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第四章

苦手

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 私───ディアナはまだお昼前だと言うのに既に自宅に戻っていた。
 理由はただ一つ....ウンディーネが生徒へ危害を加えたから。
 ウンディーネは『殺さずに痛め付ける』という宣言通り、決して殺しはしなかったが多くの生徒に怪我を負わせ、恐怖を植え込んだ。
 教師陣は現場に駆けつけるなり、私に自宅へ帰るよう促してきた。

『でぃ、ディアナ様今日はお帰りになられてください....。ほ、ほら!これでは授業も出来ませんし....!け、決して『帰れ』と命令している訳ではありませんよ...!?』

 私に命令すればウンディーネの機嫌が悪くなると理解しているのか、あくまで先生達は私に帰るよう“勧める”だけ。
 だが、その顔には『早く帰れ!』と確かに書いてあった。
 私を迷惑そうに見つめる先生達の視線に耐えきれず、今日もまた早退してしまいましたが...このままでは学校を退学させられるかもしれません。
 良くて停学と言ったところでしょうか?

「はぁ....」

「ディアナ、溜め息なんてついてどうしたんです?暗い顔は貴方に似合いませんよ」

 ニコッと微笑むのは金髪碧眼の美青年。
 黄金に輝くサラサラの金髪に海のように深い青の瞳。肌は水のように透明感のある白さだ。
 眼鏡を押し上げ、近くのソファに腰掛ける彼は本来の姿をしたウンディーネである。
 視力なんて大して悪くないのに小さい頃私がウンディーネに『眼鏡凄く似合ってるよ!』と言って以来ずっと付けているのだ。
 他にも私が似合うと言った服やアクセサリーなんかもずっと身に付けている。

「ディアナ、何か悩みごとがあるなら聞きますよ?それとも、私に言えないようなことですか?」

 ふわりと優しく微笑む彼の瞳は慈愛に満ち溢れている。
 誰もこんな優しい雰囲気を纏う人がさっきまで残忍な笑みを浮かべながら人を痛め付けていたとは思わないだろう。
 私には凄く優しいのに....他の人間には驚くほど冷たい。一欠片の優しさだって他の人間には決して与えない。
 そんなウンディーネが.....私はどうしようもなく苦手だ。
 他の精霊達も苦手だが、彼は格が違う。

「ディアナ....?考え事も結構ですが、私の質問に答えてください...ねっ?」

 さっきまでソファに座っていた筈のウンディーネがいつの間にか目の前に居た。
 私の両手を優しく包み込み、柔らかい表情を浮かべるウンディーネ。

「ディアナ、私は貴方の力になりたいんです。だから、どうか私に悩みを打ち明けてください」

 言葉も表情も優しいのに....この冷えきった氷のように冷たい手が私の気力を奪っていく。
 思考が氷みたいに固まって、次の瞬間にはドロドロに溶けていくんだ.....。
 別に魔法を使われた訳でもないのに不思議....。
 ウンディーネに尋問されるのは嫌い。
 だって、抵抗できないから。
 『ごめん。言えない』と断れば良いのに、何か言わなくちゃと思ってしまう。
 だから、私はウンディーネが苦手。
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