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「だ、誰だ!?あの男は·······!?」
「せ、背中に羽根が生えてるぞ!?」
「まさか天使様!?」
「結論を急ぐな!悪魔の可能性だってあるんだぞ」
突然現れた銀髪金眼の美青年を前に、貴族達はざわつく。
未知との遭遇に戸惑う彼らを置いて、精霊王サナトスは嬉々としてこちらを振り返った。
「呼んだかい?僕の可愛いアリ······」
満面の笑みで私と顔を合わせたサナトスだったが、その笑みは一瞬にして凍りつく。
彼の視線は私の涙に釘付けだった。
「あ、アリス!!何故泣いて·······!?まさか、誰かに虐められたのかい!?」
心配そうに私の顔を覗き込んでくるサナトスはそっと頬に手を添えた。
ポロポロと溢れ出す涙がサナトスの白い手を濡らす。
「アリス、もう大丈夫だよ。僕が傍に居るからね。何も心配はいらない。誰に何をされたのか、言ってごらん?僕が全部壊してあげるから」
言っていることは物騒だが、その優しい声は妙に落ち着く。
『この人の傍に居れば、もう大丈夫』だと、本能的に感じ取っているのだろう。
「あのね、サナト······」
「────思い出したぞ!」
私の声を遮り、大声を上げたのはリアム国王陛下だった。
陛下は動揺を隠せない様子で、サナトスを見つめる。
「どこかで聞いたことのある名前だと思ったら······貴方はもしや────終焉を招く精霊王 サナトス様ではありませぬか!?」
さすがは国王陛下と言うべきか、精霊に関する知識や理解が深い。
私が名前を呼んだとは言え、彼が精霊王サナトスだと直ぐに気づくのは普通不可能だ。
まあ、どんなに優秀な王でも甥っ子の教育一つ出来ないんじゃ、話にならないけど·····。
「せ、精霊王!?」
「何故そんな凄い人物がここに······!?」
「普通の人には精霊が見えないんじゃなかったのか······!?」
「いや、上位精霊や精霊王は別だ。力のある精霊は自分の意思で、人間の前に現れることが出来る······。まあ、そんなこと滅多にないけどな」
陛下から伝染するように、周囲の人々に動揺が走る。
彼らは精霊王サナトスに畏怖を覚えると共に、彼を呼び出した私に注目を集めていた。
「じゃ、じゃあ!精霊王を召喚したアリス嬢は精霊士ってことか!?」
「いや、それはないだろ。だって、アリス嬢には魔力がこれっぽっちもないんだぜ?魔力がなきゃ、精霊を召喚することなんて出来ないだろ」
「じゃあ、どうやって精霊王を呼び出したって言うのよ!?まさか、精霊王自らここに来たって訳じゃないわよね!?」
「いや、まさか······」
「でも、今はそれしか考えられないぞ····」
「そんな訳ないじゃない!だって、もしそうなら彼女は·······!!」
困惑、動揺、混乱······そして、恐怖。
色々な感情がこの場に溢れ返る中、ある少女が私を指さして叫ぶ。
「───精霊の愛し子ってことじゃない!」
見事正解を引き当てた少女は興奮した様子で、肩を息をしていた。
彼女が口にした“答え”に、誰もが言葉を失う。
“精霊の愛し子”というワードはそれほど衝撃的なものなのだ。
────精霊の愛し子。
精霊達に無条件で愛され、守られる存在。
愛し子が住まう土地には精霊が集まり、多くの祝福と加護が与えられる。
おまけに自然災害の心配がないため、愛し子が居る間は平和に過ごせるらしい。
まあ、それはあくまで愛し子の不興を買わなければの話だが······。
私は腹の底からフツフツ沸き上がる怒りを感じながら、溢れ出す涙を無造作に拭う。
パーティーの参加者たちがこちらの顔色を窺うようにチラチラ見てくるが、私の意思はもう決まっていた。
今さら、ご機嫌伺いをして来てももう遅い。
「サナトス────ここに居る者達を全員殺してちょうだい」
「せ、背中に羽根が生えてるぞ!?」
「まさか天使様!?」
「結論を急ぐな!悪魔の可能性だってあるんだぞ」
突然現れた銀髪金眼の美青年を前に、貴族達はざわつく。
未知との遭遇に戸惑う彼らを置いて、精霊王サナトスは嬉々としてこちらを振り返った。
「呼んだかい?僕の可愛いアリ······」
満面の笑みで私と顔を合わせたサナトスだったが、その笑みは一瞬にして凍りつく。
彼の視線は私の涙に釘付けだった。
「あ、アリス!!何故泣いて·······!?まさか、誰かに虐められたのかい!?」
心配そうに私の顔を覗き込んでくるサナトスはそっと頬に手を添えた。
ポロポロと溢れ出す涙がサナトスの白い手を濡らす。
「アリス、もう大丈夫だよ。僕が傍に居るからね。何も心配はいらない。誰に何をされたのか、言ってごらん?僕が全部壊してあげるから」
言っていることは物騒だが、その優しい声は妙に落ち着く。
『この人の傍に居れば、もう大丈夫』だと、本能的に感じ取っているのだろう。
「あのね、サナト······」
「────思い出したぞ!」
私の声を遮り、大声を上げたのはリアム国王陛下だった。
陛下は動揺を隠せない様子で、サナトスを見つめる。
「どこかで聞いたことのある名前だと思ったら······貴方はもしや────終焉を招く精霊王 サナトス様ではありませぬか!?」
さすがは国王陛下と言うべきか、精霊に関する知識や理解が深い。
私が名前を呼んだとは言え、彼が精霊王サナトスだと直ぐに気づくのは普通不可能だ。
まあ、どんなに優秀な王でも甥っ子の教育一つ出来ないんじゃ、話にならないけど·····。
「せ、精霊王!?」
「何故そんな凄い人物がここに······!?」
「普通の人には精霊が見えないんじゃなかったのか······!?」
「いや、上位精霊や精霊王は別だ。力のある精霊は自分の意思で、人間の前に現れることが出来る······。まあ、そんなこと滅多にないけどな」
陛下から伝染するように、周囲の人々に動揺が走る。
彼らは精霊王サナトスに畏怖を覚えると共に、彼を呼び出した私に注目を集めていた。
「じゃ、じゃあ!精霊王を召喚したアリス嬢は精霊士ってことか!?」
「いや、それはないだろ。だって、アリス嬢には魔力がこれっぽっちもないんだぜ?魔力がなきゃ、精霊を召喚することなんて出来ないだろ」
「じゃあ、どうやって精霊王を呼び出したって言うのよ!?まさか、精霊王自らここに来たって訳じゃないわよね!?」
「いや、まさか······」
「でも、今はそれしか考えられないぞ····」
「そんな訳ないじゃない!だって、もしそうなら彼女は·······!!」
困惑、動揺、混乱······そして、恐怖。
色々な感情がこの場に溢れ返る中、ある少女が私を指さして叫ぶ。
「───精霊の愛し子ってことじゃない!」
見事正解を引き当てた少女は興奮した様子で、肩を息をしていた。
彼女が口にした“答え”に、誰もが言葉を失う。
“精霊の愛し子”というワードはそれほど衝撃的なものなのだ。
────精霊の愛し子。
精霊達に無条件で愛され、守られる存在。
愛し子が住まう土地には精霊が集まり、多くの祝福と加護が与えられる。
おまけに自然災害の心配がないため、愛し子が居る間は平和に過ごせるらしい。
まあ、それはあくまで愛し子の不興を買わなければの話だが······。
私は腹の底からフツフツ沸き上がる怒りを感じながら、溢れ出す涙を無造作に拭う。
パーティーの参加者たちがこちらの顔色を窺うようにチラチラ見てくるが、私の意思はもう決まっていた。
今さら、ご機嫌伺いをして来てももう遅い。
「サナトス────ここに居る者達を全員殺してちょうだい」
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