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第二章
第33話『好戦的な目』
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『サーペント』のアジトを後にした私達はスッドの森を抜け、道なき道を馬車で移動していた。
特に目的地もなく走り続けるため、気分は完全にドライブである。
「ねぇねぇ~、今日の夜どうする~?近くの街に宿でも取って、泊まる~?宿空いてるか知らないけど~」
馬車の手綱を握る徳正さんはこちらを振り返って、そう問いかけてきた。
すると、奥で寝ていたシムナさんが体を起こす。
「『どうする』って、そんなの野宿しかないんじゃなーい?」
『僕はそれで構わないが、女の子を外で寝かせるのには抵抗がある』
「あっ、私のことはどうかお気になさらず!野宿はさすがに初めてですが、問題ありません!」
「えっ?それって、つまりラーちゃんは俺っちと同衾しても構わないってこ……」
「違います」
「せめて最後まで言わせて~……」
フイッと視線を逸らす私の前で、徳正さんは残念そうに肩を竦める。
と同時に、前を向いた。
「まあ、とりあえず今日は野宿ってことで~。どこか野宿するのに、丁度いい場所を探そっか~」
「あっ!それなら、僕いいところ知ってるよー!今、地図のスクショをチャットに送るねー!」
『シムナがオススメする場所か……嫌な予感しかしないのは、僕だけだろうか?』
「大丈夫、大丈夫~。俺っちもかな~り嫌な予感してるから~」
「えー!?僕の信用度、低くないー?」
シムナさんは『二人とも、ひどーい!』と非難するものの、その表情は笑顔だ。
シムナさんって、本当によく笑う人だな。“狂笑の悪魔”と呼ばれるだけある。
などと考えながら、私は何の気なしに馬車の外へ視線を向けた。
その瞬間、大きく目を見開く。
だって、私の目に────
「あ、あれは……!?」
────魔物の群れが映っていたから。
種類は様々で、ゴブリンやオークなどの下級魔物がほとんど。
でも、なんせあの数だ。
目視できる範囲内だけでも、軽く五十体は居る。
魔物は基本ダンジョンから出てこない。そういう風にプログラムされているから。
でも、例外もある。
プレイヤーが魔物をダンジョンから故意に連れ出す事と魔物爆発だ。
────魔物爆発。
これは魔物がダンジョンから、溢れ返る現象のことを指す。
要するにダンジョンに収まらないくらい魔物が出現しちゃったって訳。
ただ、この現象に陥るのは上層の魔物だけ。
というのも、中層やボスフロアの魔物はフロアごとに生存出来る個体数が決まっているから。
また、倒してから復活するまでに少しラグがあった。
でも、上層にそんな制約はないため狩らなければずっと増え続ける。
今までは多くのプレイヤーが魔物を狩っていたためプログラムとの中和が取れていたが、街に引きこもるプレイヤーが増えた今、魔物を狩ってくれる存在が居ない。
このデスゲームが始まってから、もう一週間は経っている。
その間、誰もダンジョンに潜っていないとすれば……魔物爆発が起きても、おかしくない。
「皆さん、前方に魔物の群れが現れました。数は五十体以上。恐らく、魔物爆発が起きたものと思われます」
手短に状況を説明し、私は一人一人の顔をしっかり見る。
「特別強い魔物は居ませんが、とにかく数が多いです。どうしますか?」
「『どうしますか?』って、そんなの決まってるでしょ────一匹残らず、狩り尽くす。あんな雑魚相手に尻尾巻いて逃げるなんて、僕は御免だしー。それに最近体を動かしてなくて、なまっていたんだよねー。準備運動くらいには、なるかも♪」
クスクスと楽しそうに笑うシムナさんは、パパラチアサファイアの瞳をスッと細める。
その瞳は爛々としており、好戦的な目をしていた。
まあ、そう来るとは思っていたけど……まさか、即答とはね。それも、PK好きのシムナさんが。
プレイヤー以外には、興味ないのかと思っていた。
『ちょっと意外かも』と思いつつ、私は他二人に目を向ける。
武器に手を掛けて備える徳正さんとラルカさんの姿を見やり、小さく肩を竦めた。
全員やる気満々みたい。
まあ、あの集団を野放しにすれば街に被害が出るだろうし、今ここで叩くのもいいかもしれない。
街に魔物が現れたとなれば、よりプレイヤーの不安を煽る結果になるだろうから。
「分かりました。では、これより魔物の駆除作業に移ります。先行はシムナさんとラルカさんが、後方支援は私と徳正さんが行います。異論ありませんね?」
ガタガタと揺れる馬車の中で立ち上がった私は、コクリと頷く三人を一瞥する。
と同時に、アイテムボックスの中から杖を取り出した。
純白の光を放つソレを握り締め、私は前を向く。
「指揮は私が取ります。戦闘準備に入ってください」
特に目的地もなく走り続けるため、気分は完全にドライブである。
「ねぇねぇ~、今日の夜どうする~?近くの街に宿でも取って、泊まる~?宿空いてるか知らないけど~」
馬車の手綱を握る徳正さんはこちらを振り返って、そう問いかけてきた。
すると、奥で寝ていたシムナさんが体を起こす。
「『どうする』って、そんなの野宿しかないんじゃなーい?」
『僕はそれで構わないが、女の子を外で寝かせるのには抵抗がある』
「あっ、私のことはどうかお気になさらず!野宿はさすがに初めてですが、問題ありません!」
「えっ?それって、つまりラーちゃんは俺っちと同衾しても構わないってこ……」
「違います」
「せめて最後まで言わせて~……」
フイッと視線を逸らす私の前で、徳正さんは残念そうに肩を竦める。
と同時に、前を向いた。
「まあ、とりあえず今日は野宿ってことで~。どこか野宿するのに、丁度いい場所を探そっか~」
「あっ!それなら、僕いいところ知ってるよー!今、地図のスクショをチャットに送るねー!」
『シムナがオススメする場所か……嫌な予感しかしないのは、僕だけだろうか?』
「大丈夫、大丈夫~。俺っちもかな~り嫌な予感してるから~」
「えー!?僕の信用度、低くないー?」
シムナさんは『二人とも、ひどーい!』と非難するものの、その表情は笑顔だ。
シムナさんって、本当によく笑う人だな。“狂笑の悪魔”と呼ばれるだけある。
などと考えながら、私は何の気なしに馬車の外へ視線を向けた。
その瞬間、大きく目を見開く。
だって、私の目に────
「あ、あれは……!?」
────魔物の群れが映っていたから。
種類は様々で、ゴブリンやオークなどの下級魔物がほとんど。
でも、なんせあの数だ。
目視できる範囲内だけでも、軽く五十体は居る。
魔物は基本ダンジョンから出てこない。そういう風にプログラムされているから。
でも、例外もある。
プレイヤーが魔物をダンジョンから故意に連れ出す事と魔物爆発だ。
────魔物爆発。
これは魔物がダンジョンから、溢れ返る現象のことを指す。
要するにダンジョンに収まらないくらい魔物が出現しちゃったって訳。
ただ、この現象に陥るのは上層の魔物だけ。
というのも、中層やボスフロアの魔物はフロアごとに生存出来る個体数が決まっているから。
また、倒してから復活するまでに少しラグがあった。
でも、上層にそんな制約はないため狩らなければずっと増え続ける。
今までは多くのプレイヤーが魔物を狩っていたためプログラムとの中和が取れていたが、街に引きこもるプレイヤーが増えた今、魔物を狩ってくれる存在が居ない。
このデスゲームが始まってから、もう一週間は経っている。
その間、誰もダンジョンに潜っていないとすれば……魔物爆発が起きても、おかしくない。
「皆さん、前方に魔物の群れが現れました。数は五十体以上。恐らく、魔物爆発が起きたものと思われます」
手短に状況を説明し、私は一人一人の顔をしっかり見る。
「特別強い魔物は居ませんが、とにかく数が多いです。どうしますか?」
「『どうしますか?』って、そんなの決まってるでしょ────一匹残らず、狩り尽くす。あんな雑魚相手に尻尾巻いて逃げるなんて、僕は御免だしー。それに最近体を動かしてなくて、なまっていたんだよねー。準備運動くらいには、なるかも♪」
クスクスと楽しそうに笑うシムナさんは、パパラチアサファイアの瞳をスッと細める。
その瞳は爛々としており、好戦的な目をしていた。
まあ、そう来るとは思っていたけど……まさか、即答とはね。それも、PK好きのシムナさんが。
プレイヤー以外には、興味ないのかと思っていた。
『ちょっと意外かも』と思いつつ、私は他二人に目を向ける。
武器に手を掛けて備える徳正さんとラルカさんの姿を見やり、小さく肩を竦めた。
全員やる気満々みたい。
まあ、あの集団を野放しにすれば街に被害が出るだろうし、今ここで叩くのもいいかもしれない。
街に魔物が現れたとなれば、よりプレイヤーの不安を煽る結果になるだろうから。
「分かりました。では、これより魔物の駆除作業に移ります。先行はシムナさんとラルカさんが、後方支援は私と徳正さんが行います。異論ありませんね?」
ガタガタと揺れる馬車の中で立ち上がった私は、コクリと頷く三人を一瞥する。
と同時に、アイテムボックスの中から杖を取り出した。
純白の光を放つソレを握り締め、私は前を向く。
「指揮は私が取ります。戦闘準備に入ってください」
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