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本編
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────その後、10分ほどで貴族達の殺害が終わり、私の聴覚も元に戻っていた。
残りのターゲットは空中へ避難させていたノア様、リアム国王陛下、クレア様の三人だけである。
サナトスの魔法で地上へ降ろされた三人は完全に怯えきっており、会場を覆う闇に恐怖している。
自分達もこの闇に食べられるのでは?と不安がっているらしい。
サナトスがそんな軽い罰で彼らを許す筈ないのに·······。
「まずはそうだねぇ······誰から行こうか?諸悪の根源であるノア・アレクサンダーは最後にするとして······国王と女どっちから殺したい?」
サナトスは陛下とクレア様を交互に指さし、私に決断を委ねてくる。
『クッキーとケーキ、どっちがいい?』くらい軽いノリで。
陛下はノア様をクズ男に育て上げた元凶で、クレア様はノア様を唆したアバズレ女······。
どちらの罪も重いが、私個人の意見としては······クレア様の方がまだ罪が軽いかな。
だって、ノア様との婚約を解消する理由をくれたのは彼女だし。
手段こそ間違っていたが、ノア様を真実の愛とやらに目覚めさせてくれたのはかなり有り難かった。
だから────。
「クレア様を先に殺してちょうだい」
私はクレア様の目をしっかり見て、決断を下した。
“死”を間近で見たばかりの彼女は怯えた表情で蹲る。
そんな彼女に恋人であるノア様がそっと手を伸ばすが·······。
「嫌っ!触らないで!!」
クレア様はノア様の手を思い切り叩き落とした。
金髪碧眼の美青年は叩き落とされた手を呆然と見つめている。
「私はただ少しでも裕福な暮らしがしたくて、貴方に近づいただけ!殺されるために近づいた訳じゃないわ!貴方がアレクサンダー公爵家の息子じゃければ、近付こうともしなかったわよ!」
「!?」
「大体、何よ!?真実の愛って!バッカみたい!」
「·······ん、んー!んー!」
「うるさい!全部貴方のせいよ!貴方がもっと上手く立ち回っていれば、こんなことにならなかったのに!」
もう殺される直前だからか、クレア様は本音をぶちまけた。
ノア様の中にある真実の愛とやらが音を立てて崩れ去っていく。
絶望に染まっていく彼の表情は実に滑稽だった。
貴方が信じる真実の愛なんて、所詮この程度よ。現実を知りなさい。
「何でこんな奴の巻き添えで死ななきゃいけないの!?私はただ幸せになりたいだけなのに!何なのよっ!本当もう·····!」
八つ当たりのように一人言を零し、クレア様はポロポロと涙を流す。
ここで私に『助けて』と懇願しないあたり、彼女の潔さを感じた。
幸せになりたいからと言って、人を傷つけるのは間違ってるけど······クレア様の気持ちは痛いほどよく分かった。
同情はしない······でも、最後の温情くらいは与えよう。
「サナトス、出来るだけ楽に逝かせてあげて」
泣き崩れる彼女を見ながら、そう告げればサナトスは何も言わずにただ頷いた。
銀髪金眼の美青年がクレア様に向かって、手を翳す。
「闇と共に安らかに眠るといい」
その言葉を皮切りに、クレア様の腫れ上がった瞼がゆっくりと下へ落ちていく。
糸の切れたマリオネットのように倒れる体を闇がそっと包み込んだ。
────クレア・スカーレット男爵令嬢の死に顔は酷く穏やかだった。
※次回はちょっとグロい(?)と言うか、怖い(?)かも
残りのターゲットは空中へ避難させていたノア様、リアム国王陛下、クレア様の三人だけである。
サナトスの魔法で地上へ降ろされた三人は完全に怯えきっており、会場を覆う闇に恐怖している。
自分達もこの闇に食べられるのでは?と不安がっているらしい。
サナトスがそんな軽い罰で彼らを許す筈ないのに·······。
「まずはそうだねぇ······誰から行こうか?諸悪の根源であるノア・アレクサンダーは最後にするとして······国王と女どっちから殺したい?」
サナトスは陛下とクレア様を交互に指さし、私に決断を委ねてくる。
『クッキーとケーキ、どっちがいい?』くらい軽いノリで。
陛下はノア様をクズ男に育て上げた元凶で、クレア様はノア様を唆したアバズレ女······。
どちらの罪も重いが、私個人の意見としては······クレア様の方がまだ罪が軽いかな。
だって、ノア様との婚約を解消する理由をくれたのは彼女だし。
手段こそ間違っていたが、ノア様を真実の愛とやらに目覚めさせてくれたのはかなり有り難かった。
だから────。
「クレア様を先に殺してちょうだい」
私はクレア様の目をしっかり見て、決断を下した。
“死”を間近で見たばかりの彼女は怯えた表情で蹲る。
そんな彼女に恋人であるノア様がそっと手を伸ばすが·······。
「嫌っ!触らないで!!」
クレア様はノア様の手を思い切り叩き落とした。
金髪碧眼の美青年は叩き落とされた手を呆然と見つめている。
「私はただ少しでも裕福な暮らしがしたくて、貴方に近づいただけ!殺されるために近づいた訳じゃないわ!貴方がアレクサンダー公爵家の息子じゃければ、近付こうともしなかったわよ!」
「!?」
「大体、何よ!?真実の愛って!バッカみたい!」
「·······ん、んー!んー!」
「うるさい!全部貴方のせいよ!貴方がもっと上手く立ち回っていれば、こんなことにならなかったのに!」
もう殺される直前だからか、クレア様は本音をぶちまけた。
ノア様の中にある真実の愛とやらが音を立てて崩れ去っていく。
絶望に染まっていく彼の表情は実に滑稽だった。
貴方が信じる真実の愛なんて、所詮この程度よ。現実を知りなさい。
「何でこんな奴の巻き添えで死ななきゃいけないの!?私はただ幸せになりたいだけなのに!何なのよっ!本当もう·····!」
八つ当たりのように一人言を零し、クレア様はポロポロと涙を流す。
ここで私に『助けて』と懇願しないあたり、彼女の潔さを感じた。
幸せになりたいからと言って、人を傷つけるのは間違ってるけど······クレア様の気持ちは痛いほどよく分かった。
同情はしない······でも、最後の温情くらいは与えよう。
「サナトス、出来るだけ楽に逝かせてあげて」
泣き崩れる彼女を見ながら、そう告げればサナトスは何も言わずにただ頷いた。
銀髪金眼の美青年がクレア様に向かって、手を翳す。
「闇と共に安らかに眠るといい」
その言葉を皮切りに、クレア様の腫れ上がった瞼がゆっくりと下へ落ちていく。
糸の切れたマリオネットのように倒れる体を闇がそっと包み込んだ。
────クレア・スカーレット男爵令嬢の死に顔は酷く穏やかだった。
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