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第二章
お茶会《エレン side》②
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「とりあえず、体調不良の原因である毒は薬で打ち消したのですが……他二人に比べて摂取量が多かったからか、それとも耐性の問題か凄い効き目で……解毒する頃には、もう脳や心臓まで影響を受けていまして……」
『こうなっては、どうしようもありません……』と零し、宮廷医師の男性は額に手を当てた。
「イライザ皇后陛下の体力や衰弱具合からして、恐らく今夜が峠でしょう」
『明日を迎えられる可能性が、低い』と説明する宮廷医師の男性に、私は瞳を揺らす。
と同時に、俯いた。
こうなったのは間違いなく、私のせいだ。
もっと、警戒するよう言っていたら……せめて、あの果実水を飲まないよう進言していたら母上は無事だったかもしれない。
状況からして毒が混入したのはあの飲み物しか考えられないため、己の浅慮を恥じる。
メリッサ皇妃殿下とマーティンが先に口をつけたからと言って油断するべきじゃなかった、と。
恐らく、あの行動はパフォーマンスだったから。こちらにより確実に毒を飲ませるための……。
それに自分達も中毒症状を起こして被害者になれば、自然と容疑者候補から外れられるため。
まあ、あくまで『表面上は』だが。
あの二人はあまりにも、回復が早すぎた。
飲む量を減らしすぎたのか、その毒の耐性を付けすぎたのかは定かじゃないけど、重篤患者の母上との差が凄まじい。
故意を疑うのは、当然と言える。
『果実水だって、あちらの用意したものだし』と思いつつ、私は一つ深呼吸した。
腹の底から、湧き上がってくる怒りを鎮めるように。
「母上、私が必ず貴方を苦しめた者達を懲らしめてみせます。ですから、どうか安らかにお眠りください」
まだ温かい母の手をそっと握り締め、私は静かにそのときを待った。
────間もなくして母が息を引き取り、葬式を執り行う。
そして、最後のお別れを済ませると、私は一気に気持ちを切り替えた。
『悲しむのはここまで。これからは怒りを糧に、反撃していこう』と。
でも────
「えっ?実行犯が捕まって、捜査終了?」
────メリッサ皇妃殿下の方が一枚上手とでも言うべきか、さっさと事態を収束させてしまった。
なので、もう騎士団は動かせない。
『こうなっては、どうしようもありません……』と零し、宮廷医師の男性は額に手を当てた。
「イライザ皇后陛下の体力や衰弱具合からして、恐らく今夜が峠でしょう」
『明日を迎えられる可能性が、低い』と説明する宮廷医師の男性に、私は瞳を揺らす。
と同時に、俯いた。
こうなったのは間違いなく、私のせいだ。
もっと、警戒するよう言っていたら……せめて、あの果実水を飲まないよう進言していたら母上は無事だったかもしれない。
状況からして毒が混入したのはあの飲み物しか考えられないため、己の浅慮を恥じる。
メリッサ皇妃殿下とマーティンが先に口をつけたからと言って油断するべきじゃなかった、と。
恐らく、あの行動はパフォーマンスだったから。こちらにより確実に毒を飲ませるための……。
それに自分達も中毒症状を起こして被害者になれば、自然と容疑者候補から外れられるため。
まあ、あくまで『表面上は』だが。
あの二人はあまりにも、回復が早すぎた。
飲む量を減らしすぎたのか、その毒の耐性を付けすぎたのかは定かじゃないけど、重篤患者の母上との差が凄まじい。
故意を疑うのは、当然と言える。
『果実水だって、あちらの用意したものだし』と思いつつ、私は一つ深呼吸した。
腹の底から、湧き上がってくる怒りを鎮めるように。
「母上、私が必ず貴方を苦しめた者達を懲らしめてみせます。ですから、どうか安らかにお眠りください」
まだ温かい母の手をそっと握り締め、私は静かにそのときを待った。
────間もなくして母が息を引き取り、葬式を執り行う。
そして、最後のお別れを済ませると、私は一気に気持ちを切り替えた。
『悲しむのはここまで。これからは怒りを糧に、反撃していこう』と。
でも────
「えっ?実行犯が捕まって、捜査終了?」
────メリッサ皇妃殿下の方が一枚上手とでも言うべきか、さっさと事態を収束させてしまった。
なので、もう騎士団は動かせない。
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