『魔王討伐クエスト』で役に立たないからと勇者パーティーに追い出された回復師は新たな仲間と無双する〜PK集団が英雄になるって、マジですか!?〜

あーもんど

文字の大きさ
上 下
11 / 315
第一章

第10話『罠の森』

しおりを挟む
 この森はNo.5さんの私有地……つまり、この罠を設置したのはNo.5さん本人となる。
恐らく、不法侵入者を追い払うための罠なんだろうけど……これって、

「殺す気満々ですよね!?」

「まあ、一応No.5も『虐殺の紅月』の一員だからね~」

 確かにそうだけど……普通こんな罠張る!?
危険すぎて、何も言えな……あっ、もしかして────徳正さんがこの森に入るのを渋ったのは、罠のことを知っていたから?
それなら、納得だけど……これから、一体どうすれば?
『グリュプスの笛』はもう使えないし、魔法使いでもない私達じゃ空を飛べないし……。

「はぁ……とりあえず入っちゃったのは仕方ないし、進むしかなさそうだね~」

 諦めたように溜め息を零す徳正さんは、罠の森を進むことに決めたようだ。
やれやれと肩を竦める彼の前で、私はコテリと首を傾げる。

「あの、引き返すことって出来ないんですか?」

「ん?あ~……それは後ろを見てみれば分かるよ~」

 後ろ……?どういうことだろう?

 訳も分からず、徳正さんの肩越しに後ろを振り返るが……特に変わった様子はない。
引き返す分には、問題ないように見える。
『何をそんなに警戒しているんだ?』と疑問に思う中、一瞬だけ何かがキラッと光ったような気がした。

 ん?なんだろう?今の……。

 普段なら『気の所為だろう』と無視しそうだが、何故だか物凄く気になる。
直感にも似た違和感に誘われるまま、私は目を凝らした。

「!?……これって!!」

「あっ、見えた~?それは────蜘蛛糸だよ」

 太陽に反射して光る紐状のものを一瞥し、徳正さんは歩き出す。
私をお姫様抱っこした状態で……。

「その蜘蛛糸は蜘蛛の神アトラク・ナクア討伐クエストで獲得出来る蜘蛛糸の劣化バージョンで、No.5が発明したものの一つだよ~。現実世界で言うワイヤーに近いかな~?切れ味抜群で強度も高いから、気をつけてね~。ま、本家の蜘蛛糸の方が何倍もやばいけど~」

「じゃ、じゃあ、下手したらあの蜘蛛糸に体を切り刻まれるってことですか!?」

「そゆこと~。だから、気をつけて~」

「き、斬ることって出来ないんですか!?」

「ん~?No.5が発明した劣化バージョンの蜘蛛糸は斬ることが出来るけど~……どう頑張っても刃毀れしちゃうから出来れば、やりたくないかな~」

 なっ……!?刃毀れ!?徳正さんの剣が!?

 徳正さんの所有する日本刀は、ゲーム内に一本しか存在しない妖刀マサムネ。
あらゆる物を切り裂き、相手の血を啜る伝説の刀だ。

 そんな名刀ですら、手を焼くなんて……信じられない。
それに徳正さんは『劣化バージョンの蜘蛛糸は』と言った。
言葉の裏を返せば、本家の方の蜘蛛糸は徳正さんでも斬れないってこと。

 『No.5さんって、一体何者なの……?』と首を傾げつつ、私はチラッと後ろを振り返る。

「あの……ちなみになんですけど、その蜘蛛の神アトラク・ナクア討伐クエストって……」

「ん?あ~……そのクエストはもう受けられないよ~。隠れクエストで誰かがクリアしたら、もう二度と現れないやつだから~」

「そうなんですか……良かった」

 そのチート武器を他の人も持っていたら、一大事だもん。
使い手の力量にもよるけど、私達の脅威になるかもしれない。

「ま、とりあえず、ラーちゃんは俺っちに抱っこされててね~」

「えっ?でも……!」

「『でも』じゃなーい!この森って、普通に歩いているだけでもトラップ発動するから、正直ラーちゃんには何もして欲しくないんだよ~。それに俺っちなら────」

 そこで言葉を切ると、徳正さんは音速を超える反応速度で飛んできた斧を躱した。

「────トラップが発動しても、余裕で対処出来るから~」

 木の幹に突き刺さる斧を一瞥し、徳正さんはヘラリと笑う。
が、私はそれどころじゃなかった。

 お、斧なんて一体どこから……!?全然気づかなかった!

 気配探知に引っ掛からない無機物だからか、私は全く反応出来なかった。
『徳正さんに庇ってもらってなかったら死んでいたかも』と考え、冷や汗を流す。

 ここは大人しく、徳正さんの指示に従っておいた方が良さそう。
私よりこの森に詳しいだろうし、危機回避能力も備わっている筈だから。
ここで『自分で歩きます!』と意地を張るのは、間違っていた。

「分かりました。あとのことは、徳正さんに任せます」

「ハハッ!さすが、ラーちゃん!話が早くて助かる~」

 真後ろから物凄いスピードで転がってくる大玉を軽い跳躍で躱し、徳正さんは再び歩き出す。
全く緊張感を感じさせない彼の態度に、私は少しだけホッとした。

 徳正さんが居れば、きっと大丈夫。
仮にダメージを受けたとしても、即死でなければ私の方で充分対処出来る。
罠の数や種類を把握出来ていないのが痛いけど、それも何とかなるだろう。

 ────そう悠長に構えていたのが、いけなかったのかもしれない。

「な、なっ……!?何で……!?」

「ありゃりゃ~。これはなかなか凄いね~」

 『あと数メートルで森を抜ける!』というところで、“それ”は突然現れた。
罠なんか比べ物にならないほど強大な敵を前に、私は顔色を変える。

「何で────ダンジョンの魔物モンスターがここに……!?」

 ライオンの頭に山羊の胴体、それから毒蛇の尻尾を持つ魔物モンスター────キマイラ。
キマイラはウエストダンジョンの第二十九階層に現れる、中層魔物モンスターだった。
炎を吹き、毒を撒き、鋭い牙で相手を翻弄する奴は本来大規模パーティーを組んで倒す相手。
たった二人で倒せるほど、弱い魔物モンスターじゃない。

「いやぁ、No.5やってくれたねぇ……。まさか魔物モンスターを番犬代わりに使うなんて……No.3が協力したのかな~?」

「そんなこと言っている場合ですか!?早く逃げないと!!」

「逃げるって言っても、ここらへん罠だらけだよ~?」

「じゃあ、どうしろって言うんですか!?まさか、倒すなんて言いま、せん……よね?」

 セレンディバイトの瞳を妖しく細める徳正さんに、私は頬を引き攣らせる。

 い、嫌な予感がする……だって、好戦的な徳正さんなら、絶対に────

「────倒すに決まってるでしょ~」

 当然のようにそう宣言した徳正さんに、私は頭を抱えた。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

処理中です...