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第一章
第22話『No.1とNo.3』
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ラルカさんと合流してから二日ほど経過した頃、リーダーとNo.3さんから連絡が入った。
なんでも、二人とも今日到着するとのこと。
また、こちらに来る途中でリーダーとNo.3さんは合流したらしく、お出迎えも必要ないと言われた。
となると、残るメンバーはNo.6さんだけか。
そういえば、全く連絡が来てないけど……大丈夫かな?
「えー!?また俺っちの負けー!?」
「そ、そうみたいですね!」
『ドンマイだ』
「そんな~!」
手元にあるトランプをバッと放り投げ、徳正さんは悔しそうに畳を叩いた。
それらのトランプを素早く回収し、ラルカさんはシャッフルを始める。
細かい作業に向かない着ぐるみの手で。
『本当、器用な人だな』と思いつつ、私は顔を上げた。
暇潰しにアラクネさんの作ったトランプで大富豪をしているが、さっきからずっと徳正さんは負けてばかり。
対する私はさっきの試合で大富豪……つまり、一位を勝ち取っていた。
「ラーちゃん、次やろ~!次は絶対俺っちが勝つからさ~」
「ふふっ。それ、さっきも言ってましたよ?」
『次は勝つ!』と豪語しては玉砕する徳正さんをずっと見てきたせいか、私はついツッコミを入れてしまう。
すると、徳正さんはこれ見よがしに胸を押さえた。
「うっ……!そこは突っ込まないお約束でしょ~!」
「ふふふっ。すみません」
口元を押さえて窓辺から立ち上がり、私は徳正さんの隣に腰を下ろした。
と同時に、配られた手札を確認する。
『あっ、結構強いかも』と頬を緩める私の隣で、徳正さんはサァーッと青ざめていた。
────それから二時間ほどトランプで遊び、徳正さんの心が折れたところで一旦休憩を挟んだ。
さすがに可哀想すぎて。
部屋の隅っこで丸くなる徳正さんを見やり、私は一つ息を吐く。
「と、徳正さん?そんなに落ち込まないでくださいよ。たかが十二回負けただけじゃないですか」
「……ラーちゃん、慰めてくれるのは嬉しいけど十二回は『たかが』と言える数じゃないよ……」
「……」
『た、確かに……』と納得してしまい、私は押し黙る。
ど、どうしよう……?なんて言えばいい?
というか、徳正さんってこんなに負けず嫌いだったっけ……?
いつも飄々としているから、そんなの気にしないタイプかと思っていた。
「と、徳正さん、元気を出してください。いつまで、落ち込んでいるんですか?」
「うぅ……だって……」
「『だって』じゃありません!ほら、もうすぐリーダーとNo.3さんが来ますよ?だから……」
「────私達がどうかしたの?」
こ、この声は……!?
聞き覚えのあるソプラノボイスにつられるまま、私は後ろを振り向いた。
すると、そこには────茶髪の女性と銀髪の男性の姿が。
「No.3さん!それにリーダーも……!」
「久しぶりね、ラミエルちゃん」
クスリと大人っぽい笑みを漏らし、上品に笑うこの女性はNo.3さん────改め、魔法使いのヴィエラさん。
色素の薄い伽羅色のカールがかった髪に、赤にも似たマゼンダの瞳を持っている。
また、色白でスタイルもよく、露出の多い服を身に纏っていた。
そのせいか、大きい胸が強調されていて……女性の私でもドキドキしてしまう。
口元にあるホクロもセクシーだし。
まさに大人の女性そのもの。
そんな彼女は周囲から、“アザミの魔女”と呼ばれていた。
その由来はアザミの花言葉にある────『報復』から、来ている。
何故なら、ヴィエラさんは基本的にPKをしない人だから。
普段は大多数のプレイヤーと同じようにダンジョンに潜っている。
でも────仲間を傷付けられたと知れば、その美しい顔は般若に変わり、圧倒的な力で敵を蹴散らすと言う……。
だから、“アザミの魔女”と恐れられているのだ。
私はヴィエラさんのキレたところを見たことないから何とも言えないけど、徳正さん曰く────『虐殺の紅月』である意味、一番怖いらしい。
なので、絶対怒らせないようにしないと。
────と決意する中、不意に頭をポンッと撫でられた。
「────ラミエル、大変だったな」
そう言って、私の隣に並んだのは銀髪碧眼の美丈夫だった。
銀のプレートに身を包む彼は、No.1さん────改めリーダー。名前はない。
というのも、プレイヤーネームが空白だから。
なので、周囲からは『名無し』とか『無名』って呼ばれていた。
私達『虐殺の紅月』のメンバーも、それぞれ好きに呼んでいるし。
『徳正さんだったら、主君とかね』と思い返す中、リーダーは肩まである銀髪を揺らし、顔を覗き込んでくる。
そして、紺に近いピーターサイトの瞳に私を映し出すと、僅かに口元を緩めた。
普段は全くと言っていいほど、笑わないのに。
「『サムヒーロー』からは、俺達が守る。だから、安心してここに居ろ」
以前アラクネさんに『サムヒーロー』の件を明かしてから、私は直ぐにグルチャでそのことを話した。
隠し通せるとは思えなかったし、何より凄く後ろめたかったから。
あの時、リーダーは何も言ってくれなかったけど、私のことを邪魔だと思っている訳じゃなかったんだ……。
ちゃんと気に掛けてくれたことに気づき、私は胸がいっぱいになる。
「っ……!」
「!?────ラーちゃん!?どうしたの!?主君になんか嫌なことでも、言われた!?」
焦ったような表情を浮かべる徳正さんに、私は何も言えなかった。
喋ろうにも、喉に何かが張り付いたみたいに声を出せなくて……。
ただポロポロと涙を零すことしか出来ない私を、リーダーは柔らかい表情で見つめていた。
対する徳正さんは何がなんだか分からない様子だが……。
「ちょっと、主君!ラーちゃんに何言ったの!?」
慌てて立ち上がった徳正さんはこちらに駆け寄り、私の肩を抱き寄せる。
どことなく張り詰めた空気が流れる中、リーダーは小さく肩を竦めた。
「何でもいいだろ。お前には、関係ない」
「なっ!?関係あるから!俺っちはラーちゃんの教育係だもん!」
「キャンキャン吠えるな、うるさいぞ」
「なら、ラーちゃんに何言ったのか早く教えてよ!!」
ギャーギャーと言い合いを始めたリーダーと徳正さんに、ヴィエラさんは苦笑を漏らす。
『全く、もう……』と呆れながら仲裁に入り、二人を窘めた。
見た目だけでなく中身も大人っぽいヴィエラさんの対応に、私は心の中で感謝する。
元はと言えば、紛らわしい反応をした私が悪いから。
でも、今回ばかりは見逃してほしい。
また捨てられるかもしれない恐怖から解き放たれて、凄くホッとしたんだもん。
なんでも、二人とも今日到着するとのこと。
また、こちらに来る途中でリーダーとNo.3さんは合流したらしく、お出迎えも必要ないと言われた。
となると、残るメンバーはNo.6さんだけか。
そういえば、全く連絡が来てないけど……大丈夫かな?
「えー!?また俺っちの負けー!?」
「そ、そうみたいですね!」
『ドンマイだ』
「そんな~!」
手元にあるトランプをバッと放り投げ、徳正さんは悔しそうに畳を叩いた。
それらのトランプを素早く回収し、ラルカさんはシャッフルを始める。
細かい作業に向かない着ぐるみの手で。
『本当、器用な人だな』と思いつつ、私は顔を上げた。
暇潰しにアラクネさんの作ったトランプで大富豪をしているが、さっきからずっと徳正さんは負けてばかり。
対する私はさっきの試合で大富豪……つまり、一位を勝ち取っていた。
「ラーちゃん、次やろ~!次は絶対俺っちが勝つからさ~」
「ふふっ。それ、さっきも言ってましたよ?」
『次は勝つ!』と豪語しては玉砕する徳正さんをずっと見てきたせいか、私はついツッコミを入れてしまう。
すると、徳正さんはこれ見よがしに胸を押さえた。
「うっ……!そこは突っ込まないお約束でしょ~!」
「ふふふっ。すみません」
口元を押さえて窓辺から立ち上がり、私は徳正さんの隣に腰を下ろした。
と同時に、配られた手札を確認する。
『あっ、結構強いかも』と頬を緩める私の隣で、徳正さんはサァーッと青ざめていた。
────それから二時間ほどトランプで遊び、徳正さんの心が折れたところで一旦休憩を挟んだ。
さすがに可哀想すぎて。
部屋の隅っこで丸くなる徳正さんを見やり、私は一つ息を吐く。
「と、徳正さん?そんなに落ち込まないでくださいよ。たかが十二回負けただけじゃないですか」
「……ラーちゃん、慰めてくれるのは嬉しいけど十二回は『たかが』と言える数じゃないよ……」
「……」
『た、確かに……』と納得してしまい、私は押し黙る。
ど、どうしよう……?なんて言えばいい?
というか、徳正さんってこんなに負けず嫌いだったっけ……?
いつも飄々としているから、そんなの気にしないタイプかと思っていた。
「と、徳正さん、元気を出してください。いつまで、落ち込んでいるんですか?」
「うぅ……だって……」
「『だって』じゃありません!ほら、もうすぐリーダーとNo.3さんが来ますよ?だから……」
「────私達がどうかしたの?」
こ、この声は……!?
聞き覚えのあるソプラノボイスにつられるまま、私は後ろを振り向いた。
すると、そこには────茶髪の女性と銀髪の男性の姿が。
「No.3さん!それにリーダーも……!」
「久しぶりね、ラミエルちゃん」
クスリと大人っぽい笑みを漏らし、上品に笑うこの女性はNo.3さん────改め、魔法使いのヴィエラさん。
色素の薄い伽羅色のカールがかった髪に、赤にも似たマゼンダの瞳を持っている。
また、色白でスタイルもよく、露出の多い服を身に纏っていた。
そのせいか、大きい胸が強調されていて……女性の私でもドキドキしてしまう。
口元にあるホクロもセクシーだし。
まさに大人の女性そのもの。
そんな彼女は周囲から、“アザミの魔女”と呼ばれていた。
その由来はアザミの花言葉にある────『報復』から、来ている。
何故なら、ヴィエラさんは基本的にPKをしない人だから。
普段は大多数のプレイヤーと同じようにダンジョンに潜っている。
でも────仲間を傷付けられたと知れば、その美しい顔は般若に変わり、圧倒的な力で敵を蹴散らすと言う……。
だから、“アザミの魔女”と恐れられているのだ。
私はヴィエラさんのキレたところを見たことないから何とも言えないけど、徳正さん曰く────『虐殺の紅月』である意味、一番怖いらしい。
なので、絶対怒らせないようにしないと。
────と決意する中、不意に頭をポンッと撫でられた。
「────ラミエル、大変だったな」
そう言って、私の隣に並んだのは銀髪碧眼の美丈夫だった。
銀のプレートに身を包む彼は、No.1さん────改めリーダー。名前はない。
というのも、プレイヤーネームが空白だから。
なので、周囲からは『名無し』とか『無名』って呼ばれていた。
私達『虐殺の紅月』のメンバーも、それぞれ好きに呼んでいるし。
『徳正さんだったら、主君とかね』と思い返す中、リーダーは肩まである銀髪を揺らし、顔を覗き込んでくる。
そして、紺に近いピーターサイトの瞳に私を映し出すと、僅かに口元を緩めた。
普段は全くと言っていいほど、笑わないのに。
「『サムヒーロー』からは、俺達が守る。だから、安心してここに居ろ」
以前アラクネさんに『サムヒーロー』の件を明かしてから、私は直ぐにグルチャでそのことを話した。
隠し通せるとは思えなかったし、何より凄く後ろめたかったから。
あの時、リーダーは何も言ってくれなかったけど、私のことを邪魔だと思っている訳じゃなかったんだ……。
ちゃんと気に掛けてくれたことに気づき、私は胸がいっぱいになる。
「っ……!」
「!?────ラーちゃん!?どうしたの!?主君になんか嫌なことでも、言われた!?」
焦ったような表情を浮かべる徳正さんに、私は何も言えなかった。
喋ろうにも、喉に何かが張り付いたみたいに声を出せなくて……。
ただポロポロと涙を零すことしか出来ない私を、リーダーは柔らかい表情で見つめていた。
対する徳正さんは何がなんだか分からない様子だが……。
「ちょっと、主君!ラーちゃんに何言ったの!?」
慌てて立ち上がった徳正さんはこちらに駆け寄り、私の肩を抱き寄せる。
どことなく張り詰めた空気が流れる中、リーダーは小さく肩を竦めた。
「何でもいいだろ。お前には、関係ない」
「なっ!?関係あるから!俺っちはラーちゃんの教育係だもん!」
「キャンキャン吠えるな、うるさいぞ」
「なら、ラーちゃんに何言ったのか早く教えてよ!!」
ギャーギャーと言い合いを始めたリーダーと徳正さんに、ヴィエラさんは苦笑を漏らす。
『全く、もう……』と呆れながら仲裁に入り、二人を窘めた。
見た目だけでなく中身も大人っぽいヴィエラさんの対応に、私は心の中で感謝する。
元はと言えば、紛らわしい反応をした私が悪いから。
でも、今回ばかりは見逃してほしい。
また捨てられるかもしれない恐怖から解き放たれて、凄くホッとしたんだもん。
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