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第二章

ディアナ様は疲れている 2

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 帰りたい...フカフカのベッドで横になりたい。
 ベッドを思い浮かべたら、帰りたい気持ちがより一層強くなった。

「おいっ!私の話を聞かんか!大馬鹿者!」

 ブラウン王子にだけは言われたくないですね。大馬鹿者とは貴方のことを言うんですよ。
 周りは私とブラウン王子のやり取りに興味津々。中には『ディアナ様になんてことを...!』と頭を抱える者も居るが....。
 頭を抱えたいのは私の方ですよ....。
 もう誰でも良いのでこの人をどうにかしてください。

「ん?そういえば、あの男は一緒じゃないんだな!と言うことは、お前を守る奴は誰も居ないわけだ」

 居ますよ?私の肩の上に。今朝貴方がガクガク震えながら怖がっていた男の人が。
 今はミニ飛竜に姿を変えていますが、姿形が変わってもサラマンダーの力は変わらない。
 ブラウン王子を一瞬で消し炭に変えることなどサラマンダーからすればお茶を入れることよりも簡単なことだ。
 喋るのすら億劫で一向に口を開かない私を見て、何を思ったのかブラウン王子はドヤ顔を披露してくる。

「図星を突かれて押し黙るとはな!ふはははっ!」

 あぁ、なるほど。
 私が図星を突かれて黙っていると勘違いしているのですね。
 『そうじゃない』と否定する気力もないのでそのまま無言を貫く。
 本来であれば、一国の王子相手にこのような態度を取るのは絶対NG。場合によっては不敬罪として裁かれてしまいますから。

「なんとか言ってみたらどうだ?今ならお前の下らない言い訳でも聞いてやるぞ?」

 言い訳も何も貴方の言っていることは全てただの勘違いで事実無根の嘘なんですが....。
 はぁ、と思わず溜め息をついてしまった。
 はっ!やってしまった....!王子様の前で溜め息を付くなんて...こんなミス初めてだ。
 初歩的なミスを犯してしまうほど疲れてるってことでしょうか?

「なっ!?私の前で溜め息とは随分と余裕じゃないか、ディアナ....いや、この淫乱女っ!」

 顔を真っ赤にして激怒するブラウン王子はあろうことか私の方へ手を伸ばしてきた。
 それにサラマンダーが大袈裟なくらい反応する。
 あらら、ブラウン王子御愁傷様です。

「い”ぃ!?」

 私の方へ伸ばされたブラウン王子の右腕はサラマンダーの炎魔法によって消し炭にされた。
 本当に右腕“だけ”綺麗に失くなったのだ。
 ブラウン王子は傷口を押さえながら、その場にしゃがみこむ。

「俺達の愛するディアナに一度だけではなく、二度までも危害を加えようとするとは....学習しないガキだな」

「あっ、ぅ...ぃや、これは....」

 怒気を含んだサラマンダーの声色に完全に萎縮してしまっているブラウン王子。
 痛みよりも恐怖の方が勝っているらしく、傷口を押さえていた手から力が抜けている。
 ブラウン王子は視線をさ迷わせながら必死にサラマンダーの姿を探しているようだった。
 『声は聞こえるのに姿がないっ!』と顔に書いてある。
 ブラウン王子の思考回路は謎ですが、反応は分かりやすいですよね。
 ダラダラと尋常じゃないほどの汗をかいて、未だに視線を右へ左へさ迷わせているブラウン王子。
 さっきまでの威勢はどこへやら....。
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