婚約破棄に全力感謝

あーもんど

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第一章

ある令嬢が思うには 3

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 ライアン殿下は鼻を押さえながら、涙目になってレナード陛下とレーナ王妃を見上げた。
 この程度で涙目なんて....男のくせに情けないですね。
 誰もが白けた目でライアン殿下を見下ろし、フェガロフォス国のこれからを案じていた。

「ライアン!お前のせいで我が国は終わりだ!貧乏国に戻るだけではなく、他国に戦争を仕掛けられるかもしれん!」

「火の精霊サラマンダーが去り、そこに丁度現れたのがルーナだったのですよ!サラマンダーが去ったことにより、いつ戦争を仕掛けられても可笑しくない状況で世界最強の魔導師であるルーナが現れてくれたからこそ、この国は他国に吸収されず、平和に暮らしてこれたのです!それを貴方は....!!」

 レーナ王妃は堪らず、ライアン殿下の頬をビンタ。パチン!と乾いた音がこの空間にはよく響いた。
 火の精霊サラマンダーとは“元”この国を守護する精霊です。四大精霊と言われるサラマンダーがこの国を守ってくれていたからこそ、他国からの脅威を退けてきていたのです。ですが、サラマンダーは今の国王───レナード陛下が国王の座についた途端、『俺、この国の守護やめるわ』と言い残して去っていってしまったみたいです。詳細は不明ですが、恐らくレナード陛下のことが気に入らなかったのでしょう。サラマンダーに限らず、精霊たちは何にも縛られない自由な存在なので。
 もう何百年も我が国を守護してくれたサラマンダーですが、それはあくまでそれぞれの代の国王を気に入っていたから。精霊が何代も続けてその家系の者を気に入るのはとても珍しいことです。ですが、その伝統もレナード陛下で途絶え、サラマンダーを失ったフェガロフォス国の未来を心配する声が上がるなか現れたのがルーナ様だった。ルーナ様の働きは正直サラマンダー以上。サラマンダーはあくまで守護しか出来ませんでしたが、ルーナ様は色んな場面でその頭脳と魔法と用いて活躍されていましたから。
 そんなルーナ様を失った今、我が国に輝かしい未来はまずないでしょう。サラマンダーを失ったときのように都合よくまたルーナ様みたいな方が現れるとは思えませんし。

「ちっ、父上!母上!ルーナが何故そんなにも重要な人物なのか私には分かりません!ルーナが居なくとも、我が国は貧乏になることはありません!我が国にはレアメタルと数々の特産品が...」

「黙れっ!!」

 ドカッという鈍い音とともにライアン殿下は床にうずくまった。どうやら、レナード陛下がライアン殿下の鳩尾を蹴り上げたらしい。
 特産品はさておき、レアメタルは主にレナード陛下のせいでもうほとんど残っていませんもんね。お父様が『あんの...馬鹿王!レアメタルを半分以上売りに出しやがって!』と溢していたので知っています。レアメタルの件は極一部の方しか知りませんが、それがバレるのも時間の問題でしょう。
 ルーナ様が居るから大丈夫だと調子こいた罰ですよ。
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