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第一章

婚約破棄 4

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 精霊国とはその名の通り、精霊が住む国である。
 精霊国は神秘の森に囲まれたところにあり、普通の者では近づくことも出来ない。
 神秘の森が精霊以外の者を拒むからだ。
 だから、精霊国は謎のベールに包まれている。
 そんな精霊国に精霊以外で自由に出入り出来るのは私だけ。
 何故か私は神秘の森に受け入れられているのだ。
 そんな精霊国に一緒に住もうと何度も精霊達に誘われたが、私はそれを断固として拒んできた。
 だって、精霊国に住んでしまったらなかなか家族や友人に会えなくなるもの。精霊達のことはもちろん大好きだし、家族みたいに思っているが本当の家族や友人だって大切だ。
 だから、私は拒み続けている。
 でも、私の意見が通っているのはあくまで人族が私に危害を加えていないから。人族が私に危害を加えれば、私は半強制的に精霊国へ永住することになるだろう。
 先程のブラウン王子の攻撃だってギリギリのラインだ。

「わっ、私を豚だと....!?き、貴様ぁぁぁああ!!」

「豚だろ、どっからどう見ても」

「なっ、ななっ!?ぶ、無礼だ!誰かこやつを捕らえろ!打ち首にしてくれる!」

 サラマンダーを打ち首...?
 ブラウン王子は知らないのだろうか?精霊達が不老不死であることを。
 ブラウン王子は恐らくサラマンダーを殺すって意味で『打ち首にしてくれる!』と仰ったのでしょうが、残念ながら精霊は死なない生き物。
 おまけにサラマンダーに限らず精霊達の皮膚は鋼並みに硬い。あくまで攻撃を受けたときだけだが。
 普段は私達人間と変わらず、柔らかいが危険を察知すれば精霊達の皮膚は瞬く間に鋼並みの硬さへ変化する。
 これらの知識は精霊を知っている者ならば知っていて当然の知識なのですが....ブラウン王子は知らないのでしょうか?それとも知っていて言っているのでしょうか?

「お前達!何をやっている!今すぐこの男を捕らえろ!」

 ブラウン王子の命令に従う者は誰一人として居なかった。
 皆そろ~っと目を逸らし、我関せずを突き通す。
 そんな周りの対応にブラウン王子は地団駄踏んだ。

「貴様らぁぁぁああ!!あとで覚えていろ!貴様ら全員牢獄へブチ込んでくれる!」

 そう叫ぶブラウン王子を尻目に私は大時計に目を移した。
 あら、大変!もうこんな時間だわ!
 1限目が始まるまでもうそんなに時間はない。
 ブラウン王子が周りの生徒達に喚き散らしている間にそそくさと逃げてしまいましょうか。
 サラマンダーに後ろから抱き締められたまま歩きだそうとした、そのとき!

「ブラウン!貴様、なんてことをしているんだ!」

 スターリ国国王ダミアン陛下が登場なさった。
 まさかの国王の登場により、私は踏み出そうとした足を慌てて引っ込める。
 ダミアン陛下直々にこちらにいらっしゃるなんて...!
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