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第三章

その頃のサラマンダーは (ブラウンの過去編) 6

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 私────ブラウンはダミアン陛下と使用人ジェシカの間に生まれた所謂妾の子というやつだった。
 早い話が平民と王族の間に出来た忌まわしい子供だということ。
 母が貴族であれば側室に迎い入れれば良い話なのだが、残念ながら母は平民。
 しかも、不幸なことに母は私を産んですぐに亡くなった。
 身寄りのない母の子供である私は孤児院へ預けられるか、殺されるしか選択肢がなく絶望的な状況であった。
 それを救ってくれたのはダミアン陛下の正妻であり王妃であったクレア様。

『私が責任を持って育てます』

 とハッキリ言い、床に転がって泣き喚いていた私を優しく抱っこしてくれた。

『貴方は今日から私の子です。貴方の本当のお母さんに負けないくらい愛を注ぎますからね』

 クレア王妃は他国から嫁いできた王女様だということもあり、それなりに権力を有していたため文句を言う者は居れど逆らう者は誰一人として居なかった。

◆◇◆◇

 そして、私が五歳のとき。
 クレア王妃は持病により、死去した。
 私は平民との間に出来た妾の子ということで使用人や貴族なんかに馬鹿にされることはあったが、クレア王妃の後ろ盾のおかげか表だって私の悪口を言う者は居なかった。
 だが、それもここまで。
 クレア王妃が死去したと知った途端、みんな驚くほどの大声で私の悪口を言い合い高らかに笑っていた。
 私は唯一の味方を失い、途方に暮れていた。
 上の兄二人は国王になるためのお勉強で忙しいらしく、会える機会は極めて少ない。
 その上、彼らは私のことに興味がなさそうだった。
 周りから罵倒される日々を送っていたある日、たまたま父の書斎の前を通り掛かったとき聞いてしまったんだ。

『ブラウンを殺せ。あいつは目障りだ。魔法の才能も大したことないしな。使い道がない』

 それは確かに父の声だった。
 父とは数度しか会ったことがないが、それでも確かにこの声は父だと私は確信していた。
 私はこのまま死ぬのか....?妾の子だから?たったそれだけの理由で?
 この世界はなんて理不尽なんだろう?
 私を愛してくれた唯一の味方を奪い、私の命まで奪い去ろうと言うのか....?
 ただ私は生きたいだけなんだ。誰かに愛されたいだけなんだ。
 そんなことすらも願ってはいけないのだろうか?
 私には過ぎた望みなのだろうか?
 .......違う。何も過ぎた望みなんかじゃない。
 誰に願っても叶えてもらえないなら、私自身が叶えれば良い。
 そのためには手段を選ばない....。
 私は書庫を訪れ、禁書と呼ばれるエリアの本を一冊手に取った。

「悪魔の....呼び出し方?」

 悪魔....。
 そうか、悪魔の手を借りるとしよう。
 願いを叶えるためなら、なんだって構わない。
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