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第四章
贈り物 2
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生首をどうするかという結論は結局その場では出ず、溶けかけていた氷魔法の上に重ねるようにまた氷魔法をかけ、一旦保留にした。
アーサー殿下に蓋を閉めてもらい、ジェシカに奥の部屋にこの箱を置いておくよう指示を出す。
ジェシカは生首が入ったそれを嫌な顔一つせず、手に持ち後ろに下がっていった。
ジェシカは侍女の鏡ね。いくら、完璧な侍女でも生首が入った箱を嫌な顔一つせずに持つことなんて出来ないと思うわ。
あとでジェシカにご褒美をあげましょう、と密かに思いながら、アーサー殿下と向き合った。
「それで、アーサー殿下のお話しというのはあれだけでしょうか?」
「あっ、いや違う違う。確かにあれの話もあったけど、本題は別」
『生首が入った箱』と言うのはなんだか気が引けて『あれ』と言葉を置き換えた。
あら?本題は別なんですね。てっきり、あれが本題なのかと思っていました。
ジェシーが淹れてくれた紅茶を口に含む。
アールグレイね。この鼻に抜ける香りがなんとも言えないわ。ジェシーの淹れる紅茶はどれも美味しくてついつい飲み過ぎてしまうのが最近の悩み。いつの間にかお腹がタプタプになってしまっているの。
次はダージリンを淹れてもらおうかと考えていると、アーサー殿下が口を開いた。
「今日の朝、丁度フェガロフォス国の平民達が到着してね....魔の森に何の躊躇いもなく入り込もうとしたのを慌てて止めたよ」
『あははっ!』と声をあげて笑う殿下につられて私も少し口角が上がる。
そういえば、フェガロフォス国の平民達はソル国に限らず、他国の特色や特徴などあまり知らないものね。
ソル国にある魔の森はとても有名な話ですが、フェガロフォス国の平民達はそれも知らなかったようです。
「魔の森に入る前になんとか全員保護して、今は辺境伯領に預けている。辺境伯は優しい方でね、フェガロフォス国の平民達を全て引き取りたいと言っているんだ。辺境伯は優しくて王家からの信頼も厚い。任せても良いと思うんだが、どうだろう?一応ルーナ嬢に確認を取ってからと思って、辺境伯にはまだ返事はしてない」
「アーサー殿下が信頼できると仰るお方なら、是非お願いしたいですわ」
「ははっ!ルーナ嬢ならそう言ってくれると思ってたよ。辺境伯にはあとで使いを出して、そのことを伝えておくよ」
「はい。よろしくお願いいたします」
辺境伯領なら、フェガロフォス国の平民達もそれなりに役立つでしょう。辺境伯領はどこの国も基本的に畑仕事が多いですし。あとは国境の警備とか。
教養がないフェガロフォス国の平民達でもすぐに働くことができるでしょう。
「それで、ルーナ嬢の話を聞いても?」
「ええ、勿論です。実は近い内にフェガロフォス国の貴族達とライアン陛下がこちらにいらっしゃる、という情報を手に入れまして」
「ほう?ライアン殿下....ではなくて、ライアン陛下と貴族達が、ね。それは面白いことになりそうだ」
「はい。実はそこで少し相談がありまして。そのライアン陛下と貴族達の対応を私に一任してほしいのです」
「え?それは別に構わないけど....」
『何故?』と目だけで訴えかけてくるアーサー殿下に私は笑ってみせた。
何故、ね。そんなの決まっている。
復讐は自分の手でやらなくては意味がない。ただそれだけ。
遊びだって遠くから眺めているだけでは詰まらないでしょう?遊びは参加しないと楽しくないもの。
今まではずっと遠くから眺めるだけでしたが、ここからは私も“遊び”に参加させて頂きましょう。
悪魔の復讐という名の“遊び”は
────どちらかの死をもってして終了する。
どちらかが死ぬまで終わらない“遊び”に勝利するのは一体誰なんでしょうね?
アーサー殿下に蓋を閉めてもらい、ジェシカに奥の部屋にこの箱を置いておくよう指示を出す。
ジェシカは生首が入ったそれを嫌な顔一つせず、手に持ち後ろに下がっていった。
ジェシカは侍女の鏡ね。いくら、完璧な侍女でも生首が入った箱を嫌な顔一つせずに持つことなんて出来ないと思うわ。
あとでジェシカにご褒美をあげましょう、と密かに思いながら、アーサー殿下と向き合った。
「それで、アーサー殿下のお話しというのはあれだけでしょうか?」
「あっ、いや違う違う。確かにあれの話もあったけど、本題は別」
『生首が入った箱』と言うのはなんだか気が引けて『あれ』と言葉を置き換えた。
あら?本題は別なんですね。てっきり、あれが本題なのかと思っていました。
ジェシーが淹れてくれた紅茶を口に含む。
アールグレイね。この鼻に抜ける香りがなんとも言えないわ。ジェシーの淹れる紅茶はどれも美味しくてついつい飲み過ぎてしまうのが最近の悩み。いつの間にかお腹がタプタプになってしまっているの。
次はダージリンを淹れてもらおうかと考えていると、アーサー殿下が口を開いた。
「今日の朝、丁度フェガロフォス国の平民達が到着してね....魔の森に何の躊躇いもなく入り込もうとしたのを慌てて止めたよ」
『あははっ!』と声をあげて笑う殿下につられて私も少し口角が上がる。
そういえば、フェガロフォス国の平民達はソル国に限らず、他国の特色や特徴などあまり知らないものね。
ソル国にある魔の森はとても有名な話ですが、フェガロフォス国の平民達はそれも知らなかったようです。
「魔の森に入る前になんとか全員保護して、今は辺境伯領に預けている。辺境伯は優しい方でね、フェガロフォス国の平民達を全て引き取りたいと言っているんだ。辺境伯は優しくて王家からの信頼も厚い。任せても良いと思うんだが、どうだろう?一応ルーナ嬢に確認を取ってからと思って、辺境伯にはまだ返事はしてない」
「アーサー殿下が信頼できると仰るお方なら、是非お願いしたいですわ」
「ははっ!ルーナ嬢ならそう言ってくれると思ってたよ。辺境伯にはあとで使いを出して、そのことを伝えておくよ」
「はい。よろしくお願いいたします」
辺境伯領なら、フェガロフォス国の平民達もそれなりに役立つでしょう。辺境伯領はどこの国も基本的に畑仕事が多いですし。あとは国境の警備とか。
教養がないフェガロフォス国の平民達でもすぐに働くことができるでしょう。
「それで、ルーナ嬢の話を聞いても?」
「ええ、勿論です。実は近い内にフェガロフォス国の貴族達とライアン陛下がこちらにいらっしゃる、という情報を手に入れまして」
「ほう?ライアン殿下....ではなくて、ライアン陛下と貴族達が、ね。それは面白いことになりそうだ」
「はい。実はそこで少し相談がありまして。そのライアン陛下と貴族達の対応を私に一任してほしいのです」
「え?それは別に構わないけど....」
『何故?』と目だけで訴えかけてくるアーサー殿下に私は笑ってみせた。
何故、ね。そんなの決まっている。
復讐は自分の手でやらなくては意味がない。ただそれだけ。
遊びだって遠くから眺めているだけでは詰まらないでしょう?遊びは参加しないと楽しくないもの。
今まではずっと遠くから眺めるだけでしたが、ここからは私も“遊び”に参加させて頂きましょう。
悪魔の復讐という名の“遊び”は
────どちらかの死をもってして終了する。
どちらかが死ぬまで終わらない“遊び”に勝利するのは一体誰なんでしょうね?
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