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Episode4
報酬と説明
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「あとのことはこっちでやっておくから、二人はもう帰るといい」
────という言葉に甘えて、さっさと帰宅した一週間後。
報酬の受け渡しも兼ねて、リンより呼び出しを受けた。
悟史も一緒に。
『まさか、こいつと報酬を折半しろってことか?』と警戒しつつ、俺は風来家の敷居を跨ぐ。
そして客間へ通されると、そこにはリンと悟史の姿があった。
どことなく険しい顔つきの二人を前に、俺は一先ず席へつく。
「で、報酬は?」
「挨拶よりも先にお金の話とは……セイは本当にブレないね」
「大事なことだろ」
「はいはい」
『全く、しょうがないな』と言わんばかりに肩を竦め、リンは予め用意していた封筒を差し出した。
「約束の二百万だよ」
「……もう百万は?」
「ウチの人間を一人持ち帰るごとに十万のやつかい?」
「ああ」
間髪容れずに頷くと、リンは溜め息交じりにこう答える。
「結果的に持ち帰ったのは僕だから、なしだよ」
「チッ……!やっぱ、そうか」
何となくそんな気はしていたため、俺は大人しく二百万だけ受け取った。
風来家の人間の保護に関しては、正直ちゃんとこなせたかどうか自信ないため。
『結果的に戻ってはきたけど』と思案する中、悟史にツンツンと腕を突かれる。
「それより聞いてよ、壱成。今回の件────子狸に入れ知恵したのは、父さんに呪詛を掛けた奴と同じかもしれないんだって」
『ヤバくない?』と同意を求めてくる悟史に、俺は
「へぇー」
と、相槌を打つ。
札束の入った封筒を眺めながら。
「あれ?驚かないの?」
「単純に興味ないだけだけど」
「えっ!?酷くない!?」
『可愛い弟子に関することなのに!』と喚き、悟史は少しばかり頬を膨らませた。
不満を露わにする彼を前に、リンは眼鏡を押し上げる。
「まあ、興味のある・ないはさておきセイもちゃんと聞いておいた方がいいよ。氷室組の若頭の師匠である以上、君も無関係とは行かないから」
「はぁ……ったく、面倒くせぇーな」
ガシガシと頭を掻きながら頬杖をつき、俺は隣に座る悟史へ視線を向けた。
「とりあえず、話してみろ。聞いてやる」
「おっけー」
俺の偉そうな態度には触れず、悟史はニコニコと笑う。
と同時に、懐から複数枚の写真を取り出した。
「まず、事の発端────父さんの呪詛事件についてなんだけど、これは敵組織による犯行と分かった。目的は単純に氷室組の弱体化だね。これが敵の親玉で、あっちが呪詛の掛かったガラス細工……呪物を持ち込んだ下っ端」
ボコボコに腫れ上がった顔の男性や血まみれの女性を指さし、悟史はスッと目を細めた。
「で、実際に呪詛を仕掛けたのはこの男。名前は久世彰。三十五歳。壱成と同じく、フリーの祓い屋。ただ、引き受けるのはほとんど呪い……というか、殺人や傷害の依頼みたい。父さんの件も、仕事として引き受けただけっぽいね。特に恨みとか憎しみとかは、なさそう」
『一応、色んな角度から調べてみたんだけど』と零しつつ、悟史は自身の顎を撫でる。
「多分だけど、久世は僕達氷室組の報復を恐れて先日のような事件を起こしたんだと思う」
「はぁ?先日の事件のターゲットはどっちかと言うと、風来家じゃないか?」
「うん、そうだよ」
「いや、『そうだよ』って……」
点と点が線で結び付かず、俺は『つまり、どういうことなんだよ?』と溜め息を零した。
すると、悟史は久世の写真を指先で突く。
「久世は恐らく、氷室組と仲が良くて探し物を得意とする風来家を警戒していたんだよ。ここに依頼されたら……自分の居場所を探すよう要請されたら、一巻の終わりだからね」
『捜索に必要な顔や名前は割れている訳だし』と肩を竦め、悟史は大きく息を吐いた。
────と、ここでリンが久世の写真を持ち上げる。
「ここからは僕が話すよ」
────という言葉に甘えて、さっさと帰宅した一週間後。
報酬の受け渡しも兼ねて、リンより呼び出しを受けた。
悟史も一緒に。
『まさか、こいつと報酬を折半しろってことか?』と警戒しつつ、俺は風来家の敷居を跨ぐ。
そして客間へ通されると、そこにはリンと悟史の姿があった。
どことなく険しい顔つきの二人を前に、俺は一先ず席へつく。
「で、報酬は?」
「挨拶よりも先にお金の話とは……セイは本当にブレないね」
「大事なことだろ」
「はいはい」
『全く、しょうがないな』と言わんばかりに肩を竦め、リンは予め用意していた封筒を差し出した。
「約束の二百万だよ」
「……もう百万は?」
「ウチの人間を一人持ち帰るごとに十万のやつかい?」
「ああ」
間髪容れずに頷くと、リンは溜め息交じりにこう答える。
「結果的に持ち帰ったのは僕だから、なしだよ」
「チッ……!やっぱ、そうか」
何となくそんな気はしていたため、俺は大人しく二百万だけ受け取った。
風来家の人間の保護に関しては、正直ちゃんとこなせたかどうか自信ないため。
『結果的に戻ってはきたけど』と思案する中、悟史にツンツンと腕を突かれる。
「それより聞いてよ、壱成。今回の件────子狸に入れ知恵したのは、父さんに呪詛を掛けた奴と同じかもしれないんだって」
『ヤバくない?』と同意を求めてくる悟史に、俺は
「へぇー」
と、相槌を打つ。
札束の入った封筒を眺めながら。
「あれ?驚かないの?」
「単純に興味ないだけだけど」
「えっ!?酷くない!?」
『可愛い弟子に関することなのに!』と喚き、悟史は少しばかり頬を膨らませた。
不満を露わにする彼を前に、リンは眼鏡を押し上げる。
「まあ、興味のある・ないはさておきセイもちゃんと聞いておいた方がいいよ。氷室組の若頭の師匠である以上、君も無関係とは行かないから」
「はぁ……ったく、面倒くせぇーな」
ガシガシと頭を掻きながら頬杖をつき、俺は隣に座る悟史へ視線を向けた。
「とりあえず、話してみろ。聞いてやる」
「おっけー」
俺の偉そうな態度には触れず、悟史はニコニコと笑う。
と同時に、懐から複数枚の写真を取り出した。
「まず、事の発端────父さんの呪詛事件についてなんだけど、これは敵組織による犯行と分かった。目的は単純に氷室組の弱体化だね。これが敵の親玉で、あっちが呪詛の掛かったガラス細工……呪物を持ち込んだ下っ端」
ボコボコに腫れ上がった顔の男性や血まみれの女性を指さし、悟史はスッと目を細めた。
「で、実際に呪詛を仕掛けたのはこの男。名前は久世彰。三十五歳。壱成と同じく、フリーの祓い屋。ただ、引き受けるのはほとんど呪い……というか、殺人や傷害の依頼みたい。父さんの件も、仕事として引き受けただけっぽいね。特に恨みとか憎しみとかは、なさそう」
『一応、色んな角度から調べてみたんだけど』と零しつつ、悟史は自身の顎を撫でる。
「多分だけど、久世は僕達氷室組の報復を恐れて先日のような事件を起こしたんだと思う」
「はぁ?先日の事件のターゲットはどっちかと言うと、風来家じゃないか?」
「うん、そうだよ」
「いや、『そうだよ』って……」
点と点が線で結び付かず、俺は『つまり、どういうことなんだよ?』と溜め息を零した。
すると、悟史は久世の写真を指先で突く。
「久世は恐らく、氷室組と仲が良くて探し物を得意とする風来家を警戒していたんだよ。ここに依頼されたら……自分の居場所を探すよう要請されたら、一巻の終わりだからね」
『捜索に必要な顔や名前は割れている訳だし』と肩を竦め、悟史は大きく息を吐いた。
────と、ここでリンが久世の写真を持ち上げる。
「ここからは僕が話すよ」
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