私に成り代わって嫁ごうとした妹ですが、即行で婚約者にバレました

あーもんど

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第二章

お茶会《エレン side》①

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 ……なんか、わざとらしく感じる。
こちらを油断させるために、敢えて選ばせているような……。

 『さすがにちょっと勘繰りすぎか?』と思案しつつも、疑念を拭い切れず……私は顔を上げた。
と同時に、声のトーンを落として母へ話し掛ける。
警告を促すために。

「母上、念のため飲むのはやめておいた方が……」

 ────いいと思います。

 と続ける筈だった言葉を呑み込み、私は僅かに目を見開く。
というのも、メリッサ皇妃殿下とマーティンが真っ先に果実水へ口をつけていたから。
しっかりと減っているグラスの中身と上下する喉を前に、私はパチパチと瞬きを繰り返した。
『もしや、本当にただの思い違い?』と考えて。

 なら、一口くらい……。

 凄く喉が渇いていたこともあり、私はグラスを口元に持ってくる。
その横で、母は一足先に果実水を飲んでいた。

「あら、スッキリした味で凄く美味し……い」

 ぎこちない動きで口元を押さえ、母は大きく瞳を揺らす。
すると、メリッサ皇妃殿下やマーティンも同様に異変を表した。
その刹那────三人とも、急に血を吐いて倒れる。

「えっ……?」

 この場で唯一無事だった私は、地面でのたうち回る三人を見て戦慄した。
頭の中が真っ白になるような感覚を覚えつつ、手に持ったグラスを落とす。
パリンッと音を立てて割れるソレを前に、私はハッとした。
その瞬間、『呆然としている場合じゃない!』と己を叱咤する。

「早く医者をここへ……!それから、担架も持ってきて!」

 ────と、侍女達に指示を出した数時間後。
倒れた三人はそれぞれ寝室に運ばれ、診断と治療を受けていた。
その結果、メリッサ皇妃殿下とマーティンはわりと早い段階で回復。
と言っても、まだ絶対安静だが。
とにかく、命に別状はないとのこと。
ただ、母の方は……

「……申し訳ございません。かなり症状が重く、もう手の施しようがない状況です」

 宮廷医師の男性は深々と頭を下げ、己の無力を嘆いた。
かと思えば、ベッドで眠る母の姿をじっと見つめる。

「とりあえず、体調不良の原因である毒は薬で打ち消したのですが……他二人に比べて摂取量が多かったからか、それとも耐性の問題か凄い効き目で……解毒する頃には、もう脳や心臓まで影響を受けていまして……」
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