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第二章
教皇聖下の捕獲《ヴィンセント side》③
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「私、ルパート・ロイ・イセリアルは神殿の再生に協力を惜しまないことを誓おう。ゲレル神官、何か困ったことがあれば連絡してくれ」
何故か民衆ではなくゲレル神官に向けて言葉を投げ掛け、ルパート殿下は片手を差し出す。
すると、ゲレル神官は大きく目を見開いて固まった。
が、直ぐに平静を取り戻し、嬉しそうに微笑む。
「はい、ありがとうございます」
『助かります』と素直に感謝し、ゲレル神官はルパート殿下と握手を交わした。
その途端、盛大な拍手が巻き起こる。
『皇室と神殿が手を取り合っている!』と大興奮している民衆を前に、僕は小さく息を吐いた。
本当は民衆に向けて、コメントしてほしかったんだけど……別にいいか。
多分、こっちの方が反響も大きいだろうから。
『結果オーライ』という言葉を脳裏に思い浮かべ、僕は少しばかり肩の力を抜く。
兎にも角にも、これで今日やるべきことは終わったから。
「では、撤収しましょう」
────という言葉を合図に、僕達は広場から引き上げた。
そして神殿の本拠地へ戻ると、被害者達の移送を済ませる。
『我が家の管理する施設に預けたから、不便はないだろう』と思いながら、僕はセシリア達を家に帰した。
と同時に、事件の後始末や神殿の調査を進める。
本来、皇室がここまで口を出すことじゃないんだけど……教皇聖下達の悪事を暴いて身柄まで拘束した以上、もう後には戻れない。
第二皇子派の介入だって考えられるし、最後まできちんとやるべきだろう。
中途半端に投げ出して、後々ややこしくなるのは御免だ。
とはいえ、神殿の面子を潰す訳にはいけないから適度にゲレル神官を立てないとね。
などと考えつつ、僕は慎重にことを進めた。
その期間、なんと一ヶ月。
『悪事の量が思ったより多くて、時間を取られてしまった』と嘆息し、僕は自室のソファに腰掛ける。
……さすがにちょっと疲れたね。
でも、頑張った甲斐はあったよ────こちらの希望通りに教皇聖下達を裁けた上、ゲレル神官が次期教皇に選ばれたからね。
『思い描いたシナリオ、そのまま』と言っても過言ではない展開に、僕はゆるりと口角を上げた。
『それにエーデル公爵家とルパート殿下の評判も上がったし』と目を細め、僕は正面に視線を向ける。
「さあ、こちらの役割は果たしましたよ────次は貴方の番です」
テーブルを挟んだ向こう側に居る金髪の美青年を見据え、僕はニッコリ笑った。
すると、彼はおもむろに足を組んで少しばかり頬を緩める。
「ああ、任せておくれ」
自信満々にそう言い切り、エレン殿下はおもむろに手を組んだ。
「実はあの役割分担を行う前から、第二皇子派の不正や悪事については調べていてね。準備万端なんだよ」
『神殿関連の事件の証拠も君達から、貰えたし』と言い、エレン殿下は席を立つ。
エメラルドの瞳に、暗い感情を滲ませながら。
「ゆっくりじっくり追い詰めてから、最後は派手に暴れるとしよう」
何故か民衆ではなくゲレル神官に向けて言葉を投げ掛け、ルパート殿下は片手を差し出す。
すると、ゲレル神官は大きく目を見開いて固まった。
が、直ぐに平静を取り戻し、嬉しそうに微笑む。
「はい、ありがとうございます」
『助かります』と素直に感謝し、ゲレル神官はルパート殿下と握手を交わした。
その途端、盛大な拍手が巻き起こる。
『皇室と神殿が手を取り合っている!』と大興奮している民衆を前に、僕は小さく息を吐いた。
本当は民衆に向けて、コメントしてほしかったんだけど……別にいいか。
多分、こっちの方が反響も大きいだろうから。
『結果オーライ』という言葉を脳裏に思い浮かべ、僕は少しばかり肩の力を抜く。
兎にも角にも、これで今日やるべきことは終わったから。
「では、撤収しましょう」
────という言葉を合図に、僕達は広場から引き上げた。
そして神殿の本拠地へ戻ると、被害者達の移送を済ませる。
『我が家の管理する施設に預けたから、不便はないだろう』と思いながら、僕はセシリア達を家に帰した。
と同時に、事件の後始末や神殿の調査を進める。
本来、皇室がここまで口を出すことじゃないんだけど……教皇聖下達の悪事を暴いて身柄まで拘束した以上、もう後には戻れない。
第二皇子派の介入だって考えられるし、最後まできちんとやるべきだろう。
中途半端に投げ出して、後々ややこしくなるのは御免だ。
とはいえ、神殿の面子を潰す訳にはいけないから適度にゲレル神官を立てないとね。
などと考えつつ、僕は慎重にことを進めた。
その期間、なんと一ヶ月。
『悪事の量が思ったより多くて、時間を取られてしまった』と嘆息し、僕は自室のソファに腰掛ける。
……さすがにちょっと疲れたね。
でも、頑張った甲斐はあったよ────こちらの希望通りに教皇聖下達を裁けた上、ゲレル神官が次期教皇に選ばれたからね。
『思い描いたシナリオ、そのまま』と言っても過言ではない展開に、僕はゆるりと口角を上げた。
『それにエーデル公爵家とルパート殿下の評判も上がったし』と目を細め、僕は正面に視線を向ける。
「さあ、こちらの役割は果たしましたよ────次は貴方の番です」
テーブルを挟んだ向こう側に居る金髪の美青年を見据え、僕はニッコリ笑った。
すると、彼はおもむろに足を組んで少しばかり頬を緩める。
「ああ、任せておくれ」
自信満々にそう言い切り、エレン殿下はおもむろに手を組んだ。
「実はあの役割分担を行う前から、第二皇子派の不正や悪事については調べていてね。準備万端なんだよ」
『神殿関連の事件の証拠も君達から、貰えたし』と言い、エレン殿下は席を立つ。
エメラルドの瞳に、暗い感情を滲ませながら。
「ゆっくりじっくり追い詰めてから、最後は派手に暴れるとしよう」
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