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第三章
その頃のサラマンダーは (ブラウンの過去編) 7
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自分の血で魔法陣を描くなんて如何にも悪魔を呼び出しますって感じだな。
あとは“聖水堕ち”を一滴魔法陣の上に垂らして...。
聖水堕ちとは聖水が何かに汚されて黒く濁ったものを指す言葉だ。
「地の奥深くに眠る 悪魔達よ 今一度 我の呼び掛けに応えたまえ 我 汝の力を欲す 呼び掛けに応じ 今一度 姿を現したまえ
───Demon summon(悪魔召喚)」
魔法陣を用いて魔法を使うのは初めてのため、本当にこれであっているのか今になって不安になってくる。
大丈夫....だよな?
冷や汗がポトリと頬を伝って私の手の甲に落ちたそのとき、魔法陣から大量の黒い靄が溢れだした。
なっ、んだ?これ.....。
ただただ呆然と目の前に広がる光景を見つめる。
大量の黒い靄はウネウネとそこら辺を動き回ると突然一ヶ所に集まり出した。
そして、その黒い靄から一人の女性が現れる。
灰色の長い髪を靡かせ、綺麗な黄緑色の瞳を細める女性は私を目にした途端ニヤリと妖しく笑った。
「まさか、妾を呼び出したのがこんな小さな子供だとは...。まあ、良い。まずは最初に自己紹介と行こうかのぉ。妾は忘却の悪魔 レーテーじゃ。そなたは?」
「......ぶ、ブラウン...」
「ほう、ブラウンか。して、何故妾を呼び出した?まさかただの遊び感覚で呼び出したとは言うまいなぁ?」
「ちっ、違う!そんな下らないことで悪魔を呼び出したりなんてしない!」
そうだ、私はそんな下らない理由で悪魔を呼び出したんじゃない。
きちんとした願いがあって呼び出したんだ。
真剣な表情を浮かべる私を忘却の悪魔 レーテーは一瞥する。
「ふむ....。まあ、遊びでないなら良い。して、そなたは何故妾を呼び出...」
「私と契約してくれ!」
「随分と唐突じゃな....。まあ、まずは話を聞こうではないか」
レーテーはうようよと宙を漂う靄に手を突っ込むとそこから扇を取り出した。
その靄は空間魔法の一種なのだろうか?
レーテーは扇で口元を隠すと目だけで話を促してくる。
まるで『妾を待たせるな』とでも言っているようだ。
「お前、記憶を司る悪魔なんだろ?なら、私が平民との間に出来た妾の子だということを全世界の人々の記憶から消し、代わりに私はダミアン陛下とクレア王妃の間に生まれた正妻の子という記憶を人々に植え込んでほしい」
「ほう....。なかなか面白いことを言いよる。して、そなたは妾に何を差し出せる?」
「全部だ。出来れば、命は取らないでほしいがこの願いが叶うのなら何でも差し出そう」
「ふははははっ!悪魔に『何でも差し出す』と申すか?ふははっ!なかなか肝の据わった奴よ。面白い。忘却の悪魔 レーテーがそなたと契約してやろう。丁度食料に困っておったからな」
食料....?やはり、私は食べられるのだろうか?
不安げに顔を歪める私をレーテーは笑い飛ばす。
「ふははははっ!安心せい。妾の食料は記憶じゃ。そなたの記憶を食べさせてくれれば、妾はそれで満足じゃ。そなたの命などいらぬ」
よ、良かった....!!
なるほど。だから忘却の悪魔と呼ばれているのか。
レーテーに記憶を食べられた者たちはその記憶を失うから、忘却の悪魔。
レーテーによく似合う通り名だ。
あとは“聖水堕ち”を一滴魔法陣の上に垂らして...。
聖水堕ちとは聖水が何かに汚されて黒く濁ったものを指す言葉だ。
「地の奥深くに眠る 悪魔達よ 今一度 我の呼び掛けに応えたまえ 我 汝の力を欲す 呼び掛けに応じ 今一度 姿を現したまえ
───Demon summon(悪魔召喚)」
魔法陣を用いて魔法を使うのは初めてのため、本当にこれであっているのか今になって不安になってくる。
大丈夫....だよな?
冷や汗がポトリと頬を伝って私の手の甲に落ちたそのとき、魔法陣から大量の黒い靄が溢れだした。
なっ、んだ?これ.....。
ただただ呆然と目の前に広がる光景を見つめる。
大量の黒い靄はウネウネとそこら辺を動き回ると突然一ヶ所に集まり出した。
そして、その黒い靄から一人の女性が現れる。
灰色の長い髪を靡かせ、綺麗な黄緑色の瞳を細める女性は私を目にした途端ニヤリと妖しく笑った。
「まさか、妾を呼び出したのがこんな小さな子供だとは...。まあ、良い。まずは最初に自己紹介と行こうかのぉ。妾は忘却の悪魔 レーテーじゃ。そなたは?」
「......ぶ、ブラウン...」
「ほう、ブラウンか。して、何故妾を呼び出した?まさかただの遊び感覚で呼び出したとは言うまいなぁ?」
「ちっ、違う!そんな下らないことで悪魔を呼び出したりなんてしない!」
そうだ、私はそんな下らない理由で悪魔を呼び出したんじゃない。
きちんとした願いがあって呼び出したんだ。
真剣な表情を浮かべる私を忘却の悪魔 レーテーは一瞥する。
「ふむ....。まあ、遊びでないなら良い。して、そなたは何故妾を呼び出...」
「私と契約してくれ!」
「随分と唐突じゃな....。まあ、まずは話を聞こうではないか」
レーテーはうようよと宙を漂う靄に手を突っ込むとそこから扇を取り出した。
その靄は空間魔法の一種なのだろうか?
レーテーは扇で口元を隠すと目だけで話を促してくる。
まるで『妾を待たせるな』とでも言っているようだ。
「お前、記憶を司る悪魔なんだろ?なら、私が平民との間に出来た妾の子だということを全世界の人々の記憶から消し、代わりに私はダミアン陛下とクレア王妃の間に生まれた正妻の子という記憶を人々に植え込んでほしい」
「ほう....。なかなか面白いことを言いよる。して、そなたは妾に何を差し出せる?」
「全部だ。出来れば、命は取らないでほしいがこの願いが叶うのなら何でも差し出そう」
「ふははははっ!悪魔に『何でも差し出す』と申すか?ふははっ!なかなか肝の据わった奴よ。面白い。忘却の悪魔 レーテーがそなたと契約してやろう。丁度食料に困っておったからな」
食料....?やはり、私は食べられるのだろうか?
不安げに顔を歪める私をレーテーは笑い飛ばす。
「ふははははっ!安心せい。妾の食料は記憶じゃ。そなたの記憶を食べさせてくれれば、妾はそれで満足じゃ。そなたの命などいらぬ」
よ、良かった....!!
なるほど。だから忘却の悪魔と呼ばれているのか。
レーテーに記憶を食べられた者たちはその記憶を失うから、忘却の悪魔。
レーテーによく似合う通り名だ。
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