『魔王討伐クエスト』で役に立たないからと勇者パーティーに追い出された回復師は新たな仲間と無双する〜PK集団が英雄になるって、マジですか!?〜

あーもんど

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第二章

第36話『残党処理』

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◇◆◇◆

「ほいっ、と……これで最後ー?」

「みたいですね」

 ラルカさん達と無事合流した私達は現在、残党処理を行っていた。

 徳正さんの影魔法で粗方片付けたとはいえ、全部倒せた訳ではないからね。
必ず何匹は生き延びている。
なので、魔物モンスターの発生源であるウエストダンジョンを目指しながら、周辺に居る魔物を狩っていた。

 ウエストダンジョンに着いたら、上層の魔物モンスターも一定数まで減らさないと……。
あっ!でも、ダンジョンに潜るならリーダーにちゃんと報告しておいた方が良いよね。
何の断りもなく、ダンジョンに潜るのはマナー違反だ。特にデスゲームと化した今のFROでは……。
組織の基本は報告ほう連絡れん相談そうだもの。

 ゲーム内ディスプレイを呼び出した私はリーダーとの個人チャット個チャを開き、文字を打つ。

「はぁー!なんかいい加減、雑魚処理飽きてきたー!」

『それは同感だ』

「ゴブリンなんて、相手にしてもつまんないよね~」

 私を前後に挟んで会話する彼らは、オモチャに飽きた子供のような態度を取っている。
すっかりやる気をなくしたようで、武器だってもう仕舞っていた。

 まあ、この化け物三人ならグーパン一発で倒せるもんね。
だからと言って、適当にされたら困るけど。
万が一、取りこぼしでもあったら洒落にならない。
でも、無理やりさせるのも可哀想だよね……単調作業って、人によっては苦痛に感じるだろうし。
はぁ……しょうがない。ここは私が一肌脱ぐか。

 リーダーにメッセージを送信した私はゲーム内ディスプレイを閉じ、『ホースを呼ぶ笛』を取り出した。

「皆さんはどこかで休んでいてください。残党処理とウエストダンジョン上層魔物モンスターの処理は、私一人で行います」

 下級魔物モンスター相手なら、回復師ヒーラーの私でも十分戦える。
アラクネさんから貰った猛毒を使えば、軽く無双出来るくらいだ。

 見えてきたウエストダンジョンの入り口を見つめ、私は『わざわざ四人で行く必要なんてないよね』と考える。

「ナイトタイムまでには帰るので、野営の準備をお願いします。じゃあ、行ってき……」

「ちょ、ちょーっと待った!!」

「へっ……?」

 今まさに笛を吹こうとしていた私に、『待った』を掛けたのは徳正さんだった。
私の手をギュッと掴み、前に躍り出た彼はいきなり足を止める。
なので、私も立ち止まることに。

 どうしたんだろう?何か変なこと言ったっけ?
私は至極真っ当な意見を述べただけだけど……。

 頭の中が『?』マークでいっぱいになる私を前に、徳正さんは大きく息を吐いた。

「いーい?ラーちゃんは女の子なの!しかも、攻撃力の低い回復師ヒーラー!そんな子をダンジョンに一人で行かせるなんて……出来る訳ないでしょ!!」

『僕も徳正と同意見だ。か弱い女の子を魔物の巣窟に放り込むなど、絶対に出来ない』

「僕は別に女とか気にしてないけど、君に万が一のことがあったらボスに怒られちゃうから、一人では行かせられないかなー」

「……お心遣いありがとうございます。でも────飽きたんですよね?」

 さっきから残党が現れる度、気だるげにグーパン一発で処理してるし……。
まだちゃんと働いてくれるだけマシだが、無理に働かせたい訳ではない。
それに下級魔物モンスター程度で、大袈裟である。
『アレは初心者でも倒せるよう、プログラムされているんだから』と考える中、徳正さんは顔色を曇らせた。

「うっ!ま、まあ……その……確かに飽きたけど……」

『やる気がない訳ではないぞ。最後までやるさ』

「そーそー」

 ラルカさんの意見に、シムナさんは『うんうん』と大きく頷いた。
ついでに徳正さんも。

 まあ、そう言うならもう止めないけど……途中で『やっぱ、面倒くさい』『やりたくない』って言っても聞き入れないからね?
そこまで言ったからには、最後まで付き合ってもらうよ。

「分かりました。では、予定通り皆で行きましょう」

 私は徳正さんに掴まれた腕をやんわりほどくと、『ホースを呼ぶ笛』をアイテムボックスに仕舞った。
すると、徳正さんは安心したように息を吐き出し、止まっていた足を動かし始める。
どうやら、私一人でウエストダンジョンに向かわせるのがよっぽど不安だったらしい。

 徳正さんは出会った時から、やけに心配性だからなぁ……あんまり私を一人にさせたがらなかったし。

「あっ、そこにゴブリンが二匹居ます」

「りょーかーい。んじゃ、俺っちが行ってくるわ~」

 数メートル先の茂みから出てきたゴブリンを見据え、徳正さんは地面を駆け抜ける。
そして、瞬きの間に距離を詰めると、回し蹴りで二匹とも片付けてしまった。瞬殺とはまさにこのこと。

「ただいま~!ねぇねぇ!ラーちゃん、今の見てた~?俺っち、格好良かったでしょ~?」

「ソウデスネー」

「何で棒読み!?俺っち、傷ついちゃう~」

「徳正さんはこの程度のことで傷つくほど、繊細な人じゃな……んっ?」

 メソメソと泣き真似をする徳正さんに反論しようとするものの、それを遮るようにピロン♪と通知音が鳴る。
『なんだろう?』と思いながらゲーム内ディスプレイを呼び起こすと、私は直ぐさま通知画面に飛んだ。

「リーダーから、メッセージ……?」

 さっきの報告に対する返信かな?でも、今は同盟会議の真っ最中の筈……。
急用でなければ、会議中にチャットを飛ばしてくるなんて有り得ない。

 言葉では言い表せない胸騒ぎを感じつつ、私は恐る恐るリーダーとのチャット画面を開いた。
と同時に、大きく目を見開く。

「こ、れは……!?」
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