『魔王討伐クエスト』で役に立たないからと勇者パーティーに追い出された回復師は新たな仲間と無双する〜PK集団が英雄になるって、マジですか!?〜

あーもんど

文字の大きさ
上 下
21 / 315
第一章

第20話『No.4』

しおりを挟む
 それから、三日ほど経ったある日のこと────No.4さんから、連絡が入った。
なんでも、今日の夜にはリユニオンタウンに到着するらしい。
それで、お出迎え……というか、宿屋への道案内をお願いしたいんだとか。

「ねぇねぇ、No.4のお出迎えどうする~?俺っちが行ってこようか~?人混み、結構酷いし~」

 No.4さんからのメッセージを読み終えるなり、旅館の浴衣に着替えた徳正さんはそう提案してきた。

 確かにお出迎えに一番最適なのは徳正さんだけど、最近ずっと頼りっぱなしだからなぁ……。
出来れば、こちらで引き受けたい……けど、すぐ迷子になる私やアラクネさんがお出迎えに行っても意味ないし……あっ!そうだ!

「ここは皆仲良く一緒に行きましょう!」

 徳正さんの負担を減らすことは出来ないが、皆で出迎えに行けば誰かに負担が偏ることはない。
実質的な解決にはならないが、気持ち的な問題としては大分改善されたように思える。

 それにここ三日間、旅館にこもりきりで気が滅入りそうだったし……たまには、外の空気を吸いたい。

 そんな私の心情を察したのか、徳正さんは二つ返事でOKを出した。

「うん、良いね~。それで行こう~。No.4と合流したあと、外食するのもありだし~」

「い、いいいいい、良いですね!外食!」

「そうですね。たまには外食も良いかもしれません」

 こんな状況下で外食なんて呑気かもしれないが、変に警戒したり思い詰めたりしてもしょうがない。
何より、こういう息抜きは意外と大切だ。
もちろん、長旅に疲れ果てたNo.4さんからOKを貰えたらの話だが。

「んじゃ、まあ……とりあえず────待ち合わせ場所へゴー!」

 徳正さんの出発宣言と共に、私達はそれぞれ立ち上がった。

◇◆◇◆

 それから、私達は特にトラブルもなく待ち合わせ場所である門の前まで来ていた。
ここなら人の少なく、迷子になる心配がないから。

 No.4さんの話だと、もうすぐ到着するらしいけど……って、ん?あれ、何?

 かなり遠くの方から、猛スピードでこちらに近付いてくる何か……いや、クマの着ぐるみ。背中に背負った……って、鎌!?
死神が持ってそうな武器を前に、私は戦々恐々とするものの……徳正さんとアラクネさんは、シレッとしている。

「おー……来た来た~」

「あ、ああああああ、相変わらず凄い爆走ですね!」

 いや、待って!『相変わらず凄い爆走ですね』って、注目すべきはそこじゃないでしょ!

 『もっと他に突っ込むべきところがある筈!』と思いながら、私は何とか状況を整理する。
恐らく二人の反応から、あの異様な存在感を放つクマの着ぐるみがNo.4さんであることは確かだ。
実は違う人でした、というオチはないだろう。
いや、個人的にはそうであってほしいが……。
蜘蛛の次はクマなんて、振り幅が広すぎて困る。
『一体、どうリアクションすればいいんだ……』と頭を抱える中、突然目の前に砂埃が巻き起こった。

 うわっ……!?

「コホコホッ……」

「あっ、ラーちゃん大丈夫~?」

「は、はい……それより、一体何が……」

 砂埃に喉と目をやられ、苦しむ私は横から差し出されたクマのハンカチを受け取る。
てっきり、アラクネさんのものかと思って……。

「コホコホッ……ありがとうございます」

 ほんのりフローラルの香りがする清潔なハンカチで目元を拭き取り、砂を払う。

 あっ、ちょっと目が痛い……目薬あるかな?アラクネさんに聞いて……あっ、目薬。

 タイミングを見計らったように差し出された目薬を、私は『ありがとうございます』と言って受け取る。
そして、目薬を差そうと顔を上げた瞬間────クマの着ぐるみが視界に映った。

「あっ、え……?あれっ……?」

「あははははっ!ラーちゃん、その表情かお最っ高~!」

「あ、あの……えっと……」

 私の間抜け面に、爆笑し始めた徳正さんとオロオロするアラクネさん。
極めつけはクマの着ぐるみが持つホワイトボードだ。
だって、そこにはハッキリと────『良かったら、目薬を差すぞ』と書かれていた。

 えっ?あれ?もしかして、私にハンカチや目薬を差し出してくれたのはアラクネさんじゃなくて、No.4さん……!?
えっ!?嘘でしょ!?そんなことある!?

 ポカーンと口を開ける私を前に、クマの着ぐるみ……じゃなくて、No.4さんはホワイトボードにまた何か書き込む。

『僕が君の前で急ブレーキをかけたせいで砂埃が舞い、目や喉を痛めてしまった。申し訳ない』

「え?あ、いえ……お気になさらず」

 凄くふざけた格好をしている割に、口調はきちんとしている。
言葉遣いも丁寧だし、素直に自分の非を認めて謝るあたり好感が持てた。

 だけど、ちょっと待って……!?何で着ぐるみなの!?しかも、全然喋んないし!
もしかして、そういうキャラ!?

 『これじゃあ、性別も分からないよ!?』とオロオロする私に、No.4さんは手持ちサイズのホワイトボードを見せる。
どうやら、また何か書き込んだらしい。

『僕はラルカ。周りの連中には“斬殺の死神”なんて呼ばれているが、仲間は襲わないから安心して欲しい。君はNo.7で合っているか?』

「あ、はい。ラミエルと言います。ラルカさん、これからよろしくお願い致します」

『こちらこそ、よろしく頼む』

 No.4さん────改め、ラルカさんは着ぐるみの手をスッと差し出してくる。
恐らく、『よろしく』という意味を込めて握手を交わしたいのだろう。
有り合わせの布で作られたような見た目のクマの着ぐるみはボロボロで布のほつれが激しいが、不思議と汚いとは思わなかった。
『なんだか不思議な魅力のある人だな』と思いつつ、握手を交わす。
ぬいぐるみのように柔らかい手は、触り心地が良かった。

「さてさて~、そろそろ移動を開始しよっか~。あっ、ラルカ。旅館へ行く前に、外食して行っても大丈夫~?」

『問題ない』

「おっけ~!んじゃ、久々に外食だー!」

 ピョーンとその場でジャンプして、徳正さんは喜びを露わにする。
子供のようにはしゃぐ彼を尻目に、私はラルカさんに目薬を返した。
『ハンカチは洗ってから、返そう』と考えながら、一先ずポケットに仕舞う。
そのかん、彼らはどこの店に行くか話し合っていた。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

処理中です...