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第五章

怒り 1

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 私───ディアナとノームがダンスに一区切りがついた頃、サラマンダーが帰ってきた。
 程よい汗をかき、それをタオルで拭いながらサラマンダーを見つめる。
 なんだか少し怒ってる....?
 表情にこそ出さないが、サラマンダーは帰ってきてからずっと不機嫌だ。
 何かあったのだろうか?
 野暮用が出来たから精霊国に行ってくると言っていたが、精霊国で何か予期せぬトラブルでもあったのかな?
 何かあったのか、と聞いて良いものなのか分からず、とりあえず様子を見ることにした。

「....ディアナ、前よりずっと上手になったね」

「ほんとに?」
 
「うん。劇的に上手くなってるからビックリした」

 ノームにダンスを褒めてもらった私はだらしなく頬を緩める。
 だって、ノームにここまで褒めてもらうことってないんだもの。
 嬉しくて仕方ない私は満面の笑みを浮かべていることだろう。

「ねぇ、ノー...」  

 『ノーム』と呼ぶ前に凄まじい破壊音が鼓膜を揺らした。
 ドカァンと隕石でも落下したのかと思うほどの破壊音。
 な、なに!?
 衝撃の余波で建物が小刻みに揺れた。

「ディアナっ!」

「危ないっ!」

 建物の揺れでバランスを崩した私をサラマンダーとノームが支えてくれた。
 あ、危なかった....。
 この部屋は物が少ないため、私が転びそうになっただけで済んだが他の部屋はそうとは限らない。 
 十中八九、物による雪崩が起きていることだろう。
 家具の固定などはしていないので最悪誰かが物の下敷きになっている可能性もあり得る。
 早く屋敷内を見て回らないと!
 
「私、屋敷内を見てく...」

「待て待て。今は危険だ。ディアナはノームと一緒にここに居ろ。屋敷内は俺が見て回るから」 

「で、でも....!!」
 
「....サラマンダーの言う通りだよ。ディアナはここで僕と一緒に居るべきだ」

 食い下がろうとする私に二人は厳しい目を向ける。
 .....分かった。ここでノームと大人しくしてる。
 コクンと小さく頷くと二人は安心したようにホッと息を吐いた。

「じゃあ、俺は屋敷内を見て回るからディアナのことを頼むぞ、ノーム」

「......分かってるよ」

 サラマンダーは素っ気ない返事を返すノームに若干呆れつつも部屋の扉に手をかける。
 その背中はどこまでも頼もしいのに...どこか怒っているように見えた。
 サラマンダーだけじゃない....ノームの雰囲気も少しピリついている。
 どうしたんだろう?
 私には彼らが何故怒っているのか分からない。分からないんだ....。
 そして、彼らはきっと怒っている理由わけを私に話すことはないだろう。
 何故だか....そう思ってしまった。
 
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