どうやら、私一人でウエストダンジョンに向かわせるのがよっぽど不安だったらしい。
徳正さんは出会った時から、やけに心配性だからなぁ……あんまり私を一人にさせたがらなかったし。
「あっ、そこにゴブリンが二匹居ます」
「りょーかーい。んじゃ、俺っちが行ってくるわ~」
数メートル先の茂みから出てきたゴブリンを見据え、徳正さんは地面を駆け抜ける。
そして、瞬きの間に距離を詰めると、回し蹴りで二匹とも片付けてしまった。瞬殺とはまさにこのこと。
「ただいま~!ねぇねぇ!ラーちゃん、今の見てた~?俺っち、格好良かったでしょ~?」
「ソウデスネー」
「何で棒読み!?俺っち、傷ついちゃう~」
「徳正さんはこの程度のことで傷つくほど、繊細な人じゃな……んっ?」
メソメソと泣き真似をする徳正さんに反論しようとするものの、それを遮るようにピロン♪と通知音が鳴る。
『なんだろう?』と思いながらゲーム内ディスプレイを呼び起こすと、私は直ぐさま通知画面に飛んだ。
「リーダーから、メッセージ……?」
さっきの報告に対する返信かな?でも、今は同盟会議の真っ最中の筈……。
急用でなければ、会議中にチャットを飛ばしてくるなんて有り得ない。
言葉では言い表せない胸騒ぎを感じつつ、私は恐る恐るリーダーとのチャット画面を開いた。
と同時に、大きく目を見開く。
「こ、れは……!?」
2
お気に入りに追加
377
あなたにおすすめの小説
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
転移術士の成り上がり
名無し
ファンタジー
ベテランの転移術士であるシギルは、自分のパーティーをダンジョンから地上に無事帰還させる日々に至上の喜びを得ていた。ところが、あることがきっかけでメンバーから無能の烙印を押され、脱退を迫られる形になる。それがのちに陰謀だと知ったシギルは激怒し、パーティーに対する復讐計画を練って実行に移すことになるのだった。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?
桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」
その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。
影響するステータスは『運』。
聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。
第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。
すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。
より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!
真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。
【簡単な流れ】
勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ
【原題】
『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
【完結】異世界転移で、俺だけ魔法が使えない!
林檎茶
ファンタジー
俺だけ魔法が使えないとか、なんの冗談だ?
俺、相沢ワタルは平凡で一般的な高校二年生である。
成績は中の下。友達も少なく、誇れるような特技も趣味もこれといってない。
そんなつまらない日常は突如として幕を閉じた。
ようやく終わった担任の長話。喧騒に満ちた教室、いつもより浮き足立った放課後。
明日から待ちに待った春休みだというのに突然教室内が不気味な紅色の魔法陣で満ちたかと思えば、俺は十人のクラスメイトたちと共に異世界に転移してしまったのだ。
俺たちを召喚したのはリオーネと名乗る怪しい男。
そいつから魔法の存在を知らされたクラスメイトたちは次々に魔法の根源となる『紋章』を顕現させるが、俺の紋章だけは何故か魔法を使えない紋章、通称『死人の紋章』だった。
魔法という超常的な力に歓喜し興奮するクラスメイトたち。そいつらを見て嫉妬の感情をひた隠す俺。
そんな中クラスメイトの一人が使える魔法が『転移魔法』だと知るや否やリオーネの態度は急変した。
リオーネから危険を感じた俺たちは転移魔法を使っての逃亡を試みたが、不運にも俺はただ一人迷宮の最下層へと転移してしまう。
その先で邂逅した存在に、俺がこの異世界でやらなければならないことを突きつけられる。
挫折し、絶望し、苦悩した挙句、俺はなんとしてでも──『魔王』を倒すと決意する。
スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる