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最終章
エピローグ
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人間と精霊の戦争は結局何もかも有耶無耶のまま終わりを迎えた。
自分達は何のために戦っていたのか、何を守りたかったのか。
戦争の原因は未だ解明されていない。
精霊達は多くの謎とほんの少しの寂しさを胸に抱きながら、今日も生きる。
対する人間は“忘れる生き物”なので月日と共に戦争のことも何もかも忘れ去っていった。
精霊達は願う。
僕らの大切な“何か”を返してくれ、と。
その“何か”が何なのか覚えていないのにそれを大切に思う気持ちだけが残った精霊。
だが、ここ聖城の玉座の間で茶を嗜む女性は他の精霊と全く違うことを思っていた。
この女性、名をファーセリアと言う。
彼女こそ精霊達の頂点に君臨する精霊王である。
「うふふっ。レーテーは相変わらず詰めが甘いわねぇ。私や上位の精霊はディアナのことをうろ覚えではあるけれど、きちんと記憶に残っているわよ...ふふっ」
艶やかに笑う黒髪の女性は紅で彩られた真っ赤な唇を緩やかに上げる。
カップの中にある紅茶を魔法で操り、宙に浮かせるとやや小さめのスクリーンを作りあげた。
そこには喧嘩をおっ始めるサラマンダーとノームの間に割って入る愛しき少女──ディアナの姿がある。
「残念ね....せっかく貴方に精霊王の座を明け渡そうと思っていたのに。私の力を持ってすれば貴方を不老不死にすることも、最強の生物に作り替えることも可能だもの...。まあ、でも.....貴方が幸せならそれで良いわ。あぁ、あとサラマンダーとノームは特別に貸してあげる...うふふっ」
この世で最も神に近しい存在であるファーセリアの力を持ってすれば、不可能なことなどない。
それこそ、この世界を壊すことだって可能だ。
それほどの力を有していながら、彼女は何かを望むことはなかった。
望めば何でも手に入るのに、だ。
ファーセリアには欲しいものなどなかった。
強いて言うなら、自分の跡を継いでくれる強者が欲しいくらい。
だが、誰かに迷惑をかけてまで欲しい訳ではない。
自分が認めた人物であり、尚且つ相手の了承が貰えればの話。
ファーセリアは世界最強の人物にして、世界最高の人畜無害な王様であった。
「まあ、あれね....気が変わったら、いつでも帰っていらっしゃい。そのときは歓迎するわ
でも─────次はもう逃れられないわよ」
あんなにもディアナに執着している精霊達が二度も貴方を逃がす筈ないもの、と不敵に笑う。
ファーセリアは宙に浮かせた紅茶をカップに戻し、それに口をつける。
「あら、ちょっと冷めちゃったわね」
ファーセリアの一人言はこの広い玉座の間に沈んで消えた。
※完結です!!
最後の最後までこの作品にお付き合い頂き、本当にありがとうございました!!
拙い文章であったかとは思いますが、少しでも楽しんでいただけたのなら幸いです!
自分達は何のために戦っていたのか、何を守りたかったのか。
戦争の原因は未だ解明されていない。
精霊達は多くの謎とほんの少しの寂しさを胸に抱きながら、今日も生きる。
対する人間は“忘れる生き物”なので月日と共に戦争のことも何もかも忘れ去っていった。
精霊達は願う。
僕らの大切な“何か”を返してくれ、と。
その“何か”が何なのか覚えていないのにそれを大切に思う気持ちだけが残った精霊。
だが、ここ聖城の玉座の間で茶を嗜む女性は他の精霊と全く違うことを思っていた。
この女性、名をファーセリアと言う。
彼女こそ精霊達の頂点に君臨する精霊王である。
「うふふっ。レーテーは相変わらず詰めが甘いわねぇ。私や上位の精霊はディアナのことをうろ覚えではあるけれど、きちんと記憶に残っているわよ...ふふっ」
艶やかに笑う黒髪の女性は紅で彩られた真っ赤な唇を緩やかに上げる。
カップの中にある紅茶を魔法で操り、宙に浮かせるとやや小さめのスクリーンを作りあげた。
そこには喧嘩をおっ始めるサラマンダーとノームの間に割って入る愛しき少女──ディアナの姿がある。
「残念ね....せっかく貴方に精霊王の座を明け渡そうと思っていたのに。私の力を持ってすれば貴方を不老不死にすることも、最強の生物に作り替えることも可能だもの...。まあ、でも.....貴方が幸せならそれで良いわ。あぁ、あとサラマンダーとノームは特別に貸してあげる...うふふっ」
この世で最も神に近しい存在であるファーセリアの力を持ってすれば、不可能なことなどない。
それこそ、この世界を壊すことだって可能だ。
それほどの力を有していながら、彼女は何かを望むことはなかった。
望めば何でも手に入るのに、だ。
ファーセリアには欲しいものなどなかった。
強いて言うなら、自分の跡を継いでくれる強者が欲しいくらい。
だが、誰かに迷惑をかけてまで欲しい訳ではない。
自分が認めた人物であり、尚且つ相手の了承が貰えればの話。
ファーセリアは世界最強の人物にして、世界最高の人畜無害な王様であった。
「まあ、あれね....気が変わったら、いつでも帰っていらっしゃい。そのときは歓迎するわ
でも─────次はもう逃れられないわよ」
あんなにもディアナに執着している精霊達が二度も貴方を逃がす筈ないもの、と不敵に笑う。
ファーセリアは宙に浮かせた紅茶をカップに戻し、それに口をつける。
「あら、ちょっと冷めちゃったわね」
ファーセリアの一人言はこの広い玉座の間に沈んで消えた。
※完結です!!
最後の最後までこの作品にお付き合い頂き、本当にありがとうございました!!
拙い文章であったかとは思いますが、少しでも楽しんでいただけたのなら幸いです!
応援ありがとうございます!
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あーもんど様の作品に惹かれて遡って読みふけってしまいましたー。
この作品の舞台は前作品の「婚約破棄に全力感謝」と同じでしょうか?国名が同じだったので、前作のもっと前の時間軸かなーとか色々妄想してしまいました。