34 / 315
第二章
第33話『好戦的な目』
しおりを挟む
『サーペント』のアジトを後にした私達はスッドの森を抜け、道なき道を馬車で移動していた。
特に目的地もなく走り続けるため、気分は完全にドライブである。
「ねぇねぇ~、今日の夜どうする~?近くの街に宿でも取って、泊まる~?宿空いてるか知らないけど~」
馬車の手綱を握る徳正さんはこちらを振り返って、そう問いかけてきた。
すると、奥で寝ていたシムナさんが体を起こす。
「『どうする』って、そんなの野宿しかないんじゃなーい?」
『僕はそれで構わないが、女の子を外で寝かせるのには抵抗がある』
「あっ、私のことはどうかお気になさらず!野宿はさすがに初めてですが、問題ありません!」
「えっ?それって、つまりラーちゃんは俺っちと同衾しても構わないってこ……」
「違います」
「せめて最後まで言わせて~……」
フイッと視線を逸らす私の前で、徳正さんは残念そうに肩を竦める。
と同時に、前を向いた。
「まあ、とりあえず今日は野宿ってことで~。どこか野宿するのに、丁度いい場所を探そっか~」
「あっ!それなら、僕いいところ知ってるよー!今、地図のスクショをチャットに送るねー!」
『シムナがオススメする場所か……嫌な予感しかしないのは、僕だけだろうか?』
「大丈夫、大丈夫~。俺っちもかな~り嫌な予感してるから~」
「えー!?僕の信用度、低くないー?」
シムナさんは『二人とも、ひどーい!』と非難するものの、その表情は笑顔だ。
シムナさんって、本当によく笑う人だな。“狂笑の悪魔”と呼ばれるだけある。
などと考えながら、私は何の気なしに馬車の外へ視線を向けた。
その瞬間、大きく目を見開く。
だって、私の目に────
「あ、あれは……!?」
────魔物の群れが映っていたから。
種類は様々で、ゴブリンやオークなどの下級魔物がほとんど。
でも、なんせあの数だ。
目視できる範囲内だけでも、軽く五十体は居る。
魔物は基本ダンジョンから出てこない。そういう風にプログラムされているから。
でも、例外もある。
プレイヤーが魔物をダンジョンから故意に連れ出す事と魔物爆発だ。
────魔物爆発。
これは魔物がダンジョンから、溢れ返る現象のことを指す。
要するにダンジョンに収まらないくらい魔物が出現しちゃったって訳。
ただ、この現象に陥るのは上層の魔物だけ。
というのも、中層やボスフロアの魔物はフロアごとに生存出来る個体数が決まっているから。
また、倒してから復活するまでに少しラグがあった。
でも、上層にそんな制約はないため狩らなければずっと増え続ける。
今までは多くのプレイヤーが魔物を狩っていたためプログラムとの中和が取れていたが、街に引きこもるプレイヤーが増えた今、魔物を狩ってくれる存在が居ない。
このデスゲームが始まってから、もう一週間は経っている。
その間、誰もダンジョンに潜っていないとすれば……魔物爆発が起きても、おかしくない。
「皆さん、前方に魔物の群れが現れました。数は五十体以上。恐らく、魔物爆発が起きたものと思われます」
手短に状況を説明し、私は一人一人の顔をしっかり見る。
「特別強い魔物は居ませんが、とにかく数が多いです。どうしますか?」
「『どうしますか?』って、そんなの決まってるでしょ────一匹残らず、狩り尽くす。あんな雑魚相手に尻尾巻いて逃げるなんて、僕は御免だしー。それに最近体を動かしてなくて、なまっていたんだよねー。準備運動くらいには、なるかも♪」
クスクスと楽しそうに笑うシムナさんは、パパラチアサファイアの瞳をスッと細める。
その瞳は爛々としており、好戦的な目をしていた。
まあ、そう来るとは思っていたけど……まさか、即答とはね。それも、PK好きのシムナさんが。
プレイヤー以外には、興味ないのかと思っていた。
『ちょっと意外かも』と思いつつ、私は他二人に目を向ける。
武器に手を掛けて備える徳正さんとラルカさんの姿を見やり、小さく肩を竦めた。
全員やる気満々みたい。
まあ、あの集団を野放しにすれば街に被害が出るだろうし、今ここで叩くのもいいかもしれない。
街に魔物が現れたとなれば、よりプレイヤーの不安を煽る結果になるだろうから。
「分かりました。では、これより魔物の駆除作業に移ります。先行はシムナさんとラルカさんが、後方支援は私と徳正さんが行います。異論ありませんね?」
ガタガタと揺れる馬車の中で立ち上がった私は、コクリと頷く三人を一瞥する。
と同時に、アイテムボックスの中から杖を取り出した。
純白の光を放つソレを握り締め、私は前を向く。
「指揮は私が取ります。戦闘準備に入ってください」
特に目的地もなく走り続けるため、気分は完全にドライブである。
「ねぇねぇ~、今日の夜どうする~?近くの街に宿でも取って、泊まる~?宿空いてるか知らないけど~」
馬車の手綱を握る徳正さんはこちらを振り返って、そう問いかけてきた。
すると、奥で寝ていたシムナさんが体を起こす。
「『どうする』って、そんなの野宿しかないんじゃなーい?」
『僕はそれで構わないが、女の子を外で寝かせるのには抵抗がある』
「あっ、私のことはどうかお気になさらず!野宿はさすがに初めてですが、問題ありません!」
「えっ?それって、つまりラーちゃんは俺っちと同衾しても構わないってこ……」
「違います」
「せめて最後まで言わせて~……」
フイッと視線を逸らす私の前で、徳正さんは残念そうに肩を竦める。
と同時に、前を向いた。
「まあ、とりあえず今日は野宿ってことで~。どこか野宿するのに、丁度いい場所を探そっか~」
「あっ!それなら、僕いいところ知ってるよー!今、地図のスクショをチャットに送るねー!」
『シムナがオススメする場所か……嫌な予感しかしないのは、僕だけだろうか?』
「大丈夫、大丈夫~。俺っちもかな~り嫌な予感してるから~」
「えー!?僕の信用度、低くないー?」
シムナさんは『二人とも、ひどーい!』と非難するものの、その表情は笑顔だ。
シムナさんって、本当によく笑う人だな。“狂笑の悪魔”と呼ばれるだけある。
などと考えながら、私は何の気なしに馬車の外へ視線を向けた。
その瞬間、大きく目を見開く。
だって、私の目に────
「あ、あれは……!?」
────魔物の群れが映っていたから。
種類は様々で、ゴブリンやオークなどの下級魔物がほとんど。
でも、なんせあの数だ。
目視できる範囲内だけでも、軽く五十体は居る。
魔物は基本ダンジョンから出てこない。そういう風にプログラムされているから。
でも、例外もある。
プレイヤーが魔物をダンジョンから故意に連れ出す事と魔物爆発だ。
────魔物爆発。
これは魔物がダンジョンから、溢れ返る現象のことを指す。
要するにダンジョンに収まらないくらい魔物が出現しちゃったって訳。
ただ、この現象に陥るのは上層の魔物だけ。
というのも、中層やボスフロアの魔物はフロアごとに生存出来る個体数が決まっているから。
また、倒してから復活するまでに少しラグがあった。
でも、上層にそんな制約はないため狩らなければずっと増え続ける。
今までは多くのプレイヤーが魔物を狩っていたためプログラムとの中和が取れていたが、街に引きこもるプレイヤーが増えた今、魔物を狩ってくれる存在が居ない。
このデスゲームが始まってから、もう一週間は経っている。
その間、誰もダンジョンに潜っていないとすれば……魔物爆発が起きても、おかしくない。
「皆さん、前方に魔物の群れが現れました。数は五十体以上。恐らく、魔物爆発が起きたものと思われます」
手短に状況を説明し、私は一人一人の顔をしっかり見る。
「特別強い魔物は居ませんが、とにかく数が多いです。どうしますか?」
「『どうしますか?』って、そんなの決まってるでしょ────一匹残らず、狩り尽くす。あんな雑魚相手に尻尾巻いて逃げるなんて、僕は御免だしー。それに最近体を動かしてなくて、なまっていたんだよねー。準備運動くらいには、なるかも♪」
クスクスと楽しそうに笑うシムナさんは、パパラチアサファイアの瞳をスッと細める。
その瞳は爛々としており、好戦的な目をしていた。
まあ、そう来るとは思っていたけど……まさか、即答とはね。それも、PK好きのシムナさんが。
プレイヤー以外には、興味ないのかと思っていた。
『ちょっと意外かも』と思いつつ、私は他二人に目を向ける。
武器に手を掛けて備える徳正さんとラルカさんの姿を見やり、小さく肩を竦めた。
全員やる気満々みたい。
まあ、あの集団を野放しにすれば街に被害が出るだろうし、今ここで叩くのもいいかもしれない。
街に魔物が現れたとなれば、よりプレイヤーの不安を煽る結果になるだろうから。
「分かりました。では、これより魔物の駆除作業に移ります。先行はシムナさんとラルカさんが、後方支援は私と徳正さんが行います。異論ありませんね?」
ガタガタと揺れる馬車の中で立ち上がった私は、コクリと頷く三人を一瞥する。
と同時に、アイテムボックスの中から杖を取り出した。
純白の光を放つソレを握り締め、私は前を向く。
「指揮は私が取ります。戦闘準備に入ってください」
2
お気に入りに追加
378
あなたにおすすめの小説
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。
幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』
電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。
龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。
そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。
盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。
当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。
今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。
ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。
ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ
「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」
全員の目と口が弧を描いたのが見えた。
一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。
作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌()
15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

野草から始まる異世界スローライフ
深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。
私ーーエルバはスクスク育ち。
ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。
(このスキル使える)
エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。
エブリスタ様にて掲載中です。
表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。
プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。
物語は変わっておりません。
一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。
よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる