『魔王討伐クエスト』で役に立たないからと勇者パーティーに追い出された回復師は新たな仲間と無双する〜PK集団が英雄になるって、マジですか!?〜

あーもんど

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第一章

第29話『戦闘開始』

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「────断る!返してほしければ、力づくで奪いに来い!」

 声高々にそう言ってのけると、スネークは私達を挑発するようにニヤリと口角を上げた。

 あれま……徳正さんの要求を断っちゃったか。
出来れば、穏便に済ませたかったんだけど……仕方ないな。

「ふふっ。そう来なくっちゃね~。久々に大暴れしちゃおっか~!」

『そうだな。殲滅させてもらおう』

「言っておきますけど、PKはダメですからね!あくまで、No.6さんの奪還が目的なんですから!」

「分かってるよ~。あっ、ラーちゃんは俺っちの傍から極力離れないでね~。フォロー出来る位置に居て~」

『ラミエルのことは頼んだ。僕は前線に出る』

 徳正さんとラルカさんはそれぞれ武器を手に持つと、地下に居る敵を見下ろした。

 私の役割は徳正さんと共に、ラルカさんのやり損ねた残党を殲滅すること。

 瞬時にそう理解した私はゆっくりと立ち上がり、足の踏み場もないほど人の密集した地下空間に苦笑を漏らす。
どうやら、私達が会話を交わしている間にスネークが仲間を呼び寄せたらしい。

「あれじゃ、動きづらいでしょ~」

「戦闘配置に問題ありですね」

『何でもいい。とりあえず、僕は先に行かせてもらう』

「ほーい。気をつけてね~」

「ご武運を」

 ホワイトボードをアイテムボックスに収納したラルカさんは、私達の言葉に軽く頷き────地下に降り立った。
ハシゴを使わなかったのは、隙を見せないためだろう。
『降り方にもよるけど、背中がガラ空きになるもんね』と考える中、ラルカさんは敵の顔面を踏みつける。
と同時に、ジャンプして鎌を振るった。
たった一振りで竜巻すら起こすソレは、目前の敵を一気に蹴散らす。
直接鎌で攻撃しないのは、己のATKの高さを自覚しているからだろう。

「それにしても……爽快ですね、これ」

「ね~。どんどん敵が片付いて行くから、見てて気持ちいい~」

 敵の顔や肩を踏みつけ、ジャンプする度に大鎌を振るうラルカさんの姿に、私達は目を細める。
『もう敵の七割を片付けちゃったよ』と感心する私達を前に、スネークは呆然とした表情を浮かべていた。
まさか、こんなに強いとは思わなかったらしい。

 ラルカさんが実際に戦っているところは初めて見たけど、凄い……。
敵の不意打ちにも焦らず対処してるし、人数の多さにビビる様子もない。
息をするかのように簡単そうに敵を蹴散らす姿は、まさに死神……。

「ラルカ~、後は俺っち達がやるから先行っていいよ~。No.6のことは、よろしくね~ん」

 出入口付近に集まった敵の約八割を倒したラルカさんに、徳正さんは声をかけた。
『行け行け!ゴーゴー!』と言わんばかりに手を振り、送り出す彼に、ラルカさんはコクリと頷く。
そして周囲の敵を一旦薙ぎ倒すと、残党をそのままに前へ進んだ。
間もなくして、ラルカさんの背中は見えなくなる。
『本当に早いな~』と苦笑していると、徳正さんが私を小脇に抱えた。

「えっ?あの……?」

「んじゃ、俺っち達も下に降りますか~」

「いや、あの……私、自分で降りれ……ぅお!?」

 私の反対意見をスルーし、徳正さんは何の合図もなく地下に降り立つ。
私を小脇に抱えたまま……。
幸い、下に敵という名のクッションがあったため、振動はあまり伝わって来なかったが、肝を冷やしたのは言うまでもない。
せめて、合図くらいはほしかった。

「……徳正さんは後で説教です」

「えっ!?嘘っ!?」

「本当です。というか、もうそろそろ降ろしてください」

 当然かのように私を小脇に抱えたまま歩いているけど、結構これ辛いんだからね!
それにこの状態じゃ、お互いに戦いにくいじゃない!

「んも~!分かったよ、降ろすって~。あーあ、これなら合法的にラーちゃんにさわれると思っ……いたっ!?」

 心底嫌そうに……本当に仕方なさそうに私を降ろしたかと思えば……!それ、ただのセクハラじゃん!

 徳正さんの横腹を思い切り肘で突いた私は、ギロリと睨みつける。

「次、セクハラしたら毒針で刺します」

「す、すみませんでした……」

 分かれば、よろしい!

 アイテムボックスから取り出した毒針を一旦下ろし、私は『ふんっ!』と鼻を鳴らした。

「……俺様はなんつーものを見せられてんだ?夫婦漫才なら、他所でやっ……」

「夫婦じゃありません!お見苦しい姿を見せたことは謝りますが、決して……決して!私と徳正さんは、夫婦なんかじゃありません!」

「ラーちゃん……そこまで全力で否定しなくても……」

 夫婦というキーワードを全力で否定する私に、徳正さんはグスンと鼻を鳴らす。
また、セレンディバイトの瞳にはうっすらと涙が滲んでいた。

 えっ?ちょっ……!?ガチ泣き!?ま、待って……!そんな泣くなんて思わな……

「────チッ!今なら行けると思ったんだけどなぁ」

「甘く見ないでほしいね~。ていうか、ラーちゃんを背後から襲うとか覚悟出来てんの~?」

 すぐ後ろでキンッという金属音がしたかと思うと、私は徳正さんに抱き寄せられていた。
訳が分からず後ろを振り向けば、スネークのナイフを暗器で受け止める徳正さんの腕が目に入る。

 な、にが……?

 辛うじて守ってくれたことは分かるものの、イマイチ状況を掴めずにいた。
目を白黒させる私の前で、徳正さんは至って簡単そうにスネークのナイフを暗器で押しのける。
と同時に、片手で私を抱き上げ、素早く距離を取った。

 スネークも高レベルプレイヤーの筈なのに、徳正さんは私を庇いながらきちんと戦えている。
前々から強い強いとは思ってたけど、まさかここまでとは……さすが、ランカー。

 職業別ランキング第一位の徳正さんは、FRO発売開始からずっと一位を守っている。
未だ嘗て、彼を抜かせた者は一人も居ない。
改めて、自分の傍に居る彼は凄い人物なのだと再認識した。

「さてさて~、うちの可愛いラーちゃんを襲おうとした落とし前────つけてもらおうか~?」

 私を抱っこしたまま暗器を構える徳正さんは、セレンディバイトの瞳に明らかな殺意を滲ませた。
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