69 / 75
第五章
呼び声
しおりを挟む
泣いている場合じゃないのにっ....!
泣きたいのはジェフやノームの筈なのにっ....!
私が泣く資格なんてないのにっ....!
泣くな泣くなと自分に言い聞かせるものの、涙は止めどなく溢れだし私の頬を濡らし続けた。
「....ディ、アナ...な、かな、いで...」
一番苦しいのは....泣きたいのはジェフの筈なのに彼は私を元気付けるようにぎこちない笑みを浮かべた。
その姿がどうしようもなく痛々しく見える。
怪我人であるジェフに慰められるなんて...私はなんて情けないのっ....!!
涙を流す私と痛みに耐えるジェフとノームの横でフィル王子とウンディーネの戦いが繰り広げられていた。
「下等生物である人間には地べたがお似合いですよ。ふふっ」
「かはっ....!私がそう簡単に膝をつくとでも?」
「ふふふっ。根性だけはあるようですね。ですが....根性だけでどうにかなる力の差ではありません」
「根性....ははっ!そうですね。根性だけではどうにも出来ない...。ですがっ!私はディアナ様のために精霊を倒す義務があります!ここで倒れるわけにはいきません!」
「ディアナのため?ふふふっ。面白いことを言うんですね?私達精霊の側に居ることが“ディアナのため”になるんですよ」
フィル王子はウンディーネの血流操作で吐血しつつも、しっかりとその二本の足で立っている。
ウンディーネはそんなフィル王子を興味深そうに観察していた。
ウンディーネはこの状況を確実に楽しんでいる....だって、ウンディーネが本気を出せばフィル王子を殺すことなど容易いもの。
敢えて殺さずに生かしているのはフィル王子の苦痛に歪む顔が見たいから....。
フィル王子をいつ殺すかはウンディーネの裁量次第。
フィル王子はジェフやノームを傷つけたけれど、殺したいほど憎んでいる訳ではない。もちろん一生許す気なんてありませんし、もう二度と口も聞きたくありません。でも....それでも殺したいとはどうしても思えないのっ....!!
血で血を洗う戦いなんて....もう嫌なのっ....!
私のせいで誰かが死んだり、傷ついたりするのはもう嫌....嫌だよっ...!!
「.....ディアナ...サラマ、ンダーを呼んで...きっと君の呼び声には応え、てくれるから...」
ノーム....?何を言って....?
サラマンダーと私は別に主従契約を交わした訳でもないし、テレパシーで繋がっている訳でもない。
要するに私が呼んだところでその呼び声がサラマンダーの届く筈がないのだ。
「私の呼び声が届く訳な...」
「大丈夫....ディア、ナの呼び声なら届くか、ら...」
『届く訳がない』と言い切る前に言葉を遮られ、ノームに『ディアナなら大丈夫』とよく分からない説得をされた。
ノームは横腹を押さえながら、苦しそうに呼吸を繰り返す。
サラマンダーを呼ぶことが出来ればこの状況は好転するだろう。
フィル王子の言うとおり、サラマンダーの使った呪術魔法が使用されているのならきっとサラマンダーが解呪方法を知っている筈。
私の手の平の上でいつの間にか気を失っていたジェフを見て、決意した。
出来るかどうかなんて知らない。分からない。
でも、それしか方法がないのならやるしかないだろう。
もしも、この世に“奇跡”というものがあるのなら、どうかお願いします。今、ここで奇跡を起こしてください....!!
私はスゥーと肺一杯に酸素を取り込むと...令嬢とは思えないほど大きな口を開け....はしたなく大声をあげた。
「────サラマンダァァァァアア!!」
───お願い、助けてっ....!
泣きたいのはジェフやノームの筈なのにっ....!
私が泣く資格なんてないのにっ....!
泣くな泣くなと自分に言い聞かせるものの、涙は止めどなく溢れだし私の頬を濡らし続けた。
「....ディ、アナ...な、かな、いで...」
一番苦しいのは....泣きたいのはジェフの筈なのに彼は私を元気付けるようにぎこちない笑みを浮かべた。
その姿がどうしようもなく痛々しく見える。
怪我人であるジェフに慰められるなんて...私はなんて情けないのっ....!!
涙を流す私と痛みに耐えるジェフとノームの横でフィル王子とウンディーネの戦いが繰り広げられていた。
「下等生物である人間には地べたがお似合いですよ。ふふっ」
「かはっ....!私がそう簡単に膝をつくとでも?」
「ふふふっ。根性だけはあるようですね。ですが....根性だけでどうにかなる力の差ではありません」
「根性....ははっ!そうですね。根性だけではどうにも出来ない...。ですがっ!私はディアナ様のために精霊を倒す義務があります!ここで倒れるわけにはいきません!」
「ディアナのため?ふふふっ。面白いことを言うんですね?私達精霊の側に居ることが“ディアナのため”になるんですよ」
フィル王子はウンディーネの血流操作で吐血しつつも、しっかりとその二本の足で立っている。
ウンディーネはそんなフィル王子を興味深そうに観察していた。
ウンディーネはこの状況を確実に楽しんでいる....だって、ウンディーネが本気を出せばフィル王子を殺すことなど容易いもの。
敢えて殺さずに生かしているのはフィル王子の苦痛に歪む顔が見たいから....。
フィル王子をいつ殺すかはウンディーネの裁量次第。
フィル王子はジェフやノームを傷つけたけれど、殺したいほど憎んでいる訳ではない。もちろん一生許す気なんてありませんし、もう二度と口も聞きたくありません。でも....それでも殺したいとはどうしても思えないのっ....!!
血で血を洗う戦いなんて....もう嫌なのっ....!
私のせいで誰かが死んだり、傷ついたりするのはもう嫌....嫌だよっ...!!
「.....ディアナ...サラマ、ンダーを呼んで...きっと君の呼び声には応え、てくれるから...」
ノーム....?何を言って....?
サラマンダーと私は別に主従契約を交わした訳でもないし、テレパシーで繋がっている訳でもない。
要するに私が呼んだところでその呼び声がサラマンダーの届く筈がないのだ。
「私の呼び声が届く訳な...」
「大丈夫....ディア、ナの呼び声なら届くか、ら...」
『届く訳がない』と言い切る前に言葉を遮られ、ノームに『ディアナなら大丈夫』とよく分からない説得をされた。
ノームは横腹を押さえながら、苦しそうに呼吸を繰り返す。
サラマンダーを呼ぶことが出来ればこの状況は好転するだろう。
フィル王子の言うとおり、サラマンダーの使った呪術魔法が使用されているのならきっとサラマンダーが解呪方法を知っている筈。
私の手の平の上でいつの間にか気を失っていたジェフを見て、決意した。
出来るかどうかなんて知らない。分からない。
でも、それしか方法がないのならやるしかないだろう。
もしも、この世に“奇跡”というものがあるのなら、どうかお願いします。今、ここで奇跡を起こしてください....!!
私はスゥーと肺一杯に酸素を取り込むと...令嬢とは思えないほど大きな口を開け....はしたなく大声をあげた。
「────サラマンダァァァァアア!!」
───お願い、助けてっ....!
0
お気に入りに追加
4,383
あなたにおすすめの小説
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
愛するつもりなぞないんでしょうから
真朱
恋愛
この国の姫は公爵令息と婚約していたが、隣国との和睦のため、一転して隣国の王子の許へ嫁ぐことになった。余計ないざこざを防ぐべく、姫の元婚約者の公爵令息は王命でさくっと婚姻させられることになり、その相手として白羽の矢が立ったのは辺境伯家の二女・ディアナだった。「可憐な姫の後が、脳筋な辺境伯んとこの娘って、公爵令息かわいそうに…。これはあれでしょ?『お前を愛するつもりはない!』ってやつでしょ?」
期待も遠慮も捨ててる新妻ディアナと、好青年の仮面をひっ剥がされていく旦那様ラキルスの、『明日はどっちだ』な夫婦のお話。
※なんちゃって異世界です。なんでもあり、ご都合主義をご容赦ください。
※新婚夫婦のお話ですが色っぽさゼロです。Rは物騒な方です。
※ざまあのお話ではありません。軽い読み物とご理解いただけると幸いです。
※おまけ更新中です。
婚約解消は君の方から
みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。
しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。
私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、
嫌がらせをやめるよう呼び出したのに……
どうしてこうなったんだろう?
2020.2.17より、カレンの話を始めました。
小説家になろうさんにも掲載しています。
我慢してきた令嬢は、はっちゃける事にしたようです。
和威
恋愛
侯爵令嬢ミリア(15)はギルベルト伯爵(24)と結婚しました。ただ、この伯爵……別館に愛人囲ってて私に構ってる暇は無いそうです。本館で好きに過ごして良いらしいので、はっちゃけようかな?って感じの話です。1話1500~2000字程です。お気に入り登録5000人突破です!有り難うございまーす!2度見しました(笑)
【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。
やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。
落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。
毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。
様子がおかしい青年に気づく。
ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。
ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
最終話まで予約投稿済です。
次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。
ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。
楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。
取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので
モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。
貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。
──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。
……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!?
公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。
(『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)
自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?
長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。
王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、
「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」
あることないこと言われて、我慢の限界!
絶対にあなたなんかに王子様は渡さない!
これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー!
*旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。
*小説家になろうでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる